東京と名古屋はどちらが雪が多い?意外と雪が降るワケを気象予報士が解説!
2023/12/27
冬になると天気予報でよく聞く「冬型の気圧配置」。日本海側で雪が降りやすく、太平洋側で晴れやすい気圧配置で、もちろん実際に雪がたくさん降っているのは主に日本海側の地域です。
ところが太平洋側の、しかも東京や名古屋といった大都市の雪のデータを見ると、思いのほか雪が降っているようなのです。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、太平洋側の市街地でも雪が降るワケを教えてもらいます。
東京と名古屋はどちらが雪が降りやすい?
気象庁がまとめているデータの1つに「雪日数」というものがあります。
ちょっと雪が降った日も大雪だった日も区別せず、とにかく少しでも雪が降った日を全部カウントして、1年間あるいは1カ月間で何日雪が降ったかを表したものです。
その雪日数の30年平均値(「平年値」と言います)を見てみると、東京の年間の雪日数は8.5日。意外と多く感じるかもしれませんが、雪がちらついただけでも「1日」とカウントするのでこのくらいの数字になるのです。
一方の名古屋は、14.7日。なんと年間15日近くも雪が降っています。
東京と比べるとじつに倍近い数字で、ここまで違うと何か根本的な理由がありそうですね。
名古屋の雪の原因は?
東京や名古屋などの太平洋沿岸地域で雪が降る理由の1つは、南岸低気圧です。
南岸低気圧の接近は例年、1月から2月頃にピークを迎えるため、実際に東京の雪日数がもっとも多くなるのは2月、次いで1月。これについては名古屋もほぼ同様で、1月と2月が上位2位までを占めます。
ところが…、3位を見ると東京が3月なのに対して、名古屋の3位は12月。春先にも南岸低気圧が接近することがあるので東京の3位が3月なのは納得ですが、名古屋の12月には何が起きているのでしょうか。
じつは、名古屋は太平洋沿岸部にありながら、「冬型の気圧配置」でも雪が降る場所なのです。
太平洋側なのに…「背骨」が途切れる場所
「冬型の気圧配置」というのは、小学校の理科にも登場する「西高東低」の気圧配置のこと。日本の冬に多い気圧配置で、日本海側で雪が降りやすく、太平洋側では晴れて乾燥しやすい気圧配置です。
日本海側のみで雪が降りやすい原因は、日本列島の真ん中を貫くように、背骨のような山脈が存在しているため。高いところでは標高3,000mを超えるような山々が連なって、雪雲が日本海側から太平洋側へ進むのをブロックします。「脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)」とも呼ばれます。
ところが…、この背骨のような山脈が、かなり低くなっている場所があります。滋賀県と岐阜県の間あたり、ちょうど関ヶ原の古戦場があるあたりです。
東海道新幹線をよく利用する人は、冬になるとちょうど関ヶ原のあたりで雪による徐行運転がよく行われるのを知っているかもしれませんね。
この"背骨のすき間"のような場所を通って、日本海側からまるで雪雲が漏れ出るようにやってくるのが、ちょうど名古屋を含む東海3県付近。これによって、名古屋は年間雪日数が東京の倍近くにもなるのです。
雪の回数が少なくても油断大敵!
名古屋で観測史上もっとも積雪が深くなったときの記録は、49cm。
さすが東京の2倍近い雪日数がある場所は大変だなぁと思った東京都民の皆さん、じつは東京でもっとも雪が積もったときの記録は46cmと、それほど差がないのです。
つまり、年間通しての雪の回数が大きく異なっても、極端に雪が降るときに積もる量は同じくらいになるおそれがあるということ。雪による災害のリスクが小さいわけではありません。
今シーズンはあらかじめ暖冬と予想されていた通り今のところ平年より気温が高い状態が続いていますが、たとえ暖冬でも一時的に大雪を降らせるような気象条件がそろってしまうことはよくあります。
特に太平洋側の地域では暖冬の年のほうが南岸低気圧が接近しやすいこともあるため、油断せず日ごろから気象情報を手に入れられるようにしておきましょう。
参考データ
※本記事における平年値は1991年~2020年の30年間平均を扱っています。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部