それでも夫が好き!?「不倫されても別れない妻」が考えていることとは

2020/08/30

夫婦関係においてパートナーに対する最大の裏切りとも言える「不倫」。不倫されたから離婚する、は当然の決断でしょう。一方で、不倫をされても「離婚しない」という決断をする人もいます。

今回はこの「不倫されたけど離婚しない」という妻の決断について、夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。

会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、We...

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ポジティブな「離婚しない理由」はあるのか?

100%夫に否があるにも関わらず離婚をしない妻。その理由としてよく聞かれるのがお金の問題です。

「離婚したらいまの生活レベルを維持できない」
「シングルマザーで子どもを大学まで行かせるのは大変」
「希望する養育費を夫が払えない」
「住居が夫の親の持ち物なので、新しい家に越すことになると費用がかかる」
「財産分与でもらえる額が少ない」……etc

「結婚=お金」の構図がチラリと見えてむなしくなりますが、とは言え、生きていくうえでお金は必要です。そのほか「子どものこと」を理由に離婚しないというケースも少なくありません。

どちらも納得できる「離婚しない理由」です。しかし、それらの理由だけで夫婦生活を続けるのは夫婦お互いに苦痛でしかありません。もっとポジティブな「離婚しない理由」はないのか?やむを得ず「離婚しない」ことになったとしても、そのポジティブな理由を知ることが、救いになるかもしれません。

筆者が運営する「夫婦仲相談所」に来た女性の例をご紹介しましょう。

塔子さん(仮名30代 5歳・2歳の子どもあり)の例

女性と男性
DmitriMaruta/gettyimages

コロナ禍のさなか、Zoomで相談をいただいた塔子さん。女性誌のモデルかと思うほどにキレイなかたです。シニヨンヘアに小花模様のブラウス、涼し気なアイメイクをされていました。不倫報道があるたびに「あんな素敵な奥さんがいるのになぜ?」といった声が挙がりますが、この塔子さんの例からもわかるとおり、妻がキレイだろうが、センスがよかろうが、料理がうまかろうが、不倫する人は不倫します。

塔子さんの夫は職場の同僚。結婚前の交際中に不倫をして、一度塔子さんと別れています。しかし、夫の方からやり直したいと懇願され復縁。その後、結婚にいたりました。

一度過ちを許し、夫も「二度としない」と誓ったので安心していた――と話す塔子さん。しかし、その思いは裏切られました。今回の不倫は、取引先の女性社員。仕事の飲み会で出会い、それがプライベートな飲み会になり、やがてつき合うようになりました。終電ではなくタクシー帰りの日が増えたことで疑ってはいましたが、決定的だったのは、リビングに置かれていたスマホの画面に「はやく会いたいな」というLINEの文面が浮かんだことです。

塔子さんが問いただすと夫はあっさり認めて謝りました。あまりにわかりやすい夫の行動と、薄っぺらい謝罪の言葉。塔子さんは「バカにしてるの!?」と絶望しました。

しかし、現時点で離婚はしていませんし、このときの相談事項は「離婚」についてではなく、「夫はまた不倫するか?どうすれば防げるか」でした。

「それでも夫のことが好きでしょうがない」

結婚前・後で2度パートナーに裏切られた塔子さん。しかし離婚は考えておらず、筆者が「今の不倫相手と続くかもしれないし、今後別の女性と3度目の浮気をするかもしれない。それでも離婚はしませんか?」と聞いても「離婚はしたくない」とその意思は揺るぎません(ちなみに、このときの相談事項は「離婚」についてではなく、「夫はまた不倫するか?どうすれば防げるか」でした)。

ちなみに彼女の母親は「3人の生活の面倒は見るから別れなさい」と言っているそうです。つまり、実家は財政的に余裕がある。加えて、塔子さん自身も大手企業の社員で現在育休中の身。家のローンは夫婦2人で払い、共同名義。ローンさえ払ってもらえれば別れても暮らしていけます。冒頭で挙げた、離婚をしない定番理由の「お金の問題」は当てはまらないわけです。

では、別れたくない理由とは?もちろん「子どものこと」もありますが、塔子さんいわく決定的な理由は「夫のことが好きでしょうがない」からなんだそうです。

この言葉は、相談中に何度も出てきました。夫に対する怒り、失望を口にする一方で、いいところを淀みなく話す塔子さん。休日は家族においしいご飯をつくってくれる、博学なのでいっしょにいると賢くなれる、おもしろいことを言って笑わせてくれる、ハンサム、スーツが似合う……聞いていた筆者はつい「それはモテる男の条件のオンパレードですね」と笑ってしまいました。

不倫問題は夫婦関係のスパイスにもなる?

悲しいバーで一人で女性。嫉妬の背景
igor_kell/gettyimages

夫に対して不信感を抱く妻に、筆者はよく「相手の悪いところが気になったら、バーターでいいとこを見つければいい」とアドバイスします。塔子さんは無意識にそれを実践していたわけです。また、ほとんどの妻は不倫夫のことを生理的に汚いと思って、夜の営みを受けつけなくなりますが、これも塔子さんの反応は逆。「浮気相手への対抗心で、毎回すごく燃える」とのことで、夫の不倫発覚後はセックスレスになるどころか、むしろ自分から誘うようになったんだとか。不倫によって「女性として不倫相手に負けた」と自己肯定感を打ちのめされる妻が多いのに対し、強靭なメンタルです。

しかし考えてみれば、不倫発覚後に夫のことを「汚らしい。最低。大嫌い。裏切りもの。」と罵倒するのは“好きの裏返し”とも言えるかもしれませんし、そこに気づいて「では、なにゆえ夫はほかの女性と楽しいときをすごしているのか?」と自分自身に問答を重ねることは建設的な行動です。

「妻への愛と外の恋愛は別腹」という思考の夫をバッサリ斬るのではく、「私だけに本当の愛をくれる」と視点を替えることで、生涯寄り添うことができれば最高の夫婦と言えるかもしれません。塔子さんの話を聞いているうちに、不倫問題を夫婦関係のスパイスにして、ますます夫を好きになっているような感覚すら覚えました。

もちろん、塔子さん夫婦の事例が“イレギュラー”であることは筆者も理解しています。しかし先にも述べたとおり、このイレギュラーな事例のなかに「やむを得ず『離婚しない』ことになった」妻を救うヒントがあることは間違いありません。

夫の不倫発覚でも別れない理由として、経済的なことプラス「愛してる」の気持ちを意識してみる。そして、後者を言葉と行動で全面に伝えれば、夫は2度と不倫をしなくなる可能性があります。逆に前者ばかりが伝わると「やっぱり金かよ」とため息が漏れ……また不倫するかもしれません。

何はともあれ、不倫発覚時には自分の冷静さを取り戻すまで行動してはいけません。怒り沸騰状態だと相手への憎悪、夫への制裁の言葉しか出ないのでよりよい解決に進めません。そして我慢して耐えている自分を「かわいそうな私」「負けた私」と思うより、いっそ、突き抜けて考える。根底にある「夫を好き」という気持ちを信じてみましょう。


◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

 
 

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