もう間違えない!「ら抜き言葉」の見分け方とややこしい難敵の攻略法
2023/07/11
国語科教員免許を持つサンキュ!STYLEライターのdanngoです。
「文章を書く時に『ら抜き言葉』を使ってはいけない」ということは知っていても、「どれが『ら抜き言葉』だったかな?」と迷うことはあるはず。
話し言葉ではあまり意識しないうえに見分けづらく、間違えやすいパターンもあるからです。
文法的に詳しく解説します。
1つ前を確認
ら抜き言葉は、上一段、下一段、カ変の活用動詞に助動詞「られる」がついたものから「ら」を抜いた形。
「見られる」が「見れる」に、「受けられる」が「受けれる」に、「来られる」が「来れる」になるなどの例があります。
一方、五段、サ変の活用動詞には「れる」がつきます。
五段活用動詞+「れる」なら「行かれる」「打たれる」「読まれる」など、サ変の活用動詞+「れる」なら「される」や「拘束される」といった形になります。
五段、サ変の活用の場合は「れる」がつき最初から「ら」がないので、なんでもかんでも「ら」を入れれば解決するわけではありません。
でも例をよく見てみてください。何か共通項がありませんか?
五段とサ変に「れる」がついている(ら抜きではない)パターンでは、「れる」の1文字前がア段の音になっています。
ら抜き言葉の例として提示したものはどうでしょうか。イ段やエ段、オ段になっていてア段ではありませんね。
「れる」「られる」は未然形接続。
五段やサ変の活用動詞の未然形活用語尾にはア段の音が存在します(五段にはオ段、サ変には「し」「せ」の音の未然形活用語尾もありますが「れる」に接続するのはア段)。
上一段の未然形活用語尾はイ段、下一段はエ段、カ変はオ段なので、らを抜いて「~れる」の形になっていても区別はつくのです。
つまり「れる」の1字前がア段の場合ら抜きではなく、ア段以外なら「ら抜き言葉」と言えるわけです。
ややこしいものも存在
見分け方がわかってひと安心といきたいところですが、実は先に紹介した法則があてはまらないものが存在します。
・鈴木さんは50mを8秒台で走られる。
・鈴木さんは50mを8秒台で走れる。
上の例文では「走られる」と書くことができるのに「走れる」という形も存在します。
ならば「走れる」はら抜き言葉なのでしょうか。
「はしれる」の「れる」の1字前は「し」でイ段。ますます疑念が強まりましたね。
ところが「走れる」はら抜き言葉ではありません。可能動詞というものです。
意味を可能のみに限定できる「ら抜き言葉」は便利なのですが、五段、サ変の活用動詞は最初から「れる」がつくため「ら」を抜くことができません。
そこで五段活用の終止形から「u」の音をとりかわりに「eru」の音を加えることで可能の意味をあらわすことにしました。
「行く」なら「行ける」、「読む」なら「読める」となります。
たいていの可能動詞は感覚でわかるもの。
ただし「走る」「切る」「すべる」といった、ラ行の活用語尾を持つ動詞だけがやっかい。
可能動詞にすると「走れる」「切れる」「すべれる」となり、あたかもら抜き言葉になってしまったように見えます。
ではここから「れる」をとってみましょう。「走」「切」「すべ」となりますね。
「れる」も「られる」も未然形接続ですから、「れる」「られる」をとったものに「ない」をつけることができるはず。
「走ない」「切ない」「すべない」……おかしいですね。本来なら「走らない」「切らない」「すべらない」となるべきところです。
可能動詞かどうか判断に迷った場合は、「れる」をとって「ない」をつけることができるかどうか調べればいいわけですね。
ちなみに、サ変は可能動詞にはできませんが可能の意味の「される」とほぼ同じ意味の「できる」という動詞があるので問題ありません。
まとめると以下のようになります。
1.「れる」の1字前の音がア段以外である場合は「ら抜き言葉」の可能性が高い。
2.判断に迷ったら「れる」を外し「ない」をつけられるか確認。つけかえても意味が通じたら「ら抜き言葉」、意味が通じないならラ行の可能動詞。
文法用語が多かったのでわかりづらいかと思います。
細かい理屈は忘れてもかまいません。見分け方の基本だけは、何かの折に思い出してもらえると幸いです。
◆この記事を書いたのは・・・danngo
中高国語科教員免許を持つ、活字中毒気味のアラフォー。高学歴・高血糖・高齢出産の三高ライター。「家事は化学、子育ては文学」を信条としている。
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