部屋は荒れ果て、仕事もない、お金もない…。そんなどん底の私を救ってくれたのは、片づけでした

2023/12/17

見せてもらうのは「棚」と「引き出し」と「冷蔵庫」の中。今回は元汚部屋住人ながら片づけで人生が変わった人・人気整理収納アドバイザーの吉川永里子さんです。

PROFILE

吉川永里子さん

家族構成:高1、中2、中1、小5の男児4人と2歳の女児の母。実母も同居中
住まい:東京都在住。23年8月に完成した3LK109平米の注文住宅(幼少期に住んでいた、実家の土地に建設)

略歴:収納スタイリスト®、整理収納アドバイザー。2008年より収納スタイリストとして活動を開始。現在は整理収納サービスや、整理収納に関する資格講座やセミナーの講師などを行う。『サンキュ!』をはじめ、雑誌やテレビの出演も多数。著書も10冊以上にのぼる。近著に『もっとラクに生きる! 暮らしの整理術100』(エクスナレッジ)がある

幼いころから、生粋の「片づけられない子」でした。

◎編集部
整理収納アドバイザーとして大活躍されていますが、元々片づけが苦手だったとか!

☆吉川さん
はい、完全に汚部屋出身者で、レベルとしては足の踏み場もない系です(笑)。ゴミは捨てられたんですけど、ものが多いうえに、出したらしまわない。だからいつも散らかっていて、なくしものもめっちゃ多い。子どものころからそうでした。

昔は発達障害という言葉もありませんでしたが、今になって文献などを読むとADHD(注意欠如・多動性障害)の特性にドンピシャすぎるんですよね。朝も全然起きられなかったし。いわゆるグレーゾーンだったのだと思いますが、だから生きづらかったのねと。

自身の幼少期の経験をいかし、子どもには早くから片づける習慣をつけさせているのだとか

◎編集部
自分が片づけられないことに、いつ気づいたんですか?

☆吉川さん
小1ですね。記憶があるんですよ。リビングに学校の道具を置きっぱなしにしているものだから、父が母に片づけさせろって怒っていて。「ああ、私が片づけられないからお母さんが怒られるんだな」って。そんな感じで、学生時代はずっと片づけられませんでした。

でも救いだったのは、インテリアは大好きだったこと。家具も好きだったし、棚に色を塗ったりして。
見た目はよくしたいとは思ってました。

だから友達が来るときは、散らかったものを全部ベッドの中に隠してましたね(笑)。

仕事もお金もなくて、人生終わってる…。だから、汚部屋を片づけてみた

◎編集者
そんな吉川さんが、片づけようと思ったきっかけは?

☆吉川さん
大学4年生のときに1人暮らしを始めたんですけど、母親が来て「あなたの部屋、泥棒入ったみたいじゃない!」と言われてました。
母も全然片づけられないんですけどね、そんな母が言うくらい(笑)。

というのも、大学は写真学科に所属していたのですが、当時某有名カメラマンのアシスタントにつくことができて。ただ、その仕事のあまりのいそがしさに、部屋は荒れていく一方でした。

氷河期に就職できたつもりでいたのですが、それはそれは過酷な世界で。長く続かなかったんです。

仕事を辞めて1人ポツンと部屋の中で「就職もできない、お金もない、部屋も汚い。私人生終わってるじゃん」って。

そんな状況だったので、もうやることは片づけしかないぞ、というときがきたんですよね。

現在の吉川家の引き出しには、中に何が入っているかだれでもわかるよう、きれいに全てラベリングされている。汚部屋時代には、想像もできない!

◎編集者
ドラマみたいな展開(笑)!何から始めたんですか?

