子どもの進学費用に困ったら「国の教育ローン」利用を検討

2019/02/14

「子どもの大学進学で予想以上にお金がかかった」、「進学先が突然変更になり、入学金が足りない」

こんなとき、教育関連のお金を融資してくれるのが教育ローンという仕組みです。今回は公的な融資制度である「国の教育ローン」について、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に詳しく解説していただきました。

国から教育資金を借りられるってホント?

教育ローンとは、子どもが高校や大学などへ進学するに当たって必要となるお金を借りられる仕組み。大きく分けると、銀行や信用金庫といった民間の金融機関による教育ローンと、国による教育ローンがあり、借入するときの条件や借入限度額、金利などが異なります。

今回ご紹介する「国の教育ローン」は、100%政府出資の金融機関である日本政策金融公庫が扱う教育ローンです。民間の教育ローンと比べて金利が低く、母子家庭や父子家庭、低所得の世帯には金利の優遇なども。

国の公的な融資制度として35年以上の歴史があり、これまで多くの人に利用されています。

融資の対象になる学校とは?

「国の教育ローン」で対象となるのは、中学校卒業以降の進学先となる、下記のような教育施設です。

・高校、高等専門学校、特別支援学校の高等部
・大学、短期大学、大学院
・専修学校
・予備校
・職業能力開発校
・外国の高校、大学、大学院
など

お金の使い道は入学金や授業料だけでなく、受験にかかった費用(受験料、交通費、宿泊費など)、ひとり暮らしに必要な費用(アパートの敷金、家賃など)、教科書代、パソコン購入費、通学費用なども認められます。

「国の教育ローン」の特徴

「国の教育ローン」で借入できる金額、金利、返済期間は下記のとおりです。

「国の教育ローン」の内容

それでは、民間の教育ローンとの違いも踏まえながら、1つずつ特徴を見ていきましょう。

限度額は350万円

「国の教育ローン」で借入できる金額は、子ども1人あたり350万円までです。ただし、親の収入に上限があり、下記の金額を超える場合は借入することができません。

※特定の条件を満たすと、収入の上限が緩和されるケースもあります。
※子どもの人数が4人以上の場合は、日本政策金融公庫のホームページで確認するか、教育ローンコールセンターへ問い合わせてください。

民間の教育ローンの借入限度額は各金融機関によって異なり、300万円以内というところもあれば、1000万円以内と設定しているところもあります。

低金利かつ固定金利

「国の教育ローン」は固定金利なので、契約したときの金利が返済完了まで続きます。一般的に固定金利というと高金利になる傾向がありますが、「国の教育ローン」は1.78%(18年11月12日現在)。民間と比べても低金利なので、リスクも少なく安心です。

長期返済が可能

返済期間は15年以内。ゆとりを持って返済することができます。

融資対象者は保護者

教育ローンは子どもの教育資金を目的としたものですが、原則として融資の対象は学校に進学・在学する人の保護者で、返済も保護者が行います。いわゆる「奨学金」とは異なり、子ども本人が借入をするものではないことを理解しておきましょう。

利用するにはどのような申請が必要?

「国の教育ローン」は、次のような流れで申請手続きを行います。

1:日本政策金融公庫へ相談する
2:必要書類を用意して、提出する
3:審査が行われる
4:融資が決定する
5:契約をする
6:指定の銀行口座に1年分まとめて振り込まれる

通常、申し込み完了後20日ほどで入金されますが、入学シーズンは混雑で時間がかかってしまうことも。学校が決まる前でも申し込みはできるので、入学直前で慌てないためにも早めに手続きすることをおすすめします。

大学の進学費用はこんなにかかる!

入学金・授業料以外に必要な費用

子どもの進学のタイミングに合わせて、入学金や授業料を準備している人は多いことでしょう。しかし、実際には考えている以上にいろいろな費用がかかります。

<例えばこんな費用がかかる>
・パソコン、教科書代
・住まいを探しにいくための交通費、宿泊費、敷金・礼金、あっせん手数料、前払い分の家賃
・家具、家電、寝具、日用雑貨、衣類など
・引っ越し費用、4月分の生活費など

入学費用の目安

入学に関する費用は、子どもの進学先が国公立大なのか私立大なのかによっても大きく変わってきます。国公立大なら、入学費用は合計69.2万円。私立文系なら合計92.9万円、私立大理系なら合計87万円と、国公立大に比べてかなり大きな負担に。

初年度納付金の目安

大学の入学初年度には、入学金のほかに、1年間分の授業料や諸経費を支払うことになります。進学先別に見ると、いちばん負担の少ない国立大でも、その額は80万円以上。私立大では100万円を超えることも珍しくありません。

さらに、私立大の医学部や歯学部ともなると、設備費用や実習費用も大きく上乗せされるため、合計額はかなりのものに。

※1 文部科学省令による標準額。ただし、国立大の法人化により、国立大の学費も大学間で差が出ている。
※2 文部科学省「平成29年度学生納付金調査」。公立大昼間部の平均額。入学料は地域外入学者の平均額(地域内入学者の入学料の平均額は230,186円)。
※3 文部科学省「平成28年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」。私立大昼間部の平均額。 ※4 施設費、実習費、諸会費などを徴収される場合がある。
※4 施設費、実習費、諸会費などを徴収される場合がある。

ここでご紹介した金額は、あくまでも目安です。実際には、大学や学部によっても大きく異なるので、子どもの進学先が決まったら、必要となる金額をあらためて確認しましょう。

まとめ

子どもの進学にかかるお金は、予想以上にかかることもあります。万が一、準備していたお金でまかないきれない場合は、今回ご紹介した「国の教育ローン」を利用できることもある、と覚えておくといいですね。

学生本人が利用できる奨学金制度との併用可能なので、利息額や返済期間をよく考えたうえで、無理なく上手に活用してください。

教えてくれたのは・・・

井戸美枝さん

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、経済エッセイスト。講演やテレビ、ラジオなど多数のメディアを通じて、ライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など。

取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

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