青空と紅葉と枯れ枝

「木枯らし1号」って何?どうやって「1号」を決めるの?気象予報士が解説

2023/10/25

童謡の歌詞にもよく登場する「木枯らし」。冷えて乾いた空気の中、ぴゅうっと吹き抜ける寒い風が思い浮かびますが、そういえば毎年秋が深まるとニュースや天気予報で「木枯らし1号」なんてワードも耳にします。

「木枯らし」に「1号」があるというのは、どういうことでしょうか。そもそもどうやって「1号」を決めているのか…?

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、意外と知らない「木枯らし1号」について解説してもらいます。

サンキュ!STYLE 取材班メンバー。気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を...

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木枯らしの吹き始めは「冬の始まり」の合図

乾燥した葉を持つ秋の森の木
Rafael Prendes Cimadevilla/gettyimages

そもそも「木枯らし」というのは一般に、晩秋から冬にかけて吹く、木を吹き枯らすような強く冷たい風のことを指します。

天気に詳しくない人でも「たしかに毎年冬になるとそんな感じの風が吹いて身にこたえるなぁ」という実感があるとは思いますが、じつは日本の冬にそういう風が吹くのには明確な理由があります。

日本付近では例年、晩秋以降は「西高東低の冬型」と呼ばれる典型的な気圧配置になりやすく、その気圧配置になったときには、北よりの強くて冷たくて乾いた風が吹きやすくなるしくみなのです。

「西高東低」や「冬型」といった言葉は、小中学校の理科で習ったり、あるいはテレビの天気予報で聞いたりする人も多いのでは。

つまり、「木枯らし」と呼ばれるような冷たい風が吹き始めたということは、「冬型の気圧配置」になりやすくなった、冬らしい天気の日が増えてきた、ということ。

まさに「冬の始まり」の合図といえるのです。

「木枯らし1号」の決め方

冬空に揺れる枯れたパンパス草
icebergpicture/gettyimages

気象庁が発表する「木枯らし1号」は、「晩秋から初冬の間に初めて、冬型の気圧配置で吹く、8m/s以上の北よりの風」と定められています。

つまり、もし夏の間に偶然強い北風が吹いたとしても、「木枯らし1号」とは認定されません。あるいは、台風が原因で強い北風が吹いても、同様です。

「木枯らし1号」の発表は、冬の始まりを一般市民に知らせるためのものなので、当然といえば当然です。

そして、もし該当する風が初冬までに吹かず、真冬になってからようやく吹いた場合、もうその年は「木枯らし1号」の発表をしません。

真冬になったらもう、わざわざ気象庁からのお知らせがなくても、冬が始まっていることを一般の人が認識できるからです。

「木枯らし1号」発表は東京と近畿のみ

じつは、「木枯らし1号」は全国どこでも発表されるわけではありません。東京と近畿地方の2カ所のみです。

どうしてその2カ所なのか、そしてどうして「関東と近畿」ではなく「東京と近畿」なのか、これは気象庁に問い合わせても「昔からの経緯が積み重なってそうなっている、としかいいようがない」ということで、ちょっともやもやしますが、逆に興味深い話でもあります。

ちなみに前述の「晩秋から初冬」という期間の定義も東京と近畿で異なり、東京は「10月半ば~11月末」、近畿は「二十四節気の霜降(10月22日頃)~冬至(12月22日頃)」と微妙にずれています。

ニュースで「木枯らし1号」と聞いたら何する?

モミジの赤い葉

「木枯らし1号」の発表が東京と近畿限定だったとしても、ほかの地域がまったく関係ない、ということはありません。
というのも、東京や近畿で木枯らしが吹くようなときは、日本列島全体が「冬型の気圧配置」になっているからです。

では、ニュースや天気予報で「『木枯らし1号』が発表されました」と聞いたとき、何をすべきでしょうか。

まずは、急な冷え込みに注意。秋から冬にかけての時期は、毎日少しずつ寒くなっていくわけではなく、急にがくんと気温が下がるタイミングがあります。そのタイミングの1つが、まさに「木枯らし1号」が発表されるとき。1日で5度以上も気温が急降下することも珍しくないため、注意が必要です。

また、「木枯らし1号」が吹くような気圧配置では、空気が乾燥しやすくなります。肌や喉が弱い人はもちろん、家事などで水を頻繁に使う人は特に気をつけたいタイミング。そろそろ冬と同じレベルの乾燥対策をしていきましょう。


■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

 
 

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