☆吉川さん
やり方がまったくわからなかったので、片づけの本をまずは買いました。それで見よう見まねで、片づけ始めて。

そんなときたまたま『ひとり暮らしをとことん楽しむ!』という雑誌のインテリア大賞の応募を見かけました。賞金が30万円だったし、ちょっと応募してみようと思って。お金欲しさに(笑)。

それが片づけの原動力になりましたね。結果は大賞ではなくて特別賞でしたが、片づけに目覚めるきっかけになったと思います。

特別賞を受賞した際に掲載された雑誌を、今も大切に保管。赤を基調とした部屋だったそう

整理収納アドバイザーになって、「整理しないと一生片づかない」ことを伝えたくなった

◎編集部
それから整理収納アドバイザーの資格をとったのですね!

☆吉川さん
じつはひょんなことからインテリア雑誌のライターをすることになり、片づけの先生とお仕事をさせていただく機会がありました。

撮影のお手伝いをするときに、収納用にラベルをつくったりしていたのですが、「あらおしゃれね!私は収納はできても、おしゃれにはできないわ」と言っていただいたりして。やりがいのある仕事でした。
当時の片づけの先生には「きれいに映えるように収納する」という発想はなかったんですよね。

そうして徐々に片づけに興味を持ち始めたころ、お世話になっている編集者のかたに「片づけの仕事をやってみたら? 私、企画書出すよ!」って声をかけてもらったんです。

人の家を片づける企画だったのですが、あっさりとおってしまって。それで、「やるからには、ちゃんと資格をとろう」と思ったんです。
26歳のときですね。

きれいに整理されている階段横の棚。書類関係や紙ものはこの場所に

◎編集者
意外な展開!整理収納アドバイザーの講座はどうでしたか?

☆吉川さん
それがすごくおもしろくて!これを幼いころから知っていたら、汚部屋時代もなかったし、就職できないなんてこともなかったなって思いました。

当時いくらか片づけられるようになっていましたが、やはりリバウンドしてしまっていたんです。それがこの講座を受けて「収納はしているけど、整理ができてないからだ」って気がつきました。

これを片づけられない人に、もっともっと教えてあげなくてはいけない!って強く思いましたね。

◎編集者
なるほど!整理するとは、具体的にどういうことなんですか?

☆吉川さん
今も1番よく話していることですが、整理とは、今使っているものか、使っていないものなのかを区別することなんです。

部屋が片づかないのは、今使っていないものが蓄積しているから。それがある限り、ずっと片づかないんですよね。
すごく当たり前なんだけど、だれも言ってくれなかった。

このころ、片づけはできるようになったけど、続けられなくてリバウンドしてしまう時期だったので、「そうだったんだ‼」という納得感があって!それから劇的に片づけを続けられるようになりました。

でも、今使ってないからってすぐ捨てなくてもOK。いったん分ければいいんです。

リビング横のオープン収納。扉はあえてつけていない。よく使うものは、取り出しやすいこの場所に

おばあちゃんになっても、整理収納アドバイザーを続けたい!

◎編集者
仕事はずっと順調でしたか?

☆吉川さん
当時、私くらいの年齢の収納の先生はいなくて、若いというだけで新人でもあちこちの雑誌に呼んでいただきました。

それでも整理収納アドバイザーだけで食べていくのはむずかしかったし、27歳で長男を産んだこともあって、ライターやアルバイトもかけ持ちしながらでした。

2011年に念願の著書本を出版し、それからは整理収納の仕事1本でやっていけるようになりました。

自分の著書本を収納している棚。現在は、10冊以上の著書本が出版されています

◎編集者
整理収納アドバイザーとしての、これからの夢はありますか?

☆吉川さん
これは身をもってわかったことですが、物を整理して家が片づけば、ストレスが必ずなくなります!
いそがしく働く多くのママに、そのことをもっと広めていきたいですね。

先日整理収納アドバイザーの資格ができて20周年だったのですが、50周年を迎えるころ私は70歳。
今資格をとって15年たちましたが、それまであと30年、やっていたいですね!ずっと現役でいたい。「できるできる‼」ってみんなに言われます(笑)。

撮影/大森忠明 取材・文/草野舞友 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

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