転職したいけれど、小さな子どもが2人。何の取り柄もない。……そんな私に仕事はありますか?

2023/12/08

相談者のまさみさんは0歳と3歳の子どものお母さん。「子どもが育つまで転職を待ったら40歳を過ぎて仕事がなくなるかも」と焦っています。キャリアコンサルタントの田中美和さんは「今後、自分がどう働きたいかを知ることが必要」とアドバイス。そのために今やるべきこととは?

「自分には強みがない」とみんな言うけれど、強みがない人は基本的にいません

田中:転職に対して迷いがあるなら、自分はどうしたいかを明確にするためにも「自分を知る」ことが大事。転職する際の強みって何かな、とかですね。

まさみ:でも人に誇れるような強みってないので……。あったとしても「これが私の強みです」とアピールするのって、なんか気が引けます。

田中:皆さん「強みがない」とおっしゃるんですが、そんなことは全くなくて。これまで多くのご相談に乗りましたが、強みがない人は基本的にいませんよ。

編集部:キャリアコンサルタントの田中さんから見て、まさみさんの強みって何ですか?

田中:車関係の会社では少人数で協力体制を築き、事務や接客など幅広い業務をこなして14年のキャリアを積んだこと、年配の方への寄り添い力の高さがあって、お客さまが野菜を届けてくれるほど仲良くなれること、好奇心旺盛でFPや宅建、福祉住環境コーディネーターなど新しい知識を学ぶ力があることなどは立派な強み。面接でのアピールポイントです。

まさみ:ありがとうございます。そういうところも強みと言っていいんですね。

「得意なことや好きなこと」は普通にできちゃう。だから気づかないけれど、それこそがあなたの「強み」です

田中:得意なことや好きなことって、本人は普通にできちゃうから自覚しにくいんですよね。

編集部:そっか。苦労して身につけたものって強みと思えるけれど、好きだから何となくがんばれちゃった、みたいなことこそ強みなんですね。まずは好きなこと、苦もなくできることを見直してみるといいのかも。

田中:そうそう。パートでブランクなく働き続けていることもアピールできる強み、職歴ですよ。自信を持ってくださいね。

まさみ:わかりました。

田中:それと「働くうえでのスキル」って、経理や営業など技術的なスキルだけではなく、「ポータブルスキル」も重要です。

編集部:「ポータブルスキル」?

田中:段取り力やコミュニケーション力など業種や職種が変わっても役立つスキルのことで、雇用の場面でも最近注目されているんです。

まさみ:そうなんですね!

田中:まさみさんの場合、少人数で協力し合って働く職場でお客さまにご満足いただく経験を積みましたね。そういう状況での対応力や周囲との協力体制の構築力、お客さまへの寄り添い力なども、立派なポータブルスキルです。

編集部:まさみさん、強みがいっぱいありますね!

田中:こんなふうに仕事で積み重ねてきたことを整理することも「自分を知る」ことにつながります。厚生労働省のサイトには、自分の強みを診断するツールが無料提供されていて便利ですよ。

【「自分の強み」診断ツール】

「ライフラインチャート」を書いてみると、自分らしく働くために必要なことが見えてきます

田中:「自分を知る」ために「ライフラインチャート」を書いてみるのもおすすめ。紙と鉛筆があれば10分程度で簡単にできます。横軸に年齢、縦軸に充実度や満足度をとって、自分の人生の充実度・満足度を表す曲線をフリーハンドで描きます。

田中:そして以下の質問について考えてみてください。

【1】書いてみて気づいたこと、感じたことがあれば、いくつでもいいので書き出してみてください

【2】あなたにとって充実度・満足度が上がるときはどんなときですか?

【3】あなたにとって充実度・満足度が下がるときはどんなときですか?

【4】1~3をふまえて、あなたが「自分らしく働く」ために必要な条件は何だと思いますか?

田中:皆さん忙しくて人生を振り返ることってあまりないので、やってみると「発見がありました!」という方がたくさんいます。

まさみ:へえ~、おもしろそう!

