0歳と3歳の子がいます。子育てが落ち着くのを待つと40歳過ぎ。正社員になるチャンスがない…と焦ります。

2023/11/17

相談者のまさみさんは育児休暇中。4カ月後にパートで復帰予定ですが、本当は正社員を目指してすぐにでも転職活動をしたいそう。だけど乳幼児が2人いて身動きがとれず、今何をするのが正解なのか、悩んでいます。そんなまさみさんにキャリアコンサルタントの田中美和さんがアドバイスします。

【相談者】
まさみさん<仮名>
38歳

夫(37歳)、長女(3歳)、長男(0歳)、義母の5人暮らし。石川県在住。育休を取る前は週4日10~15時のパートをしていました。働き方について気軽に話せる人がおらず、ひそかに悩んでいます

【回答者】
キャリアコンサルタント
田中美和さん

雑誌編集者、フリーランスのライター、キャリアカウンセラーを経て2013年に(株)Warisを設立。再就職を希望する女性の就労支援などを行っています。プライベートでは5歳の女の子の母。著書「自分らしく働くための39のヒントLive My Life 」(KADOKAWA)を近日刊行予定。

今は子どもが小さいからパートのほうが都合がいいとわかっているけど、ガッツリ働きたいのが本音です

まさみ:あと4カ月で育休が明けて職場復帰します。前と同じくパートで働くつもりですが、いろいろと迷いがあって。

田中:モヤモヤポイントはどの辺ですか?

まさみ:子どもが小さいのでガッツリ働きたくても働けないことです。夫は夜勤がある仕事で忙しく、ほぼワンオペ。同居中の義母も働いているので、子どもが体調を崩せば私が仕事を休まなきゃならないし、実家も遠くて。だからパートのほうが都合がいいのかなと。

田中:お子さんが0歳、3歳だと急な発熱もよくありますよね。

まさみ:はい。自分は働くことが好きだし子育てより向いている気がして、ゆくゆくは正社員でバリバリ働けたらと思っています。

田中:お仕事の内容は?

まさみ:職場はショッピングモールにある不動産窓口で、育休前は家を新築したいお客さまにハウスメーカーを紹介する仕事を2年間していました。

田中:その前はどんなお仕事を?

まさみ:短大卒業後に車関係の会社に就職して、14年ほど事務をしていました。

田中:14年!長く勤めましたね。なぜその会社を選んだのですか?

まさみ:私、車が好きで。会社は家族経営で社員は7~8人。お客さんはほぼ地元の人で、車の修理や板金、保険など車関係全般を扱っていました。

田中:まさみさんの仕事内容は?

まさみ:接客や伝票起こし、車検や車保険の書類の準備、集金など幅広い事務作業を1人でこなしてやりがいがありました。でも嫁ぎ先が遠かったので、結婚・出産を機に退職して、長女が1歳のころに再就職先を探したんです。

田中:どんなふうに?

まさみ:車の会社時代にFP2級を取得したんですが、そのとき不動産のことも勉強して興味がわいて、宅建の資格も取りました。

田中:すごい~!

まさみ:そこから不動産の仕事をしたいと思って。正社員希望だったけど、子どもが小さかったので不動産窓口のパートを見つけて今に至ります。

育休中に勉強して、福祉住環境コーディネーターの資格を取りました

田中:不動産窓口で働いてみてどうでした?

まさみ:20代後半から30代前半のお客さまが多くて、内心戸惑うこともありましたね。「若い子と何しゃべればいい?」とか(笑)。その点、車の会社では年配の方を相手にすることが多くて、畑の話とか聞くのも楽しかったな。

田中:では、仕事のおもしろさややりがいを感じる瞬間は?

まさみ:年配の方のリフォーム案件で、お客さまが抱えている問題を聞くとすごく共感できます。それで仕事に役立てばと思って、育休中に「福祉住環境コーディネーター」という資格の勉強をして、先月合格しました。

田中:わあすごい!おめでとうございます。ということは、新しい家をゼロから作ることより、今ある家の課題を解決する方がやりがいがある?

まさみ:それもあるし、年配の方のほうが話しやすいというのもあるかな。顔なじみのお客さまに「顔を見に来たよ」と言われるとうれしくて。畑で採れた野菜を届けてくれる方もいますし、お客さまとの何げない会話が何より楽しいです。

田中:営業成績とかではないんですね。まさみさんはそういう人間関係を築くのが得意でもあるし、喜びを感じるんですね。では、3~5年後の働く自分を想像したとき、どうありたいですか?

