「齟齬」とは?意味や正しい使い方、類語や対義語との違いまで
2022/05/31
齟齬は、食い違いや認識・解釈の違いや、それによって物事が円滑に進んでいない状態を表す言葉。
あまりカジュアルな表現ではないので、私的な場面ではなく、主にビジネスシーンやメールなどの書き言葉で用いられます。適切に使用・理解できるように、意味や使い方を正しく把握しておきましょう。
今回は、齟齬の意味は?使う場面は?といった疑問をはじめ、類義語・対義語、「齟齬」を用いる際の注意点までを例文を交えながら解説します。
齟齬とは?
「齟齬」の読み方と意味を紹介します。
齟齬の読み方
齟齬は「そご」と読みます。
普段はあまり使用しない漢字を重ねた言葉なので、初見では読みにくい単語です。文章や会話のどちらでも正しく使えるように、読み方も確認しておきましょう。
齟齬の意味
「齟齬」とは、双方の食い違いによって物事が円滑に進んでいない状態を意味する言葉で、ビジネスシーンにおいては、主に関係者の間で認識に違いが生じた場面に用いられます。
一般的に次のように動詞と組み合わせて用いられます。
・齟齬がある / ない
・齟齬が生じる
・齟齬をきたす
また、動詞として「齟齬する」と使用することも可能です。
齟齬はどんな場面で使う?
「齟齬」を用いる場面として、以下のような例が挙げられます。
・自分と相手の認識や見解などが異なっていると伝えるとき
・相手の認識に違いがあると遠回しに抗議するとき
1つ目は、自分と相手の間に食い違いが起きている場面です。
例えば、会議でお互いに今後の業務の流れを整理・確認したものの、実際に業務を進めてみると認識の違いによって取り組みの内容に違いが生じていた場面などで用います。
2つ目は、相手の認識に間違いがあることを遠回しに抗議する場面です。
例えば、取引先に見積書の提出を依頼した際に、受け取った書類に記載されている納期や価格が事前に伝えた内容と異なっていた場面などで用います。
このように、「齟齬」は基本的に二者間で何らかの食い違いやズレが生じた場面で用いる言葉です。
齟齬の使い方・例文
それでは、「齟齬」は具体的にどのように使われるのでしょうか。
よく使用される3つの言い回しと、それを使用した例文を通して、実際の使い方を確認しましょう。
「齟齬がある / ない」を使った例文
「齟齬がある / ない」を使った例文は、以下の通りです。
・齟齬があるといけないので、お互いの意見をじっくり確認した
・大規模なグループで円滑に業務を進めるには、メンバー間の齟齬をなくすことが重要だ
「齟齬が生じる」を使った例文
「齟齬が生じる」を使った例文は、以下の通りです。
・取引先との間に齟齬が生じ、契約が打ち切りになってしまった
・プロジェクトの進め方について、上司との間に齟齬が生じている
「齟齬をきたす」を使った例文
「齟齬をきたす」を使った例文は、以下の通りです。
・同僚との間で齟齬をきたしたのは、双方のコミュニケーション不足が原因だ
・長期に渡ってプロジェクトを進めていたが、初期段階で関係者との齟齬をきたしていたことが発覚した
齟齬の類語
齟齬と似た意味を持つ言葉を3つ紹介します。
行き違い
行き違い(ゆきちがい・いきちがい)は、すれ違いが起きて出会えないこと、意見や計画に食い違いが生じることを表す言葉です。
例文
・2人とも近くに足を運んでいたが、行き違いになってしまった
・入金確認について、行き違いが生じた
相違
相違(そうい)は、2つの事項が一致しないことを指す言葉です。二者間の意見に違いがある場面、物事が事実と異なる場面などで用います。
意見や認識の伝達が不十分な場面で生じる「齟齬」とは異なり、単に双方の考えなどに違いがある場面で使用するのが「相違」です。
例文
・契約内容に相違がないか、ご確認ください
・意見の相違がありますが、最終段階まではこのまま進めていきます
不一致
不一致(ふいっち)は、一致しないことやぴったり合わないことを指す言葉です。意見や性格などが合わない場面で用いられます。2つの事項が一致しないことを表す「相違」に近い言葉といえるかもしれません。
例文
・会長と社長の間で、意見の不一致がある
・性格の不一致は離婚の原因としてよく挙げられる
齟齬の対義語
齟齬と反対の意味を持つ言葉を3つ紹介します。
疎通
疎通(そつう)は、障りなく通ること、塞がっているのを開き通すこと、また意志の通ずることや条理のよく通ることを指す言葉です。
「意思」とセットにして、意見や考えが通じるさまを表す際に用いられることが多いです。
例文
・海外拠点のスタッフと意思疎通するために、英語力を上げる必要がある
・円滑に業務を進めるために、メンバー間で意思の疎通をはかることは重要だ
合致
合致(がっち)は、ぴったり合うことや一致することを表す言葉です。
例文
・話し合いによって、両者の意見が合致した
・彼の計画は、私の考えとも合致している
符合
符合(ふごう)は、2つ以上の物事がぴったり合うことを表す言葉です。複数の情報や考え・方針などが一致した際に用いられます。
例文
・被疑者の供述は、捜査で得た情報と符合する
・この計画は、上層部が打ち出した方針と符合するものである
「齟齬」を用いる際の注意点
「齟齬」を用いる際の注意点を2つご紹介します。
目上の方に対しての使用は控える
食い違いや認識の違いを表す「齟齬」は、相手の意見や認識に誤りがあると主張するニュアンスが含まれるため、目上の方に対して使うと悪い印象を与えてしまう可能性があります。
例えば相手に非がある場面でも、「齟齬」という言葉を使うと、目上の方を疑っているような印象を与えかねません。また、純粋に食い違いがあると思っていたものの、実際は自らに非があった場合では、相手に強い不快感を与えてしまいます。
目上の方との間で食い違いが生じた場面では「認識が甘かった」「勘違いしていた」など、あくまで自分の側に非があった体で伝える方が無難です。
原因が自分の側にあるときの使用も控える
「齟齬」は認識や見解に二者間で食い違いがあることを客観的に表現する言葉です。従って、自分の側に落ち度がある場面で用いるべきではありません。
食い違いが生まれた原因が自分の側にあるときは、素直に非を認め、誠心誠意謝罪することが大切です。
齟齬についてよくある疑問
最後に、齟齬についてよく検索されている質問と、その回答を見ていきましょう。
「齟齬が生じる」の代替表現は?
「齟齬が生じる」の言い換え例として、次のようなものが挙げられます。
・食い違う
・行き違いがある
「齟齬がない」の代替表現は?
・ずれがない
・食い違いがない
・行き違いがない
・相違がない
・一致する
齟齬は英語でなんという?
齟齬は英語で「discrepancy」や「disagreement」と表されます。
まとめ
齟齬は、食い違いや認識・解釈の違いによって物事が円滑に進んでいない状態を表す言葉。
相手の認識に誤りがあると主張するニュアンスが含まれるので、目上の方に対して使うのは避けるのが無難です。同様の理由で、自分に落ち度がある場合にも使用を避けましょう。
齟齬の意味や使い方を正しく把握し、ぜひ適切に使用できるようにしていきましょう。
参考書籍
広辞苑 第六版(普通版) - 岩波書店
大野晋(1981)角川類語新辞典