図書室

PTA不倫が始まってしまうきっかけとは~小説・妻たちの千夜一夜物語~

2019/06/11

「恋人・夫婦仲相談所」所長として、長年夫婦関係の悩みやトラブル解決と向き合ってきた三松真由美さん。本連載では、三松さんが相談・取材を通じて知ったさまざまな“夫婦のカタチ”を、妻たちの視点から、小説にしてお届けします。

今回のテーマはPTA不倫。保護者どうしが集う場で、不倫関係に陥る人は少なくないそうです。なぜ、彼女・彼らはあまりにリスクが大きい「PTA不倫」に走るのか?その背景にあるものとは……。

小説・妻たちの千夜一夜物語~第二夜~【前編】

わたしの名前は澄川紗里那。夫と娘2人がいますが、下の子が高校に入ると同時に自宅でネイルサロンを開きました。サロン名は“マーメイド”。看板を出さずにリビングでこぢんまり施術します。そのせいか、訪れる方々は施術中、ポツンポツンとたわいない話をしてくれます。

お子さんの悩み、旦那さんの愚痴……そして、ここでしか言えない内緒の話。そんなお話を毎日毎日聞いていると、ふっとアラビアンナイトを思い出します。妻が千人いれば、妻の数だけ秘め事がある。こっそりとひとつずつお話しましょうか。

富美加・42歳:息子の同級生パパに惹かれて

御指名のプロフェッショナルのマニキュアを実施
Belyjmishka/gettyimages

赤みが強いブラウンカラーの髪を人差し指でクルッと巻いて直しながら、富美加さんはネイルカラーを選んでいます。

富美加さんは運送会社に勤めている夫と高校生の女の子、中学生の男の子の4人暮らし。下の子の淳吾くんは部活でバスケをしていて、県大会出場を目指しています。

富美加さんは大手100均ショップでパートをする主婦。ファッションはいつもジーンズとコットンシャツのカジュアル系。バランスよく伸びた足にジーンズがよく似合います。

うちのネイルサロンのことは、お店に来るお客さんから聞いたそうで、月2回通ってくれています。たまにパート先の隣にあるパン屋で焼き立てのパンを買ってきてくれることもあり、ネイルを塗ったあとで一緒にお茶を飲んだりするようになりました。


「今日はこの髪に合うネイルにしたいな。セピアラベンダーっていう色なの。美容院は高いから自分で染めてるんだけど、いい感じでしょ?」

「へえ、自分で?きれいに染まってますね。ヘアカラーとネイルを合わせるなんて、随分と気合が入って……あ、そう言えば授業参観の時期か。ママたちきれいにして行きますもんね」


私がそう言うのを待っていたかのように、富美加さんが語り始めました。


「でしょ。学校行事に参加するとき、ママたちけっこう盛るのよ。最近はパパが来ることも多いから、ママ同士で『手を抜いてないわよ』みたいなマウンティングしてる感じもあってね、いつもはほぼノーメイクのママもアイメイクしたりするもんだから、ギョッってする時あるわ(笑)。私はそういうのには興味ないの。だから普段と変わらずジーンズ。ぴっちりしたスキニー履いて、上はカラフルなTシャツで行くのよ」

「ええっ?身体の線、丸見えじゃないですか。わたしはスキニーとか無理。富美加さんはスマートだからいいな」


ラフな恰好なのにどこかしら色っぽい富美加さんに、私はワイン色のネイルをすすめて、左手の爪を塗り始めました。

息子の同級生パパと知り合ったきっかけ

屋外のバスケットボールコート
taka4332/gettyimages

「紗里那さん、バスケ部に浦辺くんって子がいるの知ってる?」

「淳吾くんの部活の友達?」

「そう。うちの中学のバスケ部、県大会狙うほど強いから、土日にしょっちゅう試合とか練習してるのよ。母親が交代でお茶当番に行くんだけど、浦辺くんのパパは、OBとしてコーチしてくれてるの。あと、パパでは珍しいんだけどPTAにも参加していて、けっこうな頻度で会うのよ。彼、40代とは思えない細マッチョで、腹筋もシックスパックに割れてて…」

「腹筋を見たって…そんな関係!?」

「早とちりしないでよ。彼、汗かいたら陰の方で上半身ハダカになってチャチャって着替えてるの。それで、ついチラ見したわけ。あの腹筋に比べたら、うちのパパなんてメタボで下腹ダブダブ。ゼんぜん違うなあって」


旦那さんのお腹を思い出したのか、富美加さんは一瞬情けなそうな顔をしました。


「で、浦辺くんパパとは部活で会って胸キュンしてるってワケですか」


富美加さんは、またも、よくぞ聞いてくれたというような顔つきになりました。

LINE交換で個人的なやり取りが始まり…

スマートフォンを保持し、画面をタッチする女性の手。携帯電話を使用している実業家。ぼやけた背景にクローズアップ。
Pinkypills/gettyimages

「試合とかPTA会合のあとに、親だけで打ち上げに行くことがあるの。浦辺くんパパは義則っていう名前だからヨッサンって呼ばれてるんだけど、ヨッサンは飲ん兵衛じゃないからいつも中ジョッキ1杯だけ。私はお酒が好きな方だからサワー5杯くらいいっちゃう。で、お酒の力も借りてヨッサンとね、お互いの家のこととか話すようになって、LINE交換したの」

「ネットで読んだことありますよ。父母会でのLINE交換はPTA不倫のきっかけって」

「ああ、PTA不倫ね……そういえば、私のママ友も一人はまってるな。あ、コレは内緒だった」

「そりゃそうでしょう。バレたら家庭崩壊ですもん」

「そうよねえ。でもLINE交換は仕方ないことでもあるの。練習日の告知とかしないといけないからバスケ父母会でグループラインがすでにできてるのよ。だから個人的につながりたかったら、交換せずとも個別に連絡できる。子どもには怪しいオトナとつながっちゃいけないよって監視してるけどね。まあ、うちらはオトナだから……」

「それで、ヨッサンと個人的にやり取りし始めたってことですか?」

「うん。最初はね、ヨッサンとこの息子がおねえちゃんと仲が悪いって言うから女の子の接し方をアドバイスしたりして。私、女3人姉妹の長女だから、わかるのよ。思春期の女の子のこと。そしたらLINEより、直接話を聞かせてって言われたの。それでバスケの練習の後、体育館脇で立ち話するようになったの。ペットボトルの紅茶飲みながら。ほかのパパママが来たら、子育て情報を交換してるんだって笑うの。特に勘ぐられたことないなあ」

「ヨッサンは心を許してプライベートなことまで話してくれたってことですよね」

「奥さんは、姉弟げんかのとき、息子さんの肩ばかり持つって言ってたな。それはわかる。母親って男の子かわいいもんね。奥さんのこと聞いてみたのよ。そしたら話したいときがあっても刑事ドラマに夢中でスルーするときあるんだって。ヨッサンみたいに細マッチョでスポーツ万能の旦那さんとならいつまでも話していたいけどなあ。あとね、私のジーンズ、すごくかっこいいって褒めてくれた。足が長くてスタイルいいねって」

「へえ。富美加さんも旦那さんのこと話したんですか」

「あまり話してない。」


富美加さんの表情から笑顔がすっと消えました。

◇◇後編につづく◇◇

◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

 
 

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