猛暑のあとは冬が寒くなるってホント!?気象予報士が解説
2023/08/25
夏の猛暑が例年よりひどいと、続く冬は寒さが厳しくなる…そんな話を聞いたことがあるという人も多いのでは。
「それってホントなの?」「もしホントなら、なぜそうなるの…?」そんな疑問を解決するため、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに教えてもらいます。
日本の天候を左右する「2つのパターン」がある
夏や冬の暑さ・寒さには、大まかに2つのパターンが存在します。
1つは、夏が例年より暑く冬が例年より寒くなりやすいパターン。
そしてもう1つは、夏が例年ほど暑くなく冬が例年ほど寒くない傾向のパターンです。
前者を「ラニーニャ」、後者を「エルニーニョ」と呼び、ニュースなどで聞いたことがある人もいるかもしれません。
だいたいこの2つのパターンのうちどちらかに該当していて、数年ごとにパターンが切り替わっています。
ということは…、もし夏が酷暑であれば1つ目のパターン、つまり「ラニーニャ」に該当していることになり、続く冬には厳寒が待っていることになりそうです。
しかし、そう簡単には言い切れない理由があります。
年の途中で天候パターンが切り替わることも
酷暑&厳冬パターン(ラニーニャ)と冷夏&暖冬パターン(エルニーニョ)は、おおよそ数年ごとに入れ替わりますが、その替わり目がいつの季節になるかはさまざまです。
つまり、夏の間ラニーニャの影響で酷暑だったにも関わらず、秋にはラニーニャからエルニーニョに切り替わって暖冬になることも。
そのため、夏の天候だけでは次の冬を予想することができないのです。
パターンに当てはまらない夏・冬もある
じつはラニーニャになっているからと言って、必ずしも夏が例年より暑く冬が例年より寒いとは限りません。
これはエルニーニョについても同様です。
ラニーニャやエルニーニョといったパターンは日本だけでなく地球規模で起きている現象が関わっているため、日本への影響が「必ずそうなる」とは言い切れないのです。
あくまでも「そうなりやすい傾向にある」ということ。
しかも、この傾向には地域差があります。
たとえば東北や北海道ではラニーニャのとき夏が猛暑になる傾向が強いのに対して、ほかの地域ではあまりはっきりした傾向が見られません。
さらには、現在は地球温暖化の影響で1年を通して昔よりも気温が高くなっているため、ラニーニャ(本来なら厳冬)なのにさほど寒くない、あるいはエルニーニョ(本来なら冷夏)なのにむしろ暑い、ということすらあるのです。
先のことを知るには「3カ月予報」と「1カ月予報」がおすすめ
ここまで読んで、「結局、先のことは何もわからないってこと?」と思った人もいるかもしれません。
もちろん未来のことを確実に予想することはできませんが、それでもヒントになるものがあります。
気象庁が発表する「3カ月予報」と「1カ月予報」です。
「3カ月予報」は文字通り、3カ月先までの未来について暑くなりそうか寒くなりそうかを、雨の傾向とともに予想したものです。
毎月更新されるので、常に最新の予想を見ることができます。
気象庁HPで公開されているほか、更新日にはニュースになることが多いです。
「1カ月予報」はさらに詳しく、1カ月先までの各週の気温や降水量の傾向を予想したもの。
こちらは毎週更新されるので、たとえ当初の予想と状況が変わってきたとしてもすばやく反映され、同様に気象庁HPで見ることができます。
こういった予想を見ることで、たとえば「今年の冬は外でのイベントが多いけど、早めの対策が必要だろうか?」といった悩みに対処しやすくなります。
また、冬に関しては日本海側の雪の量についても予想が掲載されるので、大雪への対策にも役立ちそうですね。
2023年の傾向は…?
2023年は春頃からエルニーニョが始まり、8月現在もエルニーニョの真っ最中です。
つまり本来は冷夏&暖冬になる傾向の年ということになりますが…、皆さんご存知の通り、2023年の夏はひどい猛暑。
なかなかセオリー通りにはいきません。
さらには、8月22日に発表された最新の3カ月予報によると、平年を上回る暑さはこのさき少なくとも10月頃まで続く見通し。
しばらくは暑さ対策に重点を置くのがよさそうです。
次の3カ月予報は9月19日に発表され、そのときには冬の予報まで出ます。
便利な情報をぜひ活用して、日々の生活や防災に役立ててください。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部