【夫婦の家事分担「妻9割」という現実】なぜ夫たちは「なにもしない」のか?

2023/02/21

夫が家事をまったくやらない……と悩む妻は多いのではないでしょうか。そこで今回は、夫たちが「なにもしない」理由について、恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。

会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、We...

>>>三松真由美の記事をもっと見る

日本の男性は世界一家事をしない

リンナイ株式会社が既婚男女を対象に行った「夫婦の家事分担」に関する意識調査が発表されました。その中で男女それぞれにその家庭での家事分担を聞いたところ、「妻9割、夫1割」という回答が男女とも1位でした(女性が34%、男性が28%)。

女性の2位は「妻10割」(23%)、3位は「妻8割、夫2割」(21%)と続きます。一方で男性の2位は「妻8割、夫2割」(23%)、3位は「妻7割、夫3割」(19%)で、女性の2位である「妻10割」と答えたのは5位タイのわずか8%。

つまり、全体的に男性は「妻に任せっきりである(=妻10割)」とは思っておらず、「自分はそれなりにやっている(=夫2割、もしくは3割)」と思っている傾向が見て取れました。

リンナイ株式会社では2018年にも、家事に関して海外4か国(韓国、アメリカ、ドイツ、デンマーク)と日本との比較調査(https://www.rinnai.co.jp/releases/2018/0208/)を発表しています。

それによると「あなたは、配偶者(パートナー)と家事を分担していますか」という質問に対して、日本以外の国はYesが77~93%だったのに対し、日本のYesは最下位の56%。

また、「あなたの配偶者(パートナー)の家事に対する協力度は、100点満点で評価するとしたら何点ですか?」という質問に、男女それぞれが答えた点数の差が最も大きかったのは日本で、その差は24.06点でした(男性から女性の評価が79.9点に対して女性から男性への評価が55.84点)。

ちなみに最も点数の差が小さかったのがアメリカで2.06点(男性から女性が68.8点、女性から男性が66.74点)で、男女ほぼ同点なのは、さすがに家事分担の先進国と言えます。

もちろん、海外にはベビーシッターやハウスメイドといったカルチャーがあったり、生活習慣や価値観が異なる点もあったりするので、日本と単純に比較はできません。しかし、ほかのさまざまな調査を見ても「日本の男性は世界一家事をしない」ことは定説になっています。

なぜ日本の男性は家事をしないのでしょうか?その理由を考えてみましょう。

【仮説1】日本の男性は労働時間が長いから家事をする時間がない

OECDが2020年に発表した生活時間の国際比較によると、比較対象となった国の中で、1日あたりの有償労働時間が最も長かったのは日本の男性の452分(7時間32分)で、OECDの平均値317分(5時間17分)を2時間以上上回ったそうです。

働き方改革が叫ばれ、以前よりも長時間残業が減る傾向にあるとはいえ、国際的に見ると「労働時間が長いから」というのは男性が家事に参加しにくい理由の一つになるでしょう。

【仮説2】収入が少ないほうが家事を多く分担するべきだと思っているから

Prostock-Studio/gettyimages

「夫は外で稼ぐのが主な仕事。妻は稼ぎが少ない分、家事を分担するべき」という意見もよく聞きます。

確かに、最初に紹介したリンナイの調査でも、家計の収入源が主に夫である家庭は、妻の家事負担が9割でした。しかし、収入源が夫婦同じ割合である家庭でも、夫婦の家事分担は5割ずつにはならず、1位:妻の家事負担が7割、2位:妻の家事負担が6割、3位:妻の家事負担が8割という結果になりました。


この結果を見る限り、稼ぎが一緒の家庭でも妻が家事を担っており、「稼ぎにあわせて家事分担が決まる」という理屈は実態に合っていないことになります。

ということは、たとえ収入が少なかったとしても、家事を分担しようとは思わない別な理由が男性にはあると考えられます。

【仮説3】夫が育った実家の環境では、母が家事を担っていたから

専業主婦家庭と共働き家庭が初めて同数になったのが1990年で、1997年以降はずっと共働き家庭の数の方が上回っています。そうなると、1990年より前に生まれた男性(=32歳より上)は、母親が家事を100%担う専業主婦家庭で育った人の方が多いということになります。

家事をやる父親をほとんど見ていないのであれば、「家事を分担する夫」というロールモデルを知りません。従って、どのように夫が家事を分担すべきなのか、イメージがつかめていない可能性があります。

【仮説4】妻の方も「家事は女性がやるもの」と思っているから

上記3の裏返しになりますが、1990年より前に生まれた女性も「家事を全部担う専業主婦の母」のもとに育った人が多い、ということになります。従って、女の子だけが「お手伝いしなさい」と言われて過ごし、父親や兄・弟は家事をしない状況が当たり前という価値観が、心のどこかに残っている可能性があります。

