秋の空に浮かぶ筋雲

秋の空はなぜ高い?意外と知らない「天高く馬肥ゆる秋」のワケを気象予報士が解説!

2023/09/24

「天高く馬肥ゆる秋」というフレーズを聞いたことがある人は多いと思います。

さわやかな秋晴れの青空のもと、動物たちが健やかに育つ情景が浮かんできますが、そういえば秋の空はなぜ「高い」のでしょうか。

そもそも空は1年をとおしてそこにあるのに、空が「高い」ってどういうこと…?

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、生活にも役立つ秋の空の豆知識を教えてもらいます!

サンキュ!STYLE 取材班メンバー。気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を...

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空が「高い」理由その1:雲の位置が変わる

夏の入道雲と秋のうろこ雲

夏の間によく見かける雲といえば、もくもくと元気に発達した背の高い雲。よく「入道雲」や「積乱雲」と呼ばれる雲で、地上から上空までどーんと空を覆うように存在するので、空が狭く見えます。

一方で、秋が深まるにつれて増えてくるのは、ぽこぽことした小さな雲や、ハケでさっと描いたようなすじ状の雲です。こういった雲は、空の比較的高いところにのみできるので、空が広く見えます。

つまり、秋の空が「高い」と感じるのは、雲のできる位置が変わることが一因なのです。

空が「高い」理由その2:秋は夏のあとにやってくる

草木が生い茂る地面

空が「高く」感じるもうひとつの理由は、地面の状態です。これは春と比較するとよくわかります。

春は冬のあとにやってくるので、地面では草木が枯れて土壌は乾燥した状態。

一方で秋は夏のあとにやってくるので、地面には植物が生い茂り、根がしっかりと張っているうえに、秋雨の影響もあって土壌は湿っていることが多いです。

このため、春は地面から乾燥した土が舞い上がって砂ぼこりが発生しやすいのに対して、秋はあまり砂ぼこりが発生しません。

この差が、「春霞」という言葉に代表される春の白っぽい青空と、「空が高い」と感じさせる透明感のある秋の青空との違いを生み出すのです。

空が「高い」のは乾燥と冷え込みのサイン!

秋晴れの青空と秋の山並み

天高く感じる秋の空はさわやかで気持ちがいいですが、気をつけなければならない点もあります。乾燥と、冷え込みです。

この記事の前半で、秋は雲が空の高いところにできやすく、地上に近いところにはあまりできないことを説明しました。これは、雲の材料となる水蒸気が、地上に近いところでは少なくなっていることを示しています。
つまり、私たちがふだん生活する地上付近で空気中の水蒸気が減少しつつある、空気が乾燥に向かっているということです。

さらには、空気中の水蒸気が少ないと、夜間の冷え込みが強まります。
これは少し専門的な話になりますが、昼間に太陽の光で暖められた地面が夜間に熱を放出する際、空気中に「熱の放出を邪魔するもの」が少ないほど冷え込むというしくみで、水蒸気も「邪魔するもの」のひとつなのです。

そのため、「最近は空が高くて気持ちがいいなぁ」と感じたら、そろそろ乾燥と冷え込みに注意!というサインだと思ってください。

空のサインをとらえて季節の変化を乗り切ろう

青空とうろこ雲

夏から秋にかけてはようやく暑さもやわらぎ、さわやかな空気に包まれる快適な変化に感じられますが、実際には気温や湿度の変化が体に負担をかけています。

とくに、急に気温が下がり始めるタイミングで湿度も下がってくるので、喉を傷めてしまったり風邪をひいてしまったりすることも。

ふだんいそがしくてなかなか天気予報を毎日チェックできない場合は、日々ちょっとずつ空を見上げてみましょう。
空が高く感じる「乾燥」と「冷え込み」のサインをとらえて、季節のかわり目を健康に乗り切りたいですね。


■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

 
 

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