「ゲリラ豪雨」はなぜ起きる?しくみを知って身を守るコツを気象予報士が解説!
2023/08/06
例年夏になると日本の各地で発生するゲリラ豪雨。雨の気配がまったくなかった状態からあっという間に土砂降りになり、洗濯ものをぬらしてしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
そもそもゲリラ豪雨はなぜ起きるのか?どういう状況がそろったらゲリラ豪雨が発生するのか?
気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに教えてもらいます。
雨雲の「材料」を動かすもの
雨の正体は、皆さんご存じの通り、空気中の水蒸気が水滴になったものです。そして空気中に存在している水蒸気を水にするには、空気を冷やす必要があります。
大気中では日々、さまざまな原因で空気が地上から上空へと持ち上げられ、上昇する過程で空気は冷やされて水蒸気が水へと変化します。
さまざまな原因とは、たとえば低気圧や前線。
低気圧の中心付近では強い上昇気流が発生しますし、梅雨前線のような前線の近くでは空気と空気がぶつかって上昇しやすくなっています。
一方で、特にゲリラ豪雨において原因となっていることが多いのは、暑さです。正確には、上空に対して地上付近の気温が高すぎること。
高温の空気は軽いですから、低気圧などの助けがなくても自力でどんどん上昇していき、上昇しながら冷えて雲になります。
雨雲の発達にかかる時間は、わずか30分から1時間ほど。そのため「あっという間に」雨が降りだしたように感じられるのです。
カギは地上と上空の「気温差」
さきほど、上空に対して地上付近の気温が高すぎると上昇が生じる、と説明しましたが、これにはいくつかのパターンがあります。
たとえば、地上付近が文句なしに暑いパターン。最高気温が35度を超えるような日は、それだけで空気が上昇できる条件が整います。
あるいは、上空の空気が普段よりもさらに冷たくなっているパターンもあります。
天気予報などで「上空に寒気が流れ込んで…」といったフレーズを聞いたことがある人もいると思いますが、寒気が流れ込んで上空が一層冷たくなっていると、地上付近の気温が30度を超えないくらいでも相対的に「高温」となり、上昇が始まるのです。
つまり、ゲリラ豪雨が引き起こされるには、「地上の猛暑」と「上空の寒気」の少なくともどちらかが必要。そして両者がそろうような日には、特に天気の急変に注意が必要になってきます。
体感で「材料」を見逃すな!
ここまで、地上付近にある空気が上昇するための条件を見てきましたが、はじめの話を振り返ると、そもそも空気の中に雨雲の「材料」である水蒸気が含まれていることが必須でしたね。
この水蒸気については、体感で察知することができます。つまり、「なんだか空気がむしむしする」と感じる日ほど、空気中には多くの水蒸気が含まれているのです。
たとえ同じような気温の日が続いたとしても、空気中の水蒸気の量が変わるだけでゲリラ豪雨の起きやすさは大きく違ってきます。
肌で空気感を察知するとともに、天気予報で「暖かく湿った空気が…」といったキーワードに注目することで、ゲリラ豪雨のサインを見逃さずに備えることができるのです。
ゲリラ豪雨から身を守ろう
ゲリラ豪雨と呼ばれるような狭い範囲に集中して降る雨は、さほど長続きすることなく、たいていは30分か1時間程度でやみます。
しかしそのわずかな時間に、100ミリを超えるような大雨をもたらすことがあり、外を歩いたり車を運転したりすることが危険になる場合も。
さらには落雷やひょうを伴うことすらあって、できるかぎり遭遇を避けたいものです。
天気予報に出てくるキーワードや、むしむしした空気感といった手がかりをヒントにしつつ、実際に雷の音を聞いたり、黒に近いような濃い灰色の雲を目撃したりした場合は、無理して外を移動せずに建物の中に入りましょう。
またスマホで雨雲レーダーを検索すれば、無料で雨の様子や今後の予想を確認することができます。
最新の情報を利用して、効率よくゲリラ豪雨から身を守りましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部