文系学部なのに受験で「数学」?データサイエンスって?求められる『文理融合』
2023/09/28
文系学部なのに受験で「数学」が必要な大学が増えています。求められる「文理融合」の学びとは?どんどん変化する学校教育、ついていけていますか?今どきの教育・進学事情や新しい教育用語を、専門家にインタビュー取材します。
<教えてくれた人>
・大学教育の第一人者 村山和生さん
ベネッセ i-キャリア・主席研究員。大学向け情報誌「Between」編集委員。大学改革の現場でコンサルティングや調査・研究をしてきた経験から「大学の現在」「大学教育の変化」などについてのメディア取材や講演多数。
・ジャーナリスト 宮本さおりさん
夫の米国留学で新聞記者から専業主婦に。帰国後、子育て・教育分野を中心に執筆。『データサイエンスが求める新しい数学力』(日本実業出版社)著者。大学生と中学生の母。
Q 文系学部なのに受験で「数学」が必要な大学が増えているのはなぜ?
A 文系・理系の枠を超えた「文理融合」の学びが求められているから
早稲田大学の政治経済学部で数学が必須受験科目になるなど、文系学部に進学する場合でも、数学の学習が必要だったり、数学選択者が有利になるケースが増えてきました。その理由は、卒業時に身に付けさせたい学力レベルに到達するためには、入学時点である程度の数学力が必要だからです。例えば、経済学部で学ぶマーケティングの分野では、データを正しく活用するためにデータサイエンスを学習しますが、数学的素養のないままで単位を取るのは難しいという現実があります。
これは、経済学部に限った話ではありません。デジタル化が進んだことで、あらゆる分野でAIや膨大なデータを活用する時代が到来し、情報科学やデータサイエンスなど文系・理系の枠組みに収まらない学問が必須知識の1つとなっているのです。
また、PBL学習(課題解決型学習)のように学ぶ側が主体となる学習では、文系・理系の両方の知識と視点を持たなくては解決できない課題に取り組みます。このような時代背景を受け、文理を融合した学部を新設する大学も増えています。
文理融合学部を新設した大学の例
【武蔵野大学】データサイエンス学部(2019年度新設)
データサイエンス、人工知能(AI)、データマイニングに関する知識とスキルを身に付け、膨大なデータを分析し、新たなビジネスを創出する人材を育成する。
【中央大学】国際情報学部(2019年度新設)
文系的思考・理系的思考の枠を超え、それぞれの専門性を融合する学びにより、社会に受容される情報サービスや情報政策を実現できる人材を養成する。
PBL(課題解決型学習)ってどんなことをするの?
PBLはプロジェクトベースドラーニングを略したもので、主体的、対話的な学習法として注目される「アクティブ・ラーニング」の一種。正しい答えにたどり着くことが重要ではなく、答えにたどり着くまでの過程が大切という学習理論で、例えば「大学の前でドーナツショップを開く」などの架空のケースに対して、データを活用しながら、どんなコンセプトの店なら売り上げを伸ばせるかを検討したりします(村山さん)。
いわゆる「理系女子」の受け入れ枠が増えている?
日本は元々、世界と比べて理系人材のパーセンテージが低く、女性に限るとその比率はさらに少なくなります。しかし、男性だけの視点に偏らないほうがイノベーションが生まれやすいため、多様性を持たせるという意味でも「理系女子」を増やそうという動きがあります。最近では国立の東京工業大学が総合型選抜入試で女子枠を設けたり、奈良女子大学が国立女子大として初めて工学部を新設しています(村山さん)。
参照:『サンキュ!』2023年10月号「今どきの教育事情どうなってるの?」より。掲載している情報は2023年8月現在のものです。プロップ制作/川村ちゃん 取材・文/宮本さおり 編集/サンキュ!編集部