「レバー」といっしょに食べちゃダメな食材はある?意外と多い栄養素のNG組み合わせ
2023/07/15
「鉄分をとるならレバーがいい」とはよく聞く話ですが、なぜなのか理由をご存知でしょうか?
また、鉄分は組み合わせる食品によって、効果的になったり逆効果になることもあるんだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、レバーがすすめられる理由やレバーなどの鉄分が多い食品と相性のよくないものについて紹介してもらいます。
鉄分にはどんな働きがある?
鉄分とは、体の中にとって必須のミネラルで、成人の体内には約3~5g含まれています。
そのうちのおよそ70%は血液中の赤血球や筋肉中に存在し、残りは肝臓、脾臓、骨髄などに貯蔵されているのです。
わたしたちはエネルギーをつくり出すとき、酸素が必ず必要となります。鉄分は血液中では酸素の輸送、筋肉中では酸素を蓄える役割があり、運動機能や認知機能を正常に保つのに欠かせない働きをしています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日の推奨量は18~74歳男性で7.5mg、75歳以上男性で7.0mg、月経のある18~49歳女性で10.5mg、50~64歳の女性で11.0mg、月経のない18~64歳女性で6.5mg、65歳以上女性で6.0mgとなっています(妊娠中・授乳中は、これよりも推奨量が増大。それ以外にも、数値は設定されていませんが経血量が多い場合も多くとる必要あり)。
鉄分が長期的に不足すると赤血球の数が減少して細胞への酸素救急が滞り、「鉄欠乏性貧血」が起こります。すると、集中力の低下や、頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感などの症状が現れます。ほかにも、動悸、めまい、肩こり、肌・髪・爪の異常、内出血しやすい、歯茎の出血、抑うつ感といった症状が見られることも…。
令和元年の国民健康・栄養調査における鉄分の食品からの1日の摂取量は、全体平均で7.6mg、男性平均が8.0mg、女性平均が7.3mgとなっていました。ちなみに、年代別では50代未満の女性すべてで平均摂取量が7.0mg以下となっており、月経がある人は高い確率で不足していることが推測できます。
このことから、いつ症状が出てもおかしくない「隠れ貧血」状態の人が多くいることが考えられるでしょう。
鉄分の摂取はレバーが効果的?
鉄分を豊富に含む食品には、乾燥バジル、あおのり、ひじき、岩のり、カレー粉、煎茶(茶葉)、黒こしょうなどがあります。これらは、いずれも100gあたりに20mg以上もの鉄分を含みます。
ただし、上記はいずれも水分が少なく(※1)通常の食生活においてひじきを除いては10gをとることすら容易ではありません。
量をとりやすい食品で探してみると、含有量が100gあたり30.0mgのあさり(水煮缶詰)、20.0mgのスモークレバー、15.0mgの水煮しじみ、13.0mgの豚レバー(生)といったものが挙げられます。
この中で比較的簡単に摂りやすいのは、豚レバーと言えるのではないでしょうか。
豚レバーであれば、85g(串焼き換算でおよそ2本相当)食べるだけで前述のとおり推奨量を具体的な数値で示したすべての人にとって1日分を補給することが可能に。(※2)
また、鉄分は体内への吸収率は食品によって差が大きく、成人で2~30%(※3)とあまり高くありません。動物性食品であれば高く、植物性食品となると低くなる傾向にあることから、レバーの鉄分吸収率は高いことがわかります。
この理由は、鉄とたんぱく質が結合するとそのままの形で体内に吸収されやすいことが関係しています。この状態の鉄を「ヘム鉄」(おもに動物性食品)、そうでないものは「非ヘム鉄」(おもに植物性食品)と呼ばれます。後者は、体内で還元物質や酵素の働きを受けることで還元されてようやく吸収できるようになるため、吸収率が低くなっているのです。
※1……いずれも水分量は15%未満の乾燥食品
※2……妊娠などで推奨量が増大する対象者を除く
※3……数値については諸説あり、最大20%といわれることもある
栄養豊富なレバー、より効率的に摂取するためのポイントは?
そんな鉄分の補給源として理想的なレバーは、吸収率が高いヘム鉄が含まれていることから、ほかの食品成分による影響は受けないといわれています。そのため、鉄分を目的とするのであれば食べ合わせを気にする必要はないでしょう。
ただし、レバーには鉄分以外に亜鉛などのミネラルも多く含まれています。味覚機能や免疫力の維持などに役立つ亜鉛も同時に効率よく摂取したい場合、次のような食べ合わせに注意してみましょう。
「添加物(リン酸塩など)」を多く含む食品
・ハム・ソーセージなど食肉製品
・かまぼこなどの魚肉加工品
・インスタント食品、スナック菓子などの加工食品
「シュウ酸」を多く含む食品
・ほうれん草(生)
・パセリ
・チョコレート
・ココア
「タンニン」を多く含む食品(飲料)
・赤ワイン
・コーヒー
・濃い緑茶(とくに玉露)
・紅茶
上記の成分はいずれも、亜鉛の吸収効率を下げる作用があるといわれています。「相性が悪い」と言えるほどの影響は正直ありませんが、レバーの豊富な栄養素をより効果的に得たい人は、少しだけ気にしたほうがいいかもしれません。
たとえば、食事中や食後にタンニンを多く含む飲料を飲む習慣がある人も多いかもしれませんが、気になる場合にはそれ以外の飲み物を選び、食前食後になるべく時間をあけて飲むことをおすすめします。
また、相性が悪い栄養素としてフィチン酸の名が挙げられることもありますが、同成分が亜鉛や鉄分などミネラルの吸収率に影響するのは、肉、魚、野菜、果物をまったく食べないなど極端に偏った食生活を続けた場合に限ります。日本の食事事情を鑑みれば、気にする必要はほぼないと筆者は考えています。
食物繊維もとりすぎによって吸収を抑えるといわれていますが、通常の食事からとるぶんには問題ないでしょう。
レバーが苦手な人は、こうやって食べてみて!
ご紹介したように、鉄分を効率よく摂取したいのであれば、レバーなどの動物性食品では組み合わせを気にしなくてもよいでしょう。
なお、レバーが苦手という人の場合も、次のような工夫を取り入れることで食べやすくすることができます。
・豚よりも牛、牛よりも鶏のレバーを選ぶ(より臭みが少ないため)
・下処理(余分な部分を取り除く、水を替えて何度か洗うなど)を丁寧に行い、塩もみや牛乳、酢などに浸けてから調理する
・スモークレバーやレバーペーストなどの加工品を選ぶ(くん製や香味野菜の香りによって臭みが抑えられているため)
ただし、いくら効率よく鉄分がとれるからとレバーを毎日食べてしまうと、ビタミンAなどのとりすぎから健康を害してしまうことも…。そのため、レバー以外の動物性食品や植物性食品も上手に取り入れるようにし、バランスのよい食事を心がけましょう。
多くの人に不足している鉄分の補給は、こういったことを参考にしてみてはいかがでしょうか?