まさみ:車の会社時代と同じくらいのモチベーションで働ける環境で、仕事がメインの生活になっているのが理想です。夫の扶養内で働くのは経済的にも厳しいので。

田中:まさみさんの働き方について、夫婦で話したりします?

まさみ:夫は「働いてくれ」の一点張り。「稼いでくれるなら俺は専業主夫をする」なんてふざけたことを言ってます(笑)。

田中:妻がフルタイムで働くのは大歓迎なのね。「将来こういう仕事がしたい」というイメージはありますか?

まさみ:自分には何が合っているとか、わからなくて。だから過去の仕事経験からすると事務なのかな、という感じです。

田中:まさみさんの「仕事選びの軸」って何だと思います?

まさみ:興味を持てること、かな。興味がなかったら車の会社も続かなかっただろうし、不動産の仕事にも行きついていなかったと思います。

子どもが育つまで待ったら40歳を過ぎてしまう。「自分にはもう仕事がなくなるのでは」という危機感が常にあります

田中:今の段階で働き方を変えるつもりは全くないですか?

まさみ:う~ん。変えてもいいかなとも思いますが、今の会社って休みやすくて、子どもが体調を崩したときに助かるんです。それにパートだと休んでも罪悪感があまりないというか。

田中:それってメンタル的に大事ですよね。

まさみ:そうなんです~。でも正社員だとそうはいかない気が…。だから今はパートでいいのかな、でも今38歳で年齢を考えると、そろそろ正社員でどこかに入っておかないとまずいのかなって。その兼ね合いですよね。

田中:年齢と子育ての状況の板挟みなんですね。

まさみ:「自分にはもう仕事がなくなるのでは」という危機感が常にあります。年齢も年齢だし、子どもも小さいし、求人情報を見ていても35歳以下とか書いてあるし、AIに仕事を奪われるっていうニュースも聞くし…。

子育てがラクになるときは実はずっとこない。だから「動こう」と思ったときが動くべきタイミング

田中:まさみさんのように、子どもの年齢と兼ね合いで転職を迷うお母さんはたくさんいます。相談者さんとよく「子育てが落ち着くタイミングっていつですか?」という話になりますが、実は落ち着くタイミングってなかなかないんですよね。

まさみ:そうなんですか!

田中:というのは、まず未就学児は手がかかるし、小学生になると「小1の壁」があったり、学校にいる時間は保育園の預かり時間より短くなったりして「私がもっと家にいたほうがいい?」と迷う。高学年以降は思春期に入って心のケアに時間を取られたりします。

まさみ:確かに。

田中:だから、ご自身が「今、仕事を変えよう!」と思ったときが転職のタイミングなのかなと。ただ子どもが0~3歳の間は例外というか、発熱や園からの急な呼び出しや、きょうだいの病気の連鎖などがあるので、その時期に転職して新しい環境で理解を得ながら仕事と育児を両立するのは、なかなかハードルが高いのも事実で。

まさみ:私ももう少し子どもが大きくなったときが正社員を目指すタイミングかなと思うんですが、求人には「40歳の壁」がある気がして焦るんですよね。

田中:今、いろんな働き方をする女性が増えてきて、40~50代でも非正規から正規雇用になる方がいらっしゃいます。だからひと昔前の「35歳転職限界説」はなくなりつつあると感じていて。その背景には圧倒的な人手不足がありますね。地方の企業は特に人手不足に悩まされていると思うので、それほど心配しなくていいのかなと。

まさみ:私の地域は遅れていて、「雇うなら若いほうがいい」みたいな風潮がまだまだある気がします。

田中:そうなのね。すると30代のうちに次のステージを考える方向でしょうか。

まさみ:そうですね。

田中:今の職場で正規雇用の可能性はありますか?

まさみ:はい。でも営業時間が夜9時までなので、そこで正社員になるのはきついなって。

田中:すると、いったん元の職場に戻って子どもの様子を見ながら働く環境に慣れる。同時に転職を視野に入れて情報収集するなど準備を進める。そして、復帰後1年ほどして落ち着いてきて「行けるかも」と思ったときに転職活動を始めるといいのかなと思いますね。


年齢の壁や子育てとの両立の壁が目の前にどーんとそびえ、「自分にはもう仕事がなくなるのでは」と心配するまさみさんに共感を覚えた方も多いのではないでしょうか。次回は将来が見えないまさみさんに田中さんが提案する「今やるべきこと」をお届けします!

イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

 
 

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