しかも、日本は、お付き合いの過程で彼のために肉じゃがなどの手料理を作ってあげる、彼の部屋に行ったら食器洗いをしてあげるなど、甲斐甲斐しく動くことで「モテ度」をあげる世界観が、少し前まであたりまえのものとされていました。

令和の今でも「彼のケアをする女性」は絶滅しておらず、そのまま結婚すると10割夫婦ができあがるというわけです。

なお、冒頭のリンナイの調査でも「現在の夫婦の家事バランスはちょうど良いと思うか?」という質問に対して「妻の家事分担10割」の人で15%、「妻の家事分担9割」の人で27%が「YES」と回答しています。

もちろん、「NO」の回答は「家事分担10割」で30%、「家事分担9割」で39%と、「YES」を上回ってはいますが、それでも「家事分担が9割」の5人に1人が「家事バランスがちょうどいい」と思っている現実は、「家事は女性がするもの」という価値観が根強いことをうかがわせます。

【仮説5】日本の家事は複雑で手がかかり、分担するのが難しいから

海外に行くと……いや、行かずとも映画やドラマで見るに、家庭の食事がシンプルなことに気づきませんか。

朝食は火を使わないシリアルや菓子パンとコーヒー。夕食もピザやパスタなど一皿のみだったり、オーブンで肉を焼いただけだったりと、手のかからない料理。あるいは、家で調理をせず、外から買ってきたものを食べる習慣のある国もあります。

タイなどアジア圏では、夕食は毎日、外の屋台という家族もたくさん見られますし、シンガポールもフードコートが安くて充実しています。

一方日本は独特で、一汁三菜のように品数も食器の数も多く、作るのも片づけるのも負担が大きい文化です。

「家事はできるだけ手間も時間もかけないのがベター」とする欧米と違い、日本では「家事は丁寧に心を込めて行う方がベター」という価値観の違いもあるのでしょう。

何事にもきめ細やかで、求めるサービスの基準が高い日本人は、家事に対しても完璧を求め、手抜きができないような雰囲気があり、それが、男性が家事に手を出しづらい原因になっていることは十分考えられます。

【仮説6】家事をやっても妻からダメ出しされて、感謝されないから

妻と夫はリビングルームで一緒に洗濯物を折りたたむ
takasuu/gettyimages

妻がよき妻であろうとして家事を丁寧にやることで、家事全般が高いスキルや繊細な気配り、細やかな段取りを必要とされるものになってしまい、夫が担当するには難しいものになってしまっている可能性もありそうです。

洗濯一つにしても、色落ちするものを分けて、傷みやすい素材の物は洗濯ネットに入れて、洗剤のほかに柔軟剤や香りづけを入れて洗濯機で洗い、汗臭いものは消臭ビーズを入れて、ニットセーターは別途手洗いして……など段取りが複雑なご家庭が多いのではないでしょうか。

「夫に頼んだら適当にやられて服が傷んだ」
「結局私がやり直した」

など、家事を分担してもらっても妻側の満足度が上がらないことも多々あります。そのうちに「結局頼んでも満足いく仕上がりにならないから、もうやらせない」「細かい段取りを説明するより、自分でやった方が早いから夫に頼まない」と、家事分担をあきらめてしまう妻も出てきます。

一方で分担した夫側としても「妻のマイルールに従ってやらないといけないので面倒」「どうせやってもダメ出しされる」「感謝されない」などモチベーションが上がらず、それが積極的な家事参加の妨げとなっている可能性があります。

家事に求めるアウトプットのレベルの高さが、妻にも夫にも負担になっているのではないでしょうか。

結論:夫を根気よく育てていくしかない

日本の家事分担の文化はまだまだ過渡期、成長過程にあります。今の夫たちが「家事する男性」のロールモデルになるには、男性だけでなく女性の意識改革も必要です。

まずは家事をもっと楽なものに変換すること。

求めるハードルを下げることで夫にも頼みやすくなりますし、自分でやる時も時短になります。たとえば料理であったら「健康のために毎日20品目」などは頑張りすぎ。「1週間単位でバランスがとれていれば大丈夫」ぐらいのおおらかさでいきましょう。

手作りにこだわりすぎず、合理的に「賢く手抜き」をすることも大切です。そして「家事する男性」になるよう、夫を根気よく育てていく。

そのためには「自分がやった方が上手にできる」と抱え込まず、夫にどんどんやってもらう。そして、デキがいまいちだったとしても、けなしたりやり直したりせず、取り組んだことを大げさに褒めて感謝。仕上がりの完璧を求めるより、夫が次も気持ちよく取り組めるようなモチベーション維持が大切です。

夫の家事の結果に神経質にならない。ズボラでも苛つかない。少々リビングがちらかっても、それについて夫婦でジョークを言って笑っているくらいがちょうどいい。気楽に気長に夫の家事力サポートを!


◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

三松真由美さん最新刊「夫とだけ、感じません」発売中

出典:Amazon

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND