【予報士解説】梅雨明け後の暑さはなぜ危険?「高気圧」の効果は晴れるだけじゃなかった!
2023/08/13
梅雨明けとともに夏本番の強い日ざしが照りつけ、セミのけたたましい鳴き声とともにうだるような暑さが続く…。
日本では毎年おなじみの光景ですが、そもそも思い返してみると、梅雨の間から暑い日は普通にありましたよね。
でも、梅雨明け後の暑さは、危険性が一段階上がるワケがあるのです。
今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんが、梅雨明け後の暑さに警戒が必要な理由を解説します。
- 日本が亜熱帯の空気とつながってしまう!太平洋高気圧の底力
- 梅雨の間も暑い日はあったけれど…
- 「押さえつける」ことの威力…そういえば高気圧ってそういう意味だった
- 酷暑には必然性があった!意識的に身を守ろう
日本が亜熱帯の空気とつながってしまう!太平洋高気圧の底力
テレビの天気予報や新聞で見かける天気図では、夏になるとよく、日本の南の海に高気圧が描かれます。
夏の主役「太平洋高気圧」です。
本州よりも南に離れた、小笠原諸島あたりの海に高気圧があるように見えるので、かつて教科書で「小笠原高気圧」と書かれることもありました。
しかしこの高気圧、より専門的な天気図で、もっと広範囲が入るような画角で見ると、実際にはかなり大きいことがわかります。
広大な太平洋にどーんと腰を据えて、南北方向には温帯から亜熱帯までぶち抜き、東の端はなんとおおむねハワイくらいまで到達しているのです。
まさに「"太平洋"高気圧」!
つまり、夏に天気予報で「今日は高気圧に覆われて晴れるでしょう」と言われた日には、気温も湿度も高い亜熱帯の空気が日本付近にも送り込まれてくることになるのです。
梅雨の間も暑い日はあったけれど…
じつは梅雨期間中は、日本の南にある亜熱帯の空気が北上しようとするのに対し、日本付近にまだ春や初夏の比較的過ごしやすい空気が残っていて邪魔をしていたので、完全に覆われることはありませんでした。
性質の違う空気同士がちょうどぶつかり合っている境界線が「梅雨前線」で、空気と空気がぶつかり合うことで雨雲が発生し雨の季節を長引かせる…これが「梅雨」という現象だったわけです。
しかし梅雨明けしたということは、この"ぶつかり合い"に亜熱帯の空気が"勝利"したということ。
邪魔するものがいなくなった梅雨明け後は、亜熱帯の蒸し暑い空気が日本付近にどんどん送り込まれてしまうのです。
「押さえつける」ことの威力…そういえば高気圧ってそういう意味だった
低気圧や高気圧という呼び名は気象の専門家でなくとも聞きなじみのある言葉で、日ごろその意味を深く考えることはないかもしれません。
しかしちょっと考えてみると、「高気圧」ということは「気圧が高い」、つまり「空気の圧が強い」ということになります。
私たち人間は地球に生まれたその日から大気がある空間で生きていますから、もちろん無意識に毎日「空気の圧」のもとで生活しているわけですが、高気圧に覆われている日はいつもよりさらに「空気の圧」がかかっている状態になります。
この「空気の圧」、すなわち上から押さえつける力が、じつは暑さを生み出しているのです。
これはちょっと専門的な話にはなるのですが、空気というのはぎゅーっと圧縮されると温度が上がる性質を持っています。
つまり、高気圧によって空気が上から押さえつけられている状態は、まさに「加熱」されている状態。
高気圧に覆われた日はもちろん晴れることが多いので、単に晴れるから暑いのだと思われがちですが、じつは「押さえつける力」によってその暑さはエスカレートしていたのです。
酷暑には必然性があった!意識的に身を守ろう
総務省消防庁では毎年、熱中症とみられる症状で救急搬送された人の数を統計にして発表していますが、じつはほとんどの年で、梅雨明け後に患者が急増しています。
そのくらい、梅雨明け後の暑さは危険性が高いということが言えます。
この記事で解説してきた通り、梅雨明け後の主役を張る太平洋高気圧はその性質上、必然的に酷暑を生み出すもの。
「そろそろ熱中症対策も散々やって慣れてきた」という人も、いま一度水分補給のタイミングや部屋の温度管理を確認して、意識的に暑さから身を守るようにしましょう。
■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。
編集/サンキュ!編集部
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