気象予報士は降水確率が何%で傘を持って行く?そもそも確率の意味は?予報士解説
2023/11/24
テレビの天気予報などでよく見かける降水確率。
なんとなく「明日は降水確率が低いなぁ」とか「降水確率が高いから傘持って行かなきゃ」などと思いながら見ている人が多いと思いますが、そもそも降水確率って何なのでしょうか。そして、確率の数字はどう受け取ればよいのでしょうか。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、知っているようで知らない降水確率について解説してもらいます。
降水確率は過去のデータの集大成!
降水確率は1mm以上の雨を対象にしていて、たとえば降水確率50%というのは、「その日と同じような気象状況の日が100回現れたとしたら、そのうちの50回で1mm以上の雨が降る」という意味です。
この「現れたとしたら」という部分は、過去のデータをもとにしています。
これまでに全国のアメダスなどで観測された気象データや天気図といった膨大な量の情報をもとに、同じような気象状況100回あたり何回雨が降ったかを統計的に求めるのです。
つまり降水確率は過去の統計情報からロジカルに導き出されたもので、いわば"過去のデータの集大成"。
降水確率と聞くと、気象のプロが天気図や雲の動きを見極めて、知識と経験をもとに「今日の状況なら降水確率〇%だ!」と判断していると想像する人もいるかもしれませんが、実際にはコンピューターが体系的に算出していたのですね。
なお、過去のデータの集大成ということは、当然ながらデータがたくさん蓄積されればされるほどちゃんとした計算が可能になるので、数十年前に比べると現在のほうが、降水確率は「頼りになる数字」になっているわけです。
「降水確率50%」は単純に"降るか降らないか半々"ではない
さきほど、降水確率50%は「仮にその日と同じような気象状況の日が100回現れたとしたらそのうちの50回で1mm以上の雨が降る」という意味だと書きましたが、「同じような気象状況」という部分に1つのカラクリがあります。
というのも、そもそも降水確率が50%と出るような日の気象状況というのは、たとえば天気図のどこかに低気圧があったり、あるいは空気が湿っていたりと、いわば"雲行きが怪しい"状態です。
つまり、「"雲行きが怪しい"日だけを100個集めてきて比べた結果、そのなかで上位半分に入るくらい雨が降りやすい」ということ。純粋にすべての日の中で雨が降るか降らないかの割合を求めたわけではないのです。
そう聞くと、ふつうの日よりはよっぽど雨が降りやすそうだ、というのが感覚的にわかりますね。
ちなみに降水確率には雨の強さや時間に関する情報は含まれていません。降水確率が100%だから大雨になるということはなく、弱い雨が短い時間降る場合も激しい雨が長時間降る場合も、1mm以上降るのであれば平等に100%です。
気象予報士は何%で傘を持って行く?
筆者を含め、気象予報士が傘を持って行くのは降水確率30~40%以上ということが多いです。
ただ正直なところ、現在では降水確率を毎日チェックしている気象予報士は少ないように感じます。というのも、降水確率よりももっと便利な情報がいくらでもあるからです。
降水確率は1980年に気象庁が提供を始めたものですが、当時は時間ごとの詳しい天気予報は存在しませんでしたし、今と比べるとものすごくざっくりした情報しか得られなかった時代でした。
そのくらい情報が少ないなかでもなんとかして先の予定を立てたい、という要望に応えたのが降水確率です。
一方、現在では翌日の何時から何時にかけて何mmの雨が降るといった予報が手に入るので、気象予報士は当然ながらそちらの情報を見る人のほうが多いわけです。
自分に合った情報を選んで使おう
筆者は外出時にできるだけ荷物を減らしたいタイプなので、傘を持つかどうかは「その日に雨が降るかどうか」ではなく「自分が外を歩く時間に雨が降るかどうか」というこまかい情報をもとに判断します。
一方で、いちいちこまかい時間帯を気にするよりは、もっとざっくり考えたいという人もいると思います。
前者の場合(筆者と同じタイプ)なら、気象庁の「降水短時間予報」(気象庁HPでは「今後の雨」という項目)を見て判断するのがいいですし、後者であれば降水確率が役に立ちます。
今は情報がいくらでも手に入る時代。自分の生活スタイルや性格に合わせて、賢く気象情報を活用していきましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部