本音を言えば他の人としてみたい。それでもいつか夫とセックスしたい日は来るのでしょうか?
2023/11/18
夫に誘われるものの、今はしたいと思えず悩む相談者のゆりさん。先日はついに「外でしてもいいよ」と言ってしまったほど。
夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんに「夫のためではなく“自分が機嫌よくいるために”セックスすると考えてみては?」とアドバイスされ、「そっか!」と腑に落ちたもよう。高草木先生のアドバイスはまだ続きます。
いい夫だと思うけどドキドキしないし刺激もない。それでも何年後かにはセックスする気になれますか?
ゆり:夫のことは家族として好きだけどセックスが合わないと思ってて。それでも何年後かには夫としたい気持ちになるものですか?
高草木:それが、なるんですよね。
ゆり:なるんですか!
高草木:夫と同じ空気を吸うのもいやだ、顔も見たくないという人は無理ですよ。でもゆりさんは夫のことを優しいし家のこともよくやってくれるっておっしゃってるじゃないですか。本当に受け入れられないならハグしたいとも思わないだろうし。だから全然心配ないと、私は思います。
ゆり:他の人としたいと思っても夫に戻れるものですか?好きな人がいるわけじゃないけどそういう願望があって。
高草木:実際に行動に移すのはリスキーだけど、願望や妄想だったら全然戻れるし、自由に抱いていいと思う。だからその辺は大丈夫。夫には戻りたくないというのでなければね。
ゆり:それはないです。本当は夫とするのが一番いいんだろうなと思うし。でも夫を好きかって聞かれたら、好きだしすごくいい人だと思うけど大好きってわけでもないんですよ。
高草木:夫が大好き!という人はそういないかな(笑)。もっと年を重ねて子どもも巣立って・・・という道のりを経て「この人といて良かったな、安心するな」と、改めて好きという感情がわく人はいますよ。
編集部:もっとほんわかした「好き」ですね。
高草木:そうね。夫への愛情は家族愛なので、恋人同士のドキドキを求めるのは、ゆりさんに限らずみんな無理でしょう。別物って考えないと。
ゆり:ですよね。
高草木:夫に刺激を求めるなら、いったん別居してみるとかね。夫は穏やかな愛情や楽しさ、癒しをくれる人、と分けて考えないと混乱しちゃうかな。
ゆり:なるほどです。
高草木:今は子育ての真っ最中で、ザ・家族みたいな感じでしょう?嫌いではないし好きなんだろうなっていうところですよね。
ゆり:うん。
高草木:それで十分。大好きまでいかなくていいです。
ゆり:わかりました(笑)。
「ハグしてって言うくせに、俺の要望は無視するのか」って言われました
ゆり:この前、夫のキスをよけたら「もういい、どっか行け」みたいに言われて。「ハグしてって言われて俺はしてるのに、俺の要望は無視するのか」と言われたこともありました。
高草木:夫はハグとキスとセックスはセットで、セックスしないならハグもしない、みたいな考えなのね。0か100かみたいな。
ゆり:そうです。
高草木:すると、「私はあなたと違ってハグから生まれる温かい気持ちがすごく大事で、愛情を感じるんだよ」「女性ってハグで気持ちが緩んで、そこから初めてセックスしたいと思ったりすることもあるんだよ」とか、もっと説明が必要じゃないかな。すると夫も「そこをぬかりなくやらなくては」と思うかもしれない。
ゆり:それはちゃんと伝えたことがないので言ってみようかな。
夫婦って月に1~2回はするもの、と思ってたけど、年に1~2回でもOKですか?
高草木:セックスレスの問題って、長いスパンでとらえて、相手にも考えてもらう必要がありますよね。そのために話し合いは面倒がらずにやったほうがよくて。コミュニケーションが取れていると、年に1~2回とか、3年しなくても別に普通とか、自分たちのペースが自然にできてくるんですよ。
ゆり:それくらいのペースでもOKなんですか?
高草木:OKですよ。
ゆり:私、夫婦って月に1~2回はするもの、しなきゃいけないんだろうなって思ってて。できない私が悪いって思っちゃうんです。
高草木:一般的にセックスレスは「特殊な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交、およびセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ない場合」をいいます(※)。ただこれに当てはまる夫婦は「一般的にセックスレスと言われる夫婦」であって、自分たちはセックスレスとは感じていないのなら何の問題もないわけです。
ゆり:そっか・・・。
高草木:浮気の定義があいまいで人それぞれなのと同じように、セックスレスの定義も「一般的な定義」と「それぞれの夫婦の定義」があるととらえています。
編集部:そう考えると「私たち的には問題ないけど、この状態っておかしい?」とか、変に迷わなくてすみそうですね。
高草木:はい。ただ夫と妻のペースが必ずしも一致しないのが難しいところで。だから「拒否したからってあなたのこと嫌いじゃないんだよ」と伝えて、いかにコミュニケーションで折り合いをつけていくかが大事ですね。
※日本性科学学会の定義による。
「相手が求めるペースで応じられなくて申し訳ない」という罪悪感は持たなくていい?
編集部:ゆりさんが「月1~2回ペースでできない私が悪いと思っちゃう」と語っていましたが、そういうときに罪悪感を持つのは辛いと思います。
高草木:セックスに限らず、お願いごとを続けて断ると、人にはどうしても罪悪感が生まれます。次は応じなきゃとか、そういう心理が人にはありますね。それはごく自然な感情で、それ以上でもそれ以下でもない。
編集部:なるほど。
高草木:罪悪感を持ち続ける必要はないと思います。問題は罪悪感やセックスレスにどう対処するか、ですよね。方法は人それぞれですが、要は「この人と家族として一緒にいたいか」ということでしょう。
編集部:そうですね。
高草木:「私、無理だから」とひと言で終わらせるのはちょっと違うかなって思うんです。相手が苦しんでるのに何もしようとしないのは、夫婦の関係が崩れてきてるということなので。
編集部:そういう夫婦はセックスレスを解消しにくいですか?
高草木:夫婦の気持ちが離れてしまっていると難しいですね。夫は家のことを一切しないとか、ひどいときは他に女性がいるとか。妻の方も、夫にもう愛情はなくて情だけとか。
編集部:長年一緒にいるからただそれだけ、みたいな・・・。
高草木:そうね。でもどちらかが「何とかしなきゃ」と手を打とうとするのは、持ちこたえる可能性が高い夫婦です。
編集部:そういう意味では、ゆりさんは悩んでいらっしゃいます。
高草木:はい。夫を思いやる気持ちがあるからこそ今回ご相談なさったと思うんですね。
ゆり:どうしたらいいかわからなかったけど、先生とお話して道筋が見えた気がします。
高草木:人って相手のためにはなかなか動けないもの。いかに自分が楽でいられるかを考えて、伝え方を工夫するなどできることからトライしてみてくださいね。
セックスにまつわる疑問を高草木さんに投げかけ、モヤモヤを整理したゆりさん。セックスレスを解消するには長い時間がかかるといわれますが、高草木さんと話をしたことで何か変わったでしょうか?次回、1カ月後のゆりさんの報告をお届けします。
イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部