「疲れてるから」はウソ!あなたの夫が「してくれない」本当の理由
2018/10/29
夫婦間における悩みのひとつ「セックスレス」。妻が拒否する、夫が断る……と夫婦によって状況はわかれます。今回は「夫がしてくれない」ケースについて、その理由を「恋人・夫婦仲相談所」の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。
時代とともに変わるセックスレスの原因
世界でもSEX回数が最低レベルといわれているわが国。ニュースや新聞で「日本の夫婦のセックスレスは4割超え」の文言を目にしたことがある人も多いと思います。セックスレスの理由はさまざまですが、仕事で相談を受けていますと、1つの理由だけでセックスレスに陥るというケースは、少ないことがわかります。
時代を取り巻く社会状況や、そのときの流行など……人々のライフスタイルによってセックスレスの理由もどんどん変わっていくのです。
例えば、共働き夫婦が増えたことで、夫だけでなく妻も時間に縛られるようになったのもセックスレス増加の理由の1つ。また、携帯メールでの内緒話や、ネットの匿名掲示板など、セックスレスについて語る場が増えたことで、多くの人がセックスレスを自覚・意識するようになった、という背景もあります。
今回の記事では、セックスレスが広まった背景を説明したうえで、あなたの夫が「してくれない」理由を明らかにします。
セックスしよ!ドラマ『東京ラブストーリー』の衝撃
一昔前、セックスは男性主体で女性は受け身というイメージでした。故に、1991年に放送され、社会現象にまでなったドラマ『東京ラブストーリー』で、女性から男性へのセリフ「セックスしよ」は伝説となりました。
天真らんまんな女性主人公が投げかけた「セックスしよ」の言葉はあの時代の女性たちにグサリと刺さり、「セックスしたいことを私たちから言ってもいいものなんだ」という気づきを与えました。しかし、それでも直接相手に言うことはできず悶々とする女性のほうが多かったかと感じます。
時を経て、インターネットの普及で「私はしたいのに彼氏がしてくれない」とストレートな悩みを女性が発言できる世の中になり、セックスレス問題が浮き彫りになってきたように感じます。
いまだ根強い「女性の性欲」に対する無理解
セックスレスについての権威ともいえる、精神科医の阿部輝夫先生が『セックスレスの精神医学』という書籍を出したのが2004年のこと。大規模ママさんサークルを運営するなかで主婦たちの生の声を聞いていた私が「夫婦仲のよさはセックスの充実度でわからないものか」と模索して、セックスレスに関するメールマガジンを開始したのもそのころ。つまり10年以上前から、セックスレスの世の中に悩みは飛び交っていたわけです。
にもかかわらず、女性の性欲に対する社会の無理解はいまだ根強いといわざるを得ません。例えば、泌尿器科のEDに関する学会で「抱かれたいと思う妻がたくさんいる」と調査結果をプレゼンした際のこと。発表に対して、年配の先生がたから「子どもを産んだ女性にも性欲があるのか?」と質問が相次いだのです。この反応に、私は絶句してしまいました。
筆者が運営する「恋人・夫婦仲相談所」では、「夫が抱いてくれない」という夫に拒否される妻側からの相談が大多数。一方で、男性側の夫婦関係の相談を受けている方々に聞くと「妻が誘いに乗ってくれない」「妻が拒否する」というほうが多いと聞きます。つまり、夫側の拒否、妻側の拒否割合はフィフティフィフティ。性欲は男女ともにあるのです。しかし、性欲曲線は出産やストレスや更年期などおのおのの事情により上下運動を繰り返す株価のようなものなので、男女でピッタリ一致させることはむずかしいのです。
でも、それを理由にセックスレスを受け入れるのはまだ早い。冒頭でも述べたとおり、何か1つの理由からセックスレスに陥るというケースは少ないのです。さまざまな理由が重なり合って、あなたの夫は「してくれない」のかもしれません。であれば、まずは、その理由を知るところから始めてみましょう。
夫がセックスをしたくない5つの理由
ここからは、筆者の取材経験に基づいて、夫が「してくれない」理由を5つご紹介します。
理由1:エロチックな気分にコンバージョンできない
さまざまな統計で、「疲れているから」がしない理由として高い割合で現れます。しかし、筆者は8割がたウソだと断言します。
「体はクタクタだけど、性欲だけはすごい」「疲れてるときほどいたしたい」「いたしたほうが脳の疲れが取れて熟睡できる」という男性はいくらでもいます。
疲れている男性でも超好みのタイプの女性がウッフンとせまれば疲れが吹き飛んでしたくなる(かもしれない)し、仕事を終えたあとなど、開放感と同時にエロチックなスイッチが入ってしたくなるとも聞きます。
