冬はなぜ乾燥する?ほかの季節との違いは??意外と奥が深い「乾燥」を気象予報士が解説!
2024/01/12
冬になると毎年、空気が乾燥して肌や喉がつらい…そんな人は多いはず。でも、そういえばどうして冬って毎年毎年こんなに乾燥するのでしょうか。
また、春や秋の乾燥とはちょっと雰囲気が違う気もしますが、実際に気象学的な違いはあるのでしょうか。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、意外と奥が深い「冬の乾燥」について教えてもらいます。
乾燥するのはどこ?
日本の冬、とくに空気が乾燥するのは太平洋側の地域です。じつは日本海側では冬の間も平均で70%程度の湿度があり、ほかの季節とあまり大きな差がありません。
この太平洋側の乾燥に大きく関わっているのが、天気予報などでよく聞く「冬型の気圧配置」です。
冬型というのは、日本列島をはさんで西に高気圧、東に低気圧がある、いわゆる「西高東低」の気圧配置。
この配置になると日本付近では北西の季節風が吹き、シベリアからの冷たい風が日本海上空を通過して日本列島に届きます。
この「日本海上空を通過して」という部分が、日本海側と太平洋側で異なる冬の空気をつくりだす原因になっているのです。
湿った空気が乾いた空気に…
日本列島には背骨のような山脈、いわゆる"脊梁(せきりょう)山脈"が走っています。
シベリアからやってくる寒気は日本海上空を通過する際、海から水分を受け取って「冷たくて湿った風」となって日本海側の陸地に到達します。
そして山脈にぶつかって雨雲・雪雲を発生させ、日本海側の各地に雨や雪を降らせるのです。
雨や雪を降らせ終わった寒気は、「冷たくて乾いた風」となって山脈の向こうの太平洋側へと向かいます。このため、冬は日本海側では湿度が高いのに太平洋側では湿度が低い、というコントラストが生まれるのです。
日本海側でも「乾燥」?
日本海側にお住まいの人でも、なんとなく冬の空気が乾燥しているというか、空気感がほかの季節と異なって肌に痛く感じることがあると思います。
これには、湿度と気温の関係が大きく効いています。
さきほどから言及している湿度というのは正確には「相対湿度」というもので、「その温度において空気中に含むことができる限界の水蒸気量に対して実際にどのくらい水蒸気があるか」を割合で表したもの。
限界量の半分の水蒸気が含まれているのであれば「相対湿度」50%、限界いっぱいまで含まれているなら「相対湿度」100%です。
ところが、この限界は空気の温度によって異なります。
温度が低いほどあまり水蒸気を含むことができなくなるので、寒い冬は限界量自体がかなり小さくなるのです。
つまり、たとえば同じ「相対湿度」50%でも、ほかの季節と比べて冬は空気中に含まれる水蒸気の絶対的な量が少ない状態。
これによって、「相対湿度」が高い日本海側でもなんとなく乾燥を感じるのです。
温度に振り回されない「絶対湿度」の活用を
ここまで読んで、たとえ水蒸気が少なくても温度によっては湿度が高くなるのであれば、そもそも湿度ってあまりアテにならないなぁと感じた人もいると思います。
そんなときは、「絶対湿度」の活用がおすすめ。「絶対湿度」は温度に関係なく、具体的に空気中に何gの水蒸気があるのかを示してくれます。
最近は加湿器やデジタル室温計などの家電製品で、「絶対湿度」の表示が可能なものが増えてきました。
たとえば加湿器だと、快適にすごせる目安の「絶対湿度」が取扱説明書に載っていることが多いので、ぜひ参考にしてください。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部