エアコンの遠隔操作

じつはバカにできない「エアハラ」。エアコンのON・OFFに引き裂かれた夫婦の悲惨な実態を専門家が解説

2024/06/18

三松真由美さんが主宰する「恋人・夫婦仲相談所」で、毎年蒸し暑い季節になってくると「寝室のエアコンの設定温度」に関する相談が増えるそうです。寝室のエアコン設定温度を夫、妻どちらの「快適な温度」に合わせるかで繰り広げられるバトル。その実態を解説してもらいました。

会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、We...

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家庭内においても起こり得るエアハラ=エアコンハラスメント

近年は猛暑が続き、寝室だけでなく家の中すべてがエアコンなしでは耐えられない暑さという場合も多く、エアコンの設定温度を巡る戦いは拡大しています。それにあわせて、設定温度問題がハラスメントにも発展しているご家庭も出てきています。

「エアハラ(エアコンハラスメント)」は本来、職場におけるエアコンの設定温度によるハラスメントを指す言葉ですが、これは家庭内においても起こり得るものです。今回は夫婦間の「エアハラ」について考えてみましょう。

同じ温度でも体感温度は人それぞれ個人差があります。とくに男女における差が大きいということは皆さんも経験的に感じませんか。

一般的に男性は暑がりで、女性は寒がりと言われ、一説には男女の体感温度は3~5℃もの差があるのだとか。これは男女間での筋肉量の違いに原因があります。人間の身体は筋肉によって熱をつくり出し、筋肉の少ない女性は男性に比べて熱をつくり出しにくいため、同じ温度でも寒く感じるわけです。

体の構造上このような違いがあるなら、お互いに理解しあって両方が譲歩できる点を探せばよいのですが、なかなかそれがうまくいかない夫婦もいます。

夏でも長袖、モコモコ靴下が手放せない生活を強いられ…

ソファに座って、クッションを抱いて自宅の暖かい服でフリーズの若い女性
LightFieldStudios/gettyimages

レナさん(仮名36歳)の場合は、典型的な「暑がり夫と寒がり妻」のパターン。

「エアコンが必要なことはもちろん理解していますが、冷やすにも程度があると思っています。わが家は夫をはじめ息子2人もみんな暑がり。エアコンの設定温度は常に23℃です。夫のいない間にこっそりリビングのエアコンの設定温度を上げると、外から帰ってきた夫が部屋に入ったとたんに『暑い!また設定変えただろ』といきなり不機嫌モード。『こっちは仕事で疲れて帰って来てるのに、エアコンぐらいでケチケチするなよ。』とまるで私が節約のために設定温度を上げているかのように文句を言います。

私が『ケチってるわけじゃなくて、冷えすぎて頭痛がするのよ』と訴えても『寒いやつは着ればいいんだよ。暑いのはもう脱げないんだからこっちに合わせるべきだろ。じゃあ、多数決で決めよう。涼しいほうがいい人。はーい!…ほら、3対1で23℃に決定~~』と、息子たちを巻き込んで私の意見などまったく聞いてくれません。

仕方なく、夏でも長袖、モコモコ靴下をはいていますが、それでも冷えからくる頭痛に悩まされています」

エアコン利用を理由に家事を拒否!?

家のソファに座りながら自分を扇動する熱い美しい女性。
nensuria/gettyimages

一方でカナさん(仮名29歳)の場合は、「エアコン嫌い夫」のパターン。

「うちの夫はもともと喘息もちで、アレルギー体質。エアコンをつけると部屋が乾燥しすぎるとか、エアコンからカビを含む汚い空気が出ると、喘息が悪化すると言って、エアコンをつけたがりません。

エアコンの空気が汚いという点に関しては、年1回は業者にクリーニングを頼んでいるので、ふつうの家より汚いということはないと思っています。乾燥するのが嫌なら、湿度を高めに設定したり、それでも足りないなら加湿器を併用したりすればいい、と提案しても『湿度が高いとエアコン内のカビが増えるから余計に空気が汚れる』とか、“ああ言えばこう言う”状態で、まったく譲歩しようとしません。

熱中症も心配ですし、仕方がないので気温が30℃になるまでは扇風機で我慢しますが、それ以上になると『悪いけどエアコンつけるね』と断って、エアコンをつけます。そうすると「寒い寒い」と皮肉っぽく、背中を丸めます。家事を頼んでも『寒いから、体調悪くて無理』と言い放つ始末。アンタ、いったい何様!?と怒り心頭です」

たかがエアコン、されどエアコン…

ご紹介したどちらのパターンも、もはや単なる「快適な温度の違い」を超え、相手へのハラスメントに発展している事例といえます。

このような「エアハラ」問題の解決はどのようにすればいいのか?

もしこれが寝室だけの問題であれば「夫と妻の寝室を分ける」という解決法で何とか乗り切れるでしょう。しかし、ふだんの生活エリアであるリビングやダイニングだと、そう簡単に分けるというわけにはいきません。

まずはお互いに自分の主張に固執せず、双方に快適な環境をどのようにつくり出すか、具体的に意見を出し合うことです。

暑がりなかたは、エアコンに加えて扇風機などで風を送り、体感温度を下げることが可能です。さらにネッククーラーなどで体温を下げることも有効です。また、最近はふれるとヒヤッとする冷感タッチの製品も多いので、シーツ、クッション、部屋着などを、さらさらした冷たい触感のものに変えるのも効果的です。

寒がりなかたは1枚プラスして羽織ったり、冷えやすい足元を靴下やレッグウォーマーなどで対策することも効果的です。また、温かい飲み物をとったり、湯船にお湯を張ってゆっくりお風呂に入ることも大事。

さらに、エアコンの乾燥や空気の汚れが気になるかたには、エアコンを使いつつ、定期的に窓をあけて換気をする、空気清浄機などを併用するなどの対策を。

あるいは寒さ対策・暑さ対策についての情報をお互いに出し合うバトルをすることで、相手の体感温度を想像できるようになるかもしれません。そして週末、いっしょに対策グッズを買いに行くのも円満の秘訣。

たかがエアコン、されどエアコン…お互いの違いや個性を受け入れて心地よい家庭をつくるための、試金石かもしれません。

 
 

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