いつも寝ている自宅の寝室で、いつも顔を見ている妻だとすぐにエロチックモードになれない。しかし、それをストレートに伝えるといろいろ面倒なので、反論を寄せ付けない「疲れている」という断り方をしているにすぎないのです。
理由2:妻が「お母さん」に見えて性の対象ではない
産前・産後の妻を持つ男性からよく出る感想です。「家族としては愛しているけれど、してはいけない気がする」というものです。
子どもが赤ちゃんのうちは母性が勝るので仕方ないことですが、高校生くらいになっても「子どもがいちばん」オーラが出続ける妻たちを多く見かけます。すると、子どもがいちばん大事、夫は二の次という態度が夫に伝わり、“妻に大事にされていない感”が芽生える。結果、40代になると完全なセックスレス夫婦になってしまうのです。
理由3:元々夫の性欲が少ない
最近特に増えていると感じるのがこの理由です。穏やかでやさしい夫、家事をよく手伝う夫、子ども好きの夫、あるいは仕事に没頭する夫……彼らはセックス以外のことにほとんどのパワーを注ぎます。
またそういった夫の多くは、つきあっているころは好奇心からセックスできていたけれど、それほど行為に魅力を感じていないタイプ。子どもができてしまったからもう必要ない、マスターベーションで十分と考えます。
結婚後の没交渉に戸惑い、「結婚前はデートのときに必ずしていました」と妻は訴えますが、出会ったころのソレと結婚後のソレは別物です。ましてや、子どもができてからのセックスに関しては、対象がかなりエロスから遠ざかって見えるそうです。
このケースの場合、元々の性の欲求が少ないので、いくらせまってものらりくらりとかわします。セックスがなくても生きてゆけるので必要性を感じていません。妻もそうであればまったく問題はありません。が、そうはうまくゆきません。
理由4:マンネリ化でセックスがつまらない
アメリカの人類学者ヘレン・E・フィッシャーの著書『愛はなぜ終わるのか―結婚・不倫・離婚の自然史』の中に、「恋は3年で冷め、愛は4年で終わる」と書かれています。脳科学のデータによれば、恋愛に伴うドーパミン効果は3年で切れ、4年目を迎えるころには将来のことを真剣に考えるなど冷静になるということです。また、筆者が1609名の主婦を対象に行なった調査でも、結婚4年目のタイミングでセックスレスに陥る夫婦が増加することがわかりました。
これは、毎回同じセックスを続けていると刺激がなくなり、快楽も少なくなるということを示しているともいえます。
ゲームにたとえればわかりやすいでしょう。遊んでいて、ずっと同じ展開が続いたらあっという間に飽きてしまいます。そうならないためには、次から次に新しい刺激が投入されることが必要。それがないと、ゲームにもセックスにものめり込めません。
「夫のセックスはワンパターンでつまらない」と言う妻がいますが、それは夫もそう思っている可能性が高いということ。実際、男性がたに尋ねると「こうすればまた同じ反応をするのがわかるから飽きてくる」との声が挙がります。自分のテクニックは棚に上げ、妻の変化がない姿勢に、あなたの夫は「つまらない」と思っているかもしれません。
理由5:ED気味でSEXに自信がない
こちらは筆者の得意ジャンルで、アンケート調査も行っています。EDとひと言でいっても勃起硬度に幅があります。
最初からまったく挿入できない夫は、決して妻を誘うことをしません。勃起硬度はあるけれど、途中でできなくなってしまう、最後の射精までできないのもEDの症状です。この場合も夫は「最後までできないから最初から誘わない」という心境になります。EDを自覚しても認める男性は少なく、なかなか病院に行こうとはしません。
今こそ「してくれない」夫と向き合う時期!
ほかにも「妻としたくない」理由は山ほどあります。体調や感情もフックになりますので、先月はしたくなかったけれど、今月はエッチな気分になってきたという変動も十分あります。せっかくセクシー気分が上がってきたのに妻がそれを察知せず忙しそうにしていると……想像すればわかると思いますが危険です。
「夫がしてくれない」と相手のせいにする前に理由を考えてみる。「疲れてる」は差し障りない言い訳だと意識する。この状況を放置しておくととんでもなく寂しい老後になりますので、今こそ向き合う時期なのです。
■参考資料
・第7回男女の生活と意識に関する調査(一般社団法人 日本家族計画協会)
http://www.jfpa.or.jp/paper/main/000047.html
・『セックスレスの精神医学』(阿部輝夫 著)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480061898/
◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。