勉強しない息子にイライラ。「いつ勉強するの?」ってつい言ってしまう。言わずに見守る効用とは?

2023/10/07

何を言っても勉強しない中1の長男に、どうアプローチすればいいかわからず途方に暮れていたはづきさん。アドバイザーの小村俊平さんに、長男のペースを尊重して見守ることをすすめられました。それから1カ月。夏休み中盤に行われた報告会の様子をお届けします!

アドバイザー
小村俊平さん

ベネッセ教育総合研究所にて全国の自治体や学校とともに学校改革や学校設立に従事。全国の高校生とオンラインで対話するなどの教育支援を行っています。プライベートでは大学生と高校生のお父さん。

夏休みの宿題に自主的に取り組む息子。黙って見守ることがやる気UPにつながったかも

編集部:はづきさんこんにちは。夏休みも半分が過ぎましたが、息子さんに変化はありましたか?

はづき:息子というより、私のとらえ方が変わりました。夏休みの宿題も今回はあまり口出しせず、息子が自分の意志で動くのを見守っています。

編集部:どんな宿題が出たんですか?

はづき:社会で新聞の切り抜きをする宿題があって。親としては見栄えのいいテーマというか、原爆や福島第一原発の処理水の記事などにしたらと思ったんですが、息子は某販売会社の不正疑惑の記事を集めてて。

編集部:おお~。ワイドショーなどでも話題になった会社ですね。大人目線だと、ちょっとミーハー?と思っちゃいそうです。

はづき:ですよね。私も最初は「エエッ!」と思ったけど、黙って見てると車の保険や賠償についてまで、いろいろと自分で調べていて。「こういうテーマのほうがいいんじゃない?」と口を挟まず、グッとこらえてよかったです(笑)。

小村:すごいですね。それって学校の先生も陥りがちなワナで、たとえばSDGsなら入試でも扱われるからそっちがいいよとすすめたりしがちです。だけど本人が関心を持ったテーマなら、自分でいろんなことに気づきますね。

はづき:はい。興味があることからこんなふうに広げられるんだな~と実感しました。

小村:年齢が上がれば上がるほど、何をするか自分で決め、計画を立てて深めていくことが求められます。でも与えられた課題を要領よくこなすだけだと、自分の意志は身につきませんよね。今回息子さんが自発的な学びができたのも、はづきさんが見守ったからこそでしょう。

はづき:そのせいか、息子もちょっと変わった気がします。

編集部:というと?

はづき:以前はただ記事を切り抜いて適当に感想を書いて終わり、みたいなことが多かったですが、今は毎日自ら新聞を開いて、記事をちゃんと読んでいるんです。見守ることが息子のやる気につながったのかも。

小村:いいですね。

はづき:私自身、「大丈夫なの?」と焦ることなく見守ることができて、いい方向に進んでいます。

好きなことが特にない子どもには、いろんな体験をするチャンスをつくりましょう

編集部:はづきさん親子にはひと月でいい変化がありましたが、親が口を出さず本人に任せると、たいていはそうなるものなのですか?

小村:もちろん何でもかんでも放っておけばいいわけではないです(笑)。好きなことや興味のあることがない子の場合だと、何も変わらないと思うんですよね。

編集部:そういう子に対して、親はどうしたらいいですか?

小村:いろんな体験をさせてみるといいと思います。そういう点でも学校は様々な経験を積める場。音楽や美術、体育など、家で普通に暮らしていたらしないようなことも一通り学べたり、部活や学校行事、遠足や旅行に行ったりもしますね。本人が望む・望まないに関わらず気軽に参加できる機会を持てることは、大事なんだろうなと思います。

編集部:なるほど。

小村:もし学校が合わなかったり体験の機会が少ない場合は、学校以外のコミュニティに参加してみましょう。塾や習い事、地域のサークルなど、とにかくいろんな場に参加してみる。その中から自分に合うもの、少しでも楽しめるものを見つけるといいんじゃないかな。

編集部:そのときも親は焦らずにサポートするのがいいんですね。

小村:そうですね。家族で映画を見に行くとか、いつもと趣向の違う家族旅行をしてみるのもいいと思います。そして「楽しめてよかったね」「好きなことがあってよかったね」と声をかけてあげる。大事なのは「親としてあなたに関心を持っているよ」と子どもに伝わることですから。

深夜のゲームで家族がどう困るか具体的に話したら、時間を守ってくれるようになりました

編集部:息子さんが夜遅くまでゲームをするのも親として気がかりということでしたが、その後どうですか?

