東京タワーの航空写真

俯瞰とは?「俯瞰で見る」は誤用って本当?意味や使い方、例文をご紹介

2022/06/01

俯瞰(ふかん)とは、「高いところから見下ろすこと」を表す言葉です。そこから転じて、「全体を把握すること」の意味で使われることもあります。

ビジネスシーンでは、後者の「広い視野で全体を把握すること」の意味でよく使われる俯瞰。「俯瞰して見ましょう」などと言われることもありますが、実はこの表現は誤用です。

そこで、俯瞰の意味や使い方、例文を詳しく解説します。誤った表現をしないように、「俯瞰」について知っておきましょう。

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俯瞰とは?

俯瞰とは、「高いところから見下ろすこと」を表現する言葉です。使う場面によって、2つの意味を持つ言葉でもあります。俯瞰について詳しく解説します。

「俯瞰」に使われる漢字

俯瞰という言葉に使われている「俯」と「瞰」という漢字の意味は、以下のとおりです。

・「俯」はうつむく、上体を前に曲げる
・「瞰」は見下ろす、遠くを眺める

「上体を前に曲げてうつむきながら、見下ろすこと」が俯瞰だといえます。

「俯瞰」の意味

俯瞰の意味は大きく分けると次の2つ。ビジネスシーンで使う場合と絵画や写真の構図などで使う場合の意味を解説します。

ビジネスシーンで比喩的に使うときの「俯瞰」

ビジネスシーンで「俯瞰的な視点を持ちましょう」などと使うときの「俯瞰」は、全体を把握することを指します。

俯瞰のもともとの意味は、高い場所から見下ろすこと。上から見下ろすと物事の全体像が見えるという比喩的な表現です。

たとえば、仕事で何かプロジェクトを推進するとき、メンバーがそれぞれの役割に邁進しますが、自分の仕事に集中するあまり、目先のことしか見えなくなりがちです。こういったケースでは、プロジェクトを俯瞰、つまり全体像を把握することが必要になります。

写真や絵で物理的な意味で使うときの「俯瞰」

写真や絵の構図を考えるときに使われる「俯瞰」は、物理的に上から見下ろすことを指します。たとえば、富士山の山頂に登って下を見渡すことが俯瞰です。

上から見下ろす形で撮影することを「俯瞰撮影」、同じ構図で描かれたものを「俯瞰図」といいます。

「俯瞰」の使い方

imtmphoto/gettyimages

俯瞰という言葉を使う場面や使い方をご紹介します。

「俯瞰」を使う場面

俯瞰はビジネスシーンでよく使われる言葉です。仕事に関わる人・材料・商品の動きなど全体を把握することを表します。

たとえば、

・一歩引いた視点で見ること
・全体を見渡すこと
・長期的な視点を持つこと

などといったニュアンスで、ミーティングで使われたり上司から指示を受けたりします。

「俯瞰」を使った言葉

俯瞰は、決まった言い回しで使われることが多い言葉です。4パターンの「俯瞰」の使い方について解説します。

例1:俯瞰的に考える

「俯瞰的に考える」は、少し離れたところから対象を見て、全体を捉えながら考えることを表しています。また、自分の意見を離れて、客観的に物事を考えることも「俯瞰的に考える」ことだといえます。

例2:俯瞰的に捉える

「俯瞰的に捉える」の「捉える」とは、物事の本質を理解して自分のものにするという意味があります。つまり、俯瞰的に捉えるということは、上から見下ろすように全体を把握することです。

たとえば、ビジネスシーンでは、俯瞰的に捉えることで各担当の連携がうまくできていないなどという問題が明らかになることがあります。

例3:俯瞰的視点

「俯瞰的視点」とは、高いところから見下ろすような視点のこと。ビジネスの場では、「俯瞰的な視点を持ちましょう」などと使われることが多い言葉です。また、物理的に上から見下ろす構図という意味もあり、この場合はデザインのイメージなどを説明するときに使われます。

例4:俯瞰力のある人物

「俯瞰力のある人物」とは、自分のことだけに集中せず、全体を見渡せる人物のこと。ビジネスシーンでは、「プロジェクトリーダーには俯瞰力のある人物が求められる」などと使われることがあります。

俯瞰力はビジネスだけでなく、試験勉強や他者とのコミュニケーションなど、さまざまな場面で役立ちます。俯瞰力を持つことで、自分の立ち位置がわかったり、目標を達成するために何が必要なのかを逆算したりすることができるからです。

