白地の発酵食品

「発酵している」のと「腐敗している」のは何が違うの?発酵食品のすごさを第一人者が解説

2025/01/02

何となくしかわかっていない発酵食品のすごさを、発酵学の第一人者である小泉武夫先生が解説。その魅力を知れば、発酵食品をもっと取り入れたくなるはず!

東京農業大学名誉教授。農学博士。専門は食文化論、発酵学、醸造学。「発酵食品ソムリエ講座・発酵の学校」の校長を...

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そもそも発酵食品ってどういう物?

味噌は大豆による伝統的な日本の調味料です。
kuppa_rock/gettyimages

微生物の働きで発酵することで、独自のうまみや匂い、栄養価が高まった物。

発酵とは、一般的に酵母や細菌、カビなど微生物の働きによって、人にとって有益な物質を作り出す現象のこと。特に湿気の多い日本は2000年もの間、微生物と共存し、知恵を駆使して、みそやしょうゆ、納豆などの発酵食品を生み出してきました。
発酵させることによって、食品の味や匂いが変化し、アミノ酸などのうまみ成分が生まれます。また、発酵の過程で微生物がさまざまな栄養成分を生み出し、栄養価が高まることがわかっています。発酵を促す微生物が増えることで腐敗菌を寄せ付けず、保存性が高まるというメリットもあります。

「発酵している」のと、「腐敗している」のは、何が違うの?

「発酵」は人の体に良い物質を作り出し、「腐敗」は有害な物質を作り出すこと。

「発酵」も「腐敗」も、微生物の活動により起こる変化で、科学的にはほぼ同じ。微生物が生み出す物質が、人間にとっておいしい物や役に立つ物であれば「発酵」、人間にとって健康に害を及ぼす物は「腐敗」と呼ばれ、その価値観によって区別されます。


●発酵食品を作り出す主な微生物
・麹菌
カビの一種で、米や大豆などで培養させて使用。たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素や、でんぷんを糖に分解する酵素などを生成。主な食品は、みそ、しょうゆ、みりん、甘酒など。

・納豆菌
枯草(こうそう)菌という細菌の一種。煮大豆に納豆菌を加えることで発酵し、たんぱく質を分解してアミノ酸を生成。納豆菌の種類によって、納豆のネバネバ具合や味、匂いが変わります。

・乳酸菌
糖類を分解して乳酸を生成する細菌の総称。乳酸菌は乳酸菌やアミノ酸を生み出し、独特の風味を与えます。主な食品は、ヨーグルト、チーズ、キムチ、漬け物など。

・酵母菌
食べ物に含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物のこと。酒の醸造やパン作りに欠かせない菌で、みそや漬け物にも存在します。

発酵食品が体に良いと言われる理由は?

mapo/gettyimages

微生物が作り出す栄養成分をそのまま取り入れられる、究極の自然食品だから。

発酵食品がほかの食品と違う点は、微生物という「生命体」のパワーを体に取り込めるということ。つまり、化学調味料などの添加物を含まない、天然のおいしさが詰まった自然食品なのです。発酵による微生物の働きによって、左記のような健康や美容への効果が期待できます。また、発酵する過程で原料であるたんぱく質やでんぷんなどが分解されて分子が小さくなり、栄養がスムーズに体内に吸収されやすくなるのも、体にいいとされる理由の1つです。


●発酵食品の健康・美容効果
・免疫機能を活性化
腸は体内で最も免疫細胞が存在する場所。最近の研究で、乳酸菌や麹菌などの菌体は、小腸壁の近くを通る際に、免疫細胞を活性化させる指令を出していくことがわかっています。

・代謝の働きがアップ
納豆や麹、甘酒などに多く含まれているビタミンB群には、糖やたんぱく質、脂質の代謝を促す作用があります。代謝の働きが良くなることで、太りにくい体になります。

・若々しさをサポート
老化を防ぐには抗酸化物質の摂取が大切。みそやしょうゆに含まれる「メラノイジン」、赤ワインに含まれる「ポリフェノール」には抗酸化作用があり、アンチエイジング効果が期待できます。

・血液がサラサラに
納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には、血栓をつくりにくくし、血流を良くする効果が。みそなど大豆系の発酵食品に含まれる「イソフラボン」は、動脈硬化の予防に役立ちます。

※発酵食品の種類によって、含まれる栄養素が異なるため、すべてに共通しているわけではありません。

発酵食品の効果的な取り入れ方は?

朝食に食べる納豆ご飯
TATSUSHI TAKADA/gettyimages

大切なのは毎日発酵食品を取り続けること!納豆なら1日1パック、みそ汁なら1日1~2杯が目安。

発酵食品は、1回食べただけですぐに効果が表れるわけではありません。体内の善玉菌の働きを活発にするためには、発酵食品を毎日取ることが大事。日常的に食べやすい納豆なら1日1パック程度、みそ汁なら1日1~2杯を目安にして。発酵食品同士を組み合わせて食べるとさらに効果的です。例えば、納豆にキムチを混ぜた物や、甘酒とヨーグルトを混ぜた物は、腸活の最強コンビ!また、腸の善玉菌のエサとなる食物繊維が多く含まれる食品と一緒に取るのもおすすめ。「継続は力なり」です。

小泉先生おすすめ!お手軽納豆レシピ

木の背景に納豆を置く
masa44/gettyimages

● 納豆カチューユ※(かつお湯/1人分)
(1)みそ小さじ1程度をカップに入れ、お湯少々で溶かす。(2)納豆1/2パック、かつお節3gを入れ、カップの八分目までお湯を注いで混ぜ合わせ、好みで刻みのりをのせる。※沖縄地方の元気汁です。


● ネバネバーダ(2~4人分)
(1)納豆2パック分を包丁でよく叩く。(2)長いも1/3本をすりおろして器に入れ、(1)の納豆、卵2個、ゆでオクラのみじん切り、しょうゆ各少々を混ぜ合わせ、ご飯にかける。ご飯がいくらでもいける!


<教えてくれた人>
発酵博士 小泉武夫先生
東京農業大学名誉教授。農学博士。専門は食文化論、発酵学、醸造学。「発酵食品ソムリエ講座・発酵の学校」の校長を務める。食にまつわる著書は延べ150冊以上!

参照:『サンキュ!』2025年1月号「発酵食品で腸を整えよう」より。掲載している情報は2024年11月現在のものです。構成・文/宮原元美 編集/サンキュ!編集部

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