はづき:食事中に夫も含めて「ゲームは夜11時まで」「声が聞こえると私たちも眠れないし、次の朝、早く起きるのできついんだ」と話しました。その後は約束を守ってくれてます。

編集部:すんなり納得してくれたんですね。

はづき:息子はゲーム中ヘッドフォンをしているので、大きい声が出ていると思ってなかったらしくて。

小村:自分の声の大きさに気づいてなかったんだ。何ごとも話してみるものですね。

子どもにも事情がある。親はそれを想像して、子どもを1人の人間として尊重することにエネルギーを使いましょう

編集部:はづきさんのようにいい方向に変化する場合もあれば、見守ってみたけど結局ダメという方もいらっしゃると思うんですが、そういう方に向けてアドバイスをいただけますか?

小村:「見守る」というのは何もしないことではないんです。親にとって子どもを見守ることは、それなりにエネルギーのいる行為ですよね。

はづき:わかります。

小村:では親は何をするかというと、口を出したいと思ったときに、待てよと立ち止まり、1人の人間として子どもの行動を尊重する。頭ごなしに「それじゃダメ」と言うのではなく、子どもが何を思い何を求めて行動をしているのか、想像することがとても大事です。

編集部:親は子どもの気持ちを想像して尊重することにエネルギーを使うんですね。

小村:はい。それと、見守ることが成立するには親子関係がいいことが前提になります。

編集部:はづきさん親子も、日常生活で家族の会話や関係性がしっかりしていらっしゃいました。

小村:今回の記事を読んで「子どもを見守ってみよう」と思われた親御さんは、まず親子関係を振り返っていただけたら。会話が成立しないとかすぐケンカになるなら、お互いに楽しい時間を過ごすことからスタートして、親子関係を改善することが肝心だと思います。

編集部:親子のよい関係やコミュニケーションが、見守るための土台になるんですね。

小村:はい。それと子どもを理解しようとする姿勢も忘れずに。人間関係がうまくいかないときって、たいてい「こうすべき」と自分の考えを押しつけたりしてるじゃないですか。

編集部:確かに~。

小村:その子なりの事情があるはずなので、そこに思いをはせて事情を受け止めてあげましょう。

夏休みの宿題をいつやるかは、ショートケーキのいちごをいつ食べるか、と同じこと。本人の意志に任せることが自主性を育てることにつながります

小村:夏休みにありがちなのは、「宿題をやりなさいよ」「後でやるつもりだったんだよ」というやりとりです。宿題は夏休み中に終わればよくて、いつやるかは問題じゃないのに、親はついせかしてしまいます。

編集部:「いつやるの」と詰め寄ったり。

小村:そうそう。そういうときは「やるつもりがあるのね。わかった」でいいんです。私にも中学生の男の子だった時代がありますが(笑)、その時期の男の子のいらだちは、そういうところからも来てると思います。自分はやる気があったのに、親に先回りされてあたかもやる気がないかのように言われるとかですね。

編集部:かつて中学生の女の子だった私にも想像がつきます。

小村:宿題をいつやるかは、ショートケーキのいちごを先に食べるか、後で食べるかみたいなこと。子どもが「後でやる」と言うなら、それを受け止めてあげましょう。

はづき:小村さんのアドバイスを夫や長女にも話したら、「好きなことから伸ばしていけばいいなら、大丈夫だね」という話になりました。私が焦りすぎていたことや、本人の意志をもう少し尊重したほうがいいことを再確認できてよかったです。

小村:中学、高校と年齢が上がるにつれて、子どもというより1人の人間として接して、自分の人生をしっかり歩めるようになってもらうのが大事ですね。そのためには自分はこうありたいという意志を持つ、周りのことを想像して自分を律していくことが必要になってきます。

はづき:そうですね。

小村:親が全部指示したら、子どもとしてはそれを守るか守らないかになってしまう。そうじゃなくて、自分で考えて行動し、ときには間違ったとしてもその原因を考えて修正すればいいわけですから。

はづき:はい。

小村:まさに今、そういう機会をはづきさん親子は得ていらっしゃるんだと思います。これからも息子さんの好きなこと、得意なことを耕せるように、伴走してあげてください。

はづき:相談に乗っていただいてありがとうございました。

イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

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