「住宅ローン控除」はいくら戻ってくる?計算方法と届け先について解説
2019/02/12
「住宅ローン控除」は、住宅を取得したときに購入者の負担を軽減する目的で始められた制度です。控除が受けられる条件、いくら戻ってくるのか、手続き方法など、気になるポイントを税理士の角田圭子さんに詳しく教えていただきました。
「住宅ローン控除」とは?
マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物といわれます。
数千万円もする住宅をポンと購入できる人はそう多くなく、ほとんどの人は銀行などの住宅ローンを利用して、毎月お金を返済していくことになります。
「住宅ローン控除」とは、マイホームをローンで購入した場合に、各年末のローン残高の1%が所得税から控除されるというもの。控除される期間は最長10年間で、その期間は所得税がほとんどかからないケースも多いようです。
とても大きな節税効果があるので、まずは仕組みを理解し、毎年忘れずに手続きを行いましょう。
控除が受けられるのはどんな人?
住宅ローン控除を受けるには、まず住宅ローンを組んで住宅を購入していることが大前提です。
新築はもちろん、中古マンションや中古戸建てなどでも、住宅ローンを組んで購入していれば控除の対象に。ただし、中古住宅の場合は築20年以内(マンションなど耐火構造建築なら25年以内。また、一定の耐震基準を満たす住宅は築年数を問いません)の物件と決められています。
そのほか、控除を受けるための条件は下記のとおりです。
<住宅ローン控除を受けるための主な条件>
●住宅を取得してから6カ月以内に入居し、引き続き住んでいる
●床面積(登記面積)が50㎡以上
●床面積の2分の1以上が、自分の住まいである
●控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
●民間の金融機関や住宅金融支援機構などの住宅ローンを利用している
●住宅ローンの返済期間が10年以上
●入居した年とその年の前後2年以内に、譲渡所得の課税の特例を受けていない
「住宅ローン控除」の控除額は?
住宅ローンを利用すると、住宅を購入してから最長10年もの間、毎年「年末の住宅ローン残高×1%」が所得税から控除されます。
ただし、控除額には上限があり、一般的な住宅であれば1年間で最大40万円。10年間控除を受け続けると、400万円の控除が受けられることになります。
<1年間の控除額の上限>
●一般住宅・・・・・・・40万円(10年間で最大400万円)
※中古住宅の個人間売買の場合など、消費税率が8%または10%以外の場合は20万円(10年間で最大200万円)。
●認定住宅・・・・・・50万円(10年間で最大500万円)
※「認定住宅」とは、長期優良住宅または低炭素住宅として、耐久性、耐震性、省エネ性能などが施された住宅のこと。一般住宅よりも住宅ローン控除が優遇されます。
※中古住宅の個人間売買の場合など、消費税率が8%または10%以外の場合は30万円(10年間で最大300万円)。
控除額=還付金額ではない!
ここで気をつけたいのが、控除額が必ずしもそのまま戻ってくるわけではないということ。一般住宅の場合の「上限40万円」とは、還付される額ではなく「控除が可能な金額」を意味します。
「住宅ローン控除」は所得税を軽減するものなので、控除される額は納めた所得税の額が上限です。控除額(年末の住宅ローン残高×1%)より所得税が少ない場合は、納めた所得税がまるまる戻ってきます。
所得税で控除しきれない場合は?
控除額(年末の住宅ローン残高×1%)より所得税が少ない場合は、納めた所得税だけでは控除しきれないため、残りは翌年の住民税から控除されます。
消費税率が8%または10%の場合、前年分の所得税の課税所得金額の7%(上限13万6,500円)が限度になり、これを超えた分の金額については控除の対象になりません。
また、中古住宅の個人間売買で消費税が非課税なら、前年分の所得税の課税所得金額の5%(上限9万7,500円)が限度になります。
こんなケースではいくら戻ってくる?
「年末の住宅ローン残高4000万円」のAさんの場合
実際にはどれくらい所得税・住民税が軽減されるのか、次のモデルケースで確認してみましょう。
<Aさんの条件>
・年収・・・・・・600万円(所得税の課税所得金額297万5,000円)
・所得税・・・・・・20万円
・住民税・・・・・・30万円
①控除額は40万円(一般住宅)
[年末の住宅ローン残高4,000万円]×[1%]=[控除額40万円]
②所得税は0円になる!
[控除額40万円]ー[所得税20万円]=20万円(所得税で控除しきれない分)
控除額40万円より所得税20万円が少ないので、Aさんの所得税は0円(全額控除)になります。
③住民税は13万6,500円が控除される!
[所得税の課税所得金額297万5,000円]×[7%]=20万8,250円(上限13万6,500円より多い)
所得税で控除しきれなかった分は20万円ですが、住民税から控除できる金額は上限が13万6,500円。つまり、翌年の住民税30万円から13万6,500円が控除されることになります。
手続きはどうすればいいの?
最長10年間受けることができる「住宅ローン控除」。
住宅を購入し、住み始めた最初の年分の控除は、翌年の確定申告で手続きを行いましょう。確定申告の時期は原則2月16日から3月15日ですが、還付申告のみなら1月1日から手続きを行うことができます。
必要書類を準備したら、住んでいる地域の税務署へ持っていくか、郵送やインターネットで手続きをします。
必要書類は、新築・中古・増改築によって一部異なるので、事前にしっかり確認してください。
会社員の場合、2年目以降の手続きは勤務先の年末調整で行うことができます。