田中:私自身、新しいことを始めるのが好き、「何をやるか」もだけど「誰とやるか」も大事といったことに気づきました。こんなふうに自分の強みや働くうえで大切にしたいことを見える化・言語化する時間を持つことは大事かなと思います。

これからは「新しいスキルを学んで仕事に生かすこと」がアピールポイントになります

編集部:まさみさんはいろんな資格をお持ちですが、資格は強みになりますか?

田中:そうですね。ただ転職に活かすためには、資格を取ったあとが肝心です。「実務で資格を活かした経験」を具体的にアピールできると武器になります。

編集部:まさみさんの場合は?

田中:復帰時に福祉住環境コーディネーターの資格を取ったことをアピールして、それを活かせるような業務を希望するのも手です。資格を活かして工務店やハウスメーカーへの転職もアリじゃないでしょうか。

編集部:なるほど。

田中:それとこれからの時代、新しいスキルを学んで仕事に生かすことを意識すると、アピールポイントにつなげやすいと思います。私達の会社が行っているプログラムでも、IT未経験者や40~50代前半の女性、仕事のブランクがある専業主婦などがデジタルスキルを新たに勉強して、転職や再就職をしています。だからまさみさんのように、年齢にこだわらず新しいスキルを学ぶ姿勢を大事するとチャンスが広がると思いますね。

編集部:40~50代の主婦が正社員になるケースってありますか?

田中:今の職場で正社員登用制度を利用したり、派遣会社に登録して一定の派遣期間を経て双方合意すれば正社員になれる「紹介予定派遣」の仕組みを使うケースが一般的ですね。あとは知り合いの会社や人の紹介で働き始める場合も。人脈ってすごく大事なので、身近な人に伝えてみるのもいいと思います。

編集部:そうなんですね。

田中:願いが「叶う」という字は口へんに十と書くくらい、希望を口にすることはすごく大事だと思っています。

まさみ:私は口に出せるようなプランがなくて、「働くことが好きで、いずれはバリバリ働きたい」しか言えないんですが……。

田中:それでOKです。何かの拍子にご縁に恵まれることもありますから。キャリア形成の有名な理論に「キャリアの8割は偶発的なことで決まる」というものがあります。夫の転勤で転職して今の仕事に出会ったとか、人に頼まれて今の仕事を始めたとか、たまたまのことが多いんですよ。

これからの時代、「何が正解か」より「自分がどうしたいか」が大事。それを言語化してみよう

編集部:今、子育てなどで動けない人は、自分の強みなどを棚卸しをすることと、3~5年後どうなりたいかのイメージを持つことが重要ですか?

田中:はい。「カレーが食べたいな」と思っているとカレー屋が目につくじゃないですか。そういう感じで「こうなりたい」というイメージを持つと、情報や人のネットワークがアンテナに引っかかりやすくなって効果的だと思います。

まさみ:私が今できることって、自分についての棚卸しだけがんばればいいのかな。今判断をミスると、もう正社員にはなれないかもって思っちゃいます。

田中:焦りますよね。わかります。でもチャンスはきっとありますよ。今の仕事を続けても、仕事を探して転職するのもOK。これからの時代、何が正解というのはなくて「自分がどうしたいか」が大事です。だけどそれが言語化されていないと、動き方がわからないので。

まさみ:今の職場で制服を着て70歳まで接客するのは無理だと思います。そう考えると今の職場に骨をうずめるのは違うのかな……。

田中:ご自身の強みやキャリアを振り返るワークに取り組みながら、今後どうしたらいいか、ぜひ考えてみてください。

先行き不透明で働き方が変わりつつある今、40~50代や主婦などの一般女性も、ささやかでも努力を積み重ねて「自分なりの働き方」を見つけ、選んだ道を正解にしていく時代が来ているのかもしれません。田中さんのアドバイスを受けて、まさみさんの焦りや迷いは晴れたでしょうか?次回、その結果をお届けします。

イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

 
 

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