「粉雪」、「ぼた雪」、「わた雪」…なぜこんなに種類があるの⁉雪に違いが出るしくみと防災ポイントを気象予報士が解説
2023/12/07
天気に詳しくない人でも、「粉雪」や「ぼた雪」といった言葉に聞き覚えがあるのでは。
なんとなく「粉雪」は軽くてサラサラの雪、「ぼた雪」は湿った重たい雪のイメージがありますが、そういえばそもそもなぜ雪にこんなにバリエーションがあるのでしょうか。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、意外と奥深い雪の世界を解説してもらいます。
「津軽には七つの雪が降る」
演歌「津軽恋女」には、「津軽には七つの雪が降るとか こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪 みず雪 かた雪 春待つ氷雪」という有名なフレーズが出てきます。
演歌そのものはよく知らなくても「七つの雪」というフレーズは聞いたことがある、という人は多いのでは。
もともとは太宰治の小説『津軽』の冒頭に登場する7種類の雪を歌詞に盛り込んだもの。太宰治は『東奥年鑑』という、地元の新聞社が発行する地域の便利帳のような本を参考にして書いたようです。
じつはこういった雪の呼び名には科学的な定義があるわけではなく、さらには地域ごと、そして時代ごとに数えきれないほどの呼び名が存在します。
そのため、たとえば同じ「わた雪」でも(綿のようなフワフワした雪というざっくりした共通点はあるものの)具体的にどういう雪が該当するかは時と場所によって異なります。
ただ、実際にいろんなタイプの雪が存在すること自体は間違いなく、さらには雪のタイプごとに注意すべきことも変わってくるため、雪国では昔から雪にさまざまな名前をつけて子どもも大人もわかるよう工夫されてきました。
雪の違いを生み出すのは
雪は雲から落ちてくる氷の粒ですが、じつはこの氷の粒、つまり結晶にはかなりのバリエーションがあります。
よくイラストで見る六角形の花のような形のほかにも、針のような細長い形状のものや柱状のもの、さらには伝統的な和楽器の鼓(つづみ)に似た形のものまで、多種多様です。
これらの結晶が混ざり合いながら、ときには一部溶け合いながら空から地上へと落ちてくるため、私たちが目にする雪にも必然的にさまざまな種類が生じるのです。
雪の結晶は上空の状態を教えてくれる
雪の結晶がどんな形になるかは、上空の大気がどんな状態にあるかで決まります。
つまり、雪の結晶を観察することで、地上にいながらにしてそのときの上空の気温や湿度の状態を推測することができるのです。
雪の結晶は小さいとはいえ最近のスマートフォンのカメラ機能で十分に観察そして撮影が可能なため、一般の人が撮影した雪の結晶の写真を集めることで研究を進めている研究者も実際にいます。
そういった地道な研究が、将来の天気予報の精度向上につながっていくのです。
雪が変わると「雪害」も変わる!
「粉雪」、あるいは「パウダースノー」と呼ばれるような雪は、あっという間に積雪になります。
いわば"効率よく"積もりやすい雪なので、スキー場にとっては恵みの雪ですが、外に停めておいた車がちょっと見ない間に雪に埋もれてしまうことも。
また「ぼた雪」(「ぼたん雪」とも)は大粒で水分の多い雪なので、とにかく重たいです。
そこまで多くないように見える積雪でも倉庫や駐車場の屋根が変形してしまったり、重みで電線が切れて停電につながってしまうこともあります。
詳しい雪の名前を知らなくても、「今日の雪はサラサラだな」とか「べちゃべちゃした水分の多い雪だな」と感じることはできるので、タイプ別にどんな影響が起きやすいか想像することで、想定外の雪害に遭うことを避けたいですね。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部