このため、ビジネスだけでなく、教育の場でも「俯瞰力」という言葉はよく使われます。

「俯瞰」を英語で表現すると?例文も紹介

俯瞰の英語での表現は以下のとおりです。

「俯瞰する」という動詞は、「overlook」や「look down at」と表現します。「俯瞰図」の英訳は、「bird’s-eye view」なので、「俯瞰的視点を持つこと」を「have bird’s view」ともいいます。

具体的な使い方として、以下の例文をご紹介します。

・I overlooked the city from the hill.
(私は丘から街を俯瞰しました。)

・We got a bird’s-eye view of the town.
(私たちは街の俯瞰図を手に入れました。)

「俯瞰」の類義語・対義語とニュアンスの違い

俯瞰の類義語と対義語をご紹介します。

「俯瞰」の類義語

鳥瞰(ちょうかん)

「鳥瞰」は、空を飛ぶ鳥のように高い場所から見下ろすことを表す言葉です。

俯瞰とほぼ同じ意味で使いますが、違いは見下ろす位置の高さにあります。鳥瞰は見下ろす位置が空なので、俯瞰よりももっと高い位置から見下ろすイメージです。

ビジネスシーンでは、鳥瞰よりも俯瞰のほうがよく使われます。

客観的

「客観的に見る」は、第三者的な目線で見ることです。自分の視点でない観点から見るという点は同じですが、「客観」は第三者目線で目の前のことを見るのに対し、「俯瞰」は自分も第三者も含めた状態でより高い視点から全体を見渡すという意味があります。

大局的

「大局的に見る」は、物事の細かい部分ではなく全体の状況や動きを捉えることを指します。大局的はどちらかというと、刻一刻と変化する進捗状況に使われることが多い言葉です。たとえば、囲碁や将棋の対局などには、俯瞰よりも「大局的に見る」を使います。

マクロ視点

「マクロの視点で見る」も、俯瞰と同じニュアンスで使われます。マクロは、「巨大」や「広い」という意味。俯瞰のように高いところから見下ろすという意味はありませんが、物事全体を見渡すという点では同じように使えます。

「俯瞰」の対義語

俯瞰の対義語は、主に以下の2つです。

近視眼的

「近視眼的に見る」は、物事の1つの側面しか見ないことを表しています。俯瞰は広く物事の全体像を見渡すことなので、近視眼的に見ることとは反対の意味です。

仰望(ぎょうぼう)

「仰望」は、見上げること。物理的に仰ぎ見ることを表します。たとえば、「東京スカイツリーを仰望した」などのように、高いものを見上げるときに使います。

「俯瞰」を使うときに注意したいこと

オフィスで「ノー」の看板を与えるビジネスの日本の女性
kazuma seki/gettyimages

俯瞰という言葉を使うとき、やってしまいがちな誤りがあります。間違いやすい2つをご紹介します。

「俯瞰して見る」は誤用

「俯瞰して見る」は、よく耳にしますが、間違った使い方です。そもそも俯瞰には、「見る」という意味が含まれています。このため、「俯瞰して見る」には「見る」という言葉が重複した表現です。「腹痛が痛い」と同じタイプの誤りといえます。

同じ意味合いで正しく言い換えると、「俯瞰的に見る」となります。「的」をつけることで比喩的な表現になるので、重複表現にはあたりません。

「客観的に俯瞰する」は間違い?

会議やミーティングなどで熱く議論をしているとき「客観的に俯瞰しよう」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?しかし「客観」も「俯瞰」も近い意味をもっているので、二重表現になります。

厳密には、「客観」は第三者目線で目の前のことを見るのに対し、「俯瞰」は自分も第三者も含めた状態でより高い視点から全体を見渡すという意味があるので、状況に応じて使い分けられるといいですね。

まとめ

ビジネスシーンでよく耳にする「俯瞰」という言葉について解説しました。

俯瞰とは、物事を上から見下ろすように、全体像を把握すること。仕事では自分の作業内容に集中すると、周りのことが見えなくなりがちです。つねに全体を把握することで、自分の立ち位置や目標達成のためにやるべきことが明確になります。

「俯瞰」はよく使う言葉ですが、意外と多くの方が間違った使い方をしている言葉でもあります。「俯瞰して見る」は重複表現です。正しく「俯瞰」という言葉を使っていきましょう。

参考サイト

 
 

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