わが子の障害が少数派なので、気がつけば地域にママ友だちが、ひとりもいないんです

2023/11/12

再びお会いしたみのりさん。障害のある二女の子育てについて、情報が見つからないのは、地域に友だちがいないせいもあるのだと、心細い気持ちを話してくれました。簡単に解決はしない課題について、LITALICOライフのファイナンシャル・プランナー、山田遼平さんと一緒に考えます。

【相談者】
みのりさん<仮名>38歳 東京都

夫(42歳)、長女(7歳)、二女(6歳)の4人家族。フルタイムで働いています。二女には脳性麻痺があり、歩くのもおしゃべりも難しいけれど、家族で幸せに暮らす道を模索中。

【回答者】
障害のある子の教育や家庭に詳しいファイナンシャル・プランナー
山田遼平さん

金融機関、不動産・相続対策コンサルティング業界を経て、「LITALICOライフ」の講師に。障害福祉分野に精通し、生涯設計などの相談に携わっています。

放課後の預け先を調べるために、1件、1件、施設に電話をかけました

編集部:前回のお話のあと、何か思うことはありましたでしょうか。

みのり:成人したあとの生活費について、具体的な数字の例を見せていただいたことは、とても参考になりました。

グループホームの検索サイトを知られたのも、この先、こういうサイトが増えるかもという、希望が持てたのはよかったです。

編集部:福祉の情報が見つけにくいとのことでしたが、その苦労について、あらためてうかがってもよろしいですか?

みのり:はい。最近だと、小学校入学にあたって放課後等デイサービスを探したときの苦労が堪えました。

役所では相談対応をしてもらえないし、口コミを調べたり、条件で検索できたりするサイトもなくて、区のホームページに載っていた施設のすべてに電話をかけました。

編集部:一件、一件ですか?

みのり:そうなんです。情報が最新じゃないからすでに施設が閉まっていたり、電話がつながってもうちの子の身体状況では対象外だったり、お忙しいと思うのですが、ぞんざいに扱われたこともあって……。

どこかに頼りたくて、特定相談支援事業所の方と面談をしても、出てきたのはまた古い情報で心が折れました。

編集部:それはエネルギーを使いますね。

みのり:私は仕事を続けていることを言い訳に、親の会にも入っていないですし、リハビリでお友だちができるようなこともなくて、気がつけば地域の情報を共有できる人が誰もいない。どうしたらいいものかと困りはじめたところです。

編集部:山田さん、地域のお友だちは、親の会や病院以外だと、どんなふうに見つけたらいいのでしょう。

山田:親御さん向けのセミナーを開催すると、一緒にワークをした方々などが、終了後に連絡先を交換している姿が見られます。

オンラインだとなかなかそういう流れにはならないのですが。つながりができるのが対面のよさですね。私たちとしても、もう少し地域別に細分化した会を増やしたいと思っています。

みのり:発達障害向けのイベントやセミナーはたくさんあるんです。ただ、うちのように肢体不自由のある子の場合、絶対数が少ないためか、そういった機会も設けてもらえなくて。

山田:そうですよね。リタリコライフがはじまった当初、セミナーは2種類だけでした。

みなさんのお声に基づいて広げてはきたのですが、お子さんの症状、住んでいる地域のほか、家庭環境によってもフィットする内容が異なります。どこまで細かなセグメントができるかを、課題にしたいと思います。

同じかどうかより、違いを理解したうえでなら、つきあえるのかも?

みのり:ありがとうございます。そういえば、赤ちゃんの頃は同じ診断名ですぐにつながりができたんです。ただ、数年もすると成長の違いが出てくるんですよね。

同じ脳性麻痺でも、歩いてしゃべっている子もいれば、寝たきりの子もいます。そういった他の子との差を気にする方もいて、だんだんと疎遠になったケースもありました。

編集部:それに加えて、地域、家庭環境、仕事の有無なども考慮していくと、同じ境遇の友だちとの出会いって、とても難しいですね。

みのり:私も話しているうちに、そう思いました。うちの子の場合はこう、あの子の家の場合はこう。違いを認識したうえでのつきあいならば、できるのかもしれません。

それってもしかしたら、雑誌『サンキュ!』で読んだ片づけ術と一緒かも。

編集部:どういうことでしょう。

みのり:片づけは、収納ボックスをすべて白にするとか、テクニックにとらわれてしまうと失敗すると書いてありました。自分の性格にあった方法じゃないと、続けられないし、効果が出ない。まずは自分を把握するのが大事。

それと一緒なのかなと思ったんです。解決法を選ぶ際にわが子を理解すること、そしてわが家の価値観を可視化することの大切さを、あらためて感じました。

前例がないからこそ、自分がそれを作りたい。ささやかな夢がモチベーションです

山田:みのりさんは、行動できる方なので、そこが大きな強みだと思います。

心が折れてしまうこと、いっぱいあると思うんですけれど、1人でも2人でも、どなたかわかってくれる存在が増えていくといいなと思っています。私もお話が聞けて、たいへん参考になりました。

みのり:そういっていただけるとうれしいです。前回、お話したように、私の会社は理解があるので、仕事を休んでリハビリにも通っているんです。

でも「訓練の成果が出てないね」「これだから共働きはね」などと言われることも多くて。働くことに、いつも葛藤があります。

編集部:そんなことを言われてしまうんですね。つらいですね。

みのり:はい。それでも、障害のある子を育てている他のお友だちは、仕事を続けられずに辞めた人がほとんどだから、こうして自分が続けていくことで、いつか誰かのサポートができる立場になりたいという、ささやかな夢があります。

会社の中でも、子育てだけでなく介護や自身の病気などで、フルで働けなくなる人が、今後、出てくるかもしれません。そんなときに、両立できるよっていうバトンをつないでいきたいですね。

親の介護においては「介護離職はしない方がいい」という見解も広がっていますが、障がい児の子育てと仕事を両立していくことに、まだまだ心理的なハードルも高いのだと知りました。それでも、後に続く人のためにもと頑張るみのりさん。身近な場所にお互いの違いを理解したうえでおつきあいのできるお友だちが見つかりますように。

イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/石川理恵 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

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