女性が手に持っている本のタイトルは「年金ハンドブック」です。

【お金のプロが解説】働く主婦がもっとも得する「年収」と注意点とは?

2020/01/12

女性は結婚や出産、子どもの成長など、ライフステージによって働き方が変わりがちです。どのように働くかで老後にもらえる年金の額が変わるので、老後資金を考えるとこれは大きな問題。いま、主婦はどのような働き方をするのがいいか、何に気をつければいいのかを、節約アドバイザーの丸山晴美さんにお聞きしました。

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て...

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みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。

お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。でも経済に関するお金の情報は、ちょっとむずかしいですよね。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。今回のテーマは「主婦の年金対策」!

いまの20〜40代に「老後資金2,000万円問題」は当てはまらない?

2019年に大きな話題となった「老後資金2,000万円問題」は、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書による「高齢社会における資産形成・管理」の中で、リタイアした65歳の夫と60歳の専業主婦の妻がその後30年生きた場合、年金以外に2,000万円が必要になるというものでした。

でも現代の20~40代の女性は、正社員なりパートなりで何らかの仕事に就いているかたが多く、専業主婦は少数派です。

共働き等世帯数の推移


また、昔は20代前半で子どもを産んだので、子どもが独立した後に老後資金を貯めれば十分間に合いましたが、今は晩婚・高齢出産が増え、子どもの独立を待っていたら老後資金はなかなか貯められません。

つまり、多くの20~40代の方ににとって「2,000万円問題」は当てはまらないと言えます。やみくもに貯蓄するのではなく、いま自分たちにできる老後資金対策を知り、できるだけ早く手を打つことが大切です。

夫婦とも厚生年金なら、老後資金の心配は低め

老後資金の基本となるのは「年金」です。
夫婦2人とも厚生年金に入っている場合は、2人がもらう年金の合計は月額22~26万円程度になります。厚生年金の加入期間や期間中の報酬額によっては、もっと多くなる世帯も少なくありません。このくらいの支給額があれば、老後生活はそれほど心配しなくていいでしょう。住宅ローンが完済していれば、より安心です。

逆に老後が不安なのは、パートや自営業など国民年金に加入しているかたです。
厚生労働省が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の支給額は1人月額平均5万5,615円。これでは、たとえ夫が厚生年金に入っていたとしても、老後の年金額は心もとないもの。夫婦2人とも国民年金という場合はなおさらです。

そこで今回は、「国民年金の主婦の老後対策」を考えます。

パートの103万、106万、130万、150万円の「壁」をおさらい

ismagilov/gettyimages

国民年金に加入している主婦に多いケースの1つが、パートで働いている場合です。パートにはよく耳にする「数字の壁」がいくつかありますよね。どういう壁で、収入がいくらだと一番得なのか、整理しておきましょう。

「103万の壁」は「所得税」支払いライン

専業主婦(主夫)がパートで働いた場合、年収が103万円を超えると、超えた額に対して所得税(5%~45%)の納税義務が生じます。逆に年収が103万円以内なら配偶者控除が適用され、夫もしくは妻の税負担が軽減されます(納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、給与収入だけなら年収1,220万円以下の場合)。そのため年収を103万円以内に抑えて働いているかたが多いのが現状です。

■年収103万円のメリット
・所得税がかからない
・配偶者控除適用により夫の節税になる
・社会保険料の負担もない

ちなみに住民税については、年収100万円以下でほかに所得がない場合は基本的にかかりません。ただし、お住まいの市区町村によっては、収入が100万円以下でも住民税(均等割)がかかる場合がありますので、詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。

「106万の壁」は「厚生年金」へ切り替えの機会

2016年10月以降、従業員501人以上の企業で働く場合で下記の条件を全て満たすかたは、厚生年金に加入することになりました(2017年4月以降は500人以下の企業でも労使合意があれば加入可能)。

■厚生年金加入の条件
・1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上と見込まれること
・賃金が月額8万8,000円(年額106万円)以上であること
・学生でないこと

この条件を満たして厚生年金に入れば、給料から厚生年金と健康保険の一部を負担することになりますが、将来もらえる年金額が増えるメリットがあります。
たとえば、平均報酬月額8万8,000円(交通費含む)で10年間働いた場合、年金が年額約5万8,000円ほど上乗せされることになります。

「思ったより年金が増えない……」という声も聞こえてきそうですが、人生100年時代とも言われるいま、働けるうちに少しでも年金額を増やす対策としては有効です。実際、2018年3月時点で約38万人がこの壁を越えて厚生年金に加入しています。

「130万の壁」は「社会保険料」支払いライン

Sven Loeffler/gettyimages

年収130万円を超えると、夫の社会保険の扶養から外れ、自分で国民健康保険料などを払うラインです(収入以外に、勤務日数や時間など、その他の条件も合わせて判断されます)。年収が130〜160万円の場合、支払う社会保険料と住民税、所得税の合計金額は年額約20~29万円※です。約20~29万円を払うかどうかは大きいですよね。

※東京都の場合

■年収130万円以内のメリット
・配偶者特別控除の適用により夫の節税になる(夫の年収が1,220万円以下の場合)
・社会保険料の負担なし

「150万の壁」は「配偶者特別控除」が徐々になくなるライン

年収が150万円を超えると、段階的に配偶者特別控除の金額も減少し、年収201万円を超えると配偶者特別控除の適用はなくなります。
年収が上がるにつれてメリットが1つずつ減っていくのがわかります。

■年収150万円以内のメリット
・配偶者特別控除の適用により夫の節税になる(夫の年収が1,220万円以下の場合)

パートの年収、本当にお得なのは「130万円以内」または「160万円以上」!

呼び出しを行う若い女性。
metamorworks/gettyimages

上記をふまえると、パートの年収はどのようにコントロールするのがもっともお得なのでしょう?
結論から言うと、「年収130万円以内、もしくは160万円以上のどちらか」がいいと言えるでしょう。

年収105万円以内なら、社会保険料を払う必要がありません。
しかし年収が160万円でも、社会保険料の29万円が差し引かれると手取りは131万円程度。年収130万円未満とほぼ変わらず、いわゆる「働き損」現象になってしまいます。それならば年収130万円未満に抑えたほうがお得と言えます。

一方、年収130万円以上で手取りを増やしたい場合は、年収160万円を超える必要があります。とは言え、30万円の差はなかなかのもの。一気に160万円まで増やすのは大変です。

つまり、壁はいくつかあるものの年金を考えたら、いま本当に悩むべきなのは「130万の壁」1つだけです。もっとも効率がいい130万円以内に抑えるか、それ以上を求めるならがんばって160万円以上をめざすのが得策。
個人的には、お子さんが小さいうちは年収130万以内に収め、子どもが大きくなって時間ができたら、年収160万円を超える働き方にシフトするのがいいと思います。

現在、年収を103万円以内に抑えている人は、勤めている会社の規模や状況などを確認し、厚生年金に入ることができるなら106万円を突破して加入することをおすすめします。そして年収を130万円以内ギリギリまで伸ばしましょう。住民税などが発生しますが、老後を考えればそのほうがお得です。

夫婦ともに国民年金の場合は「リスク分散」で対策を!

日本の花の店の女性
bee32/gettyimages

冒頭で、国民年金の支給金額は低いとお伝えしましたが、自営業などで夫婦ともに国民年金という方は少なくありません。
夫婦で国民年金という方こそ、「リスク分散」をする工夫が大切です。妻がパートに出ることができる状況であれば、上で説明したように、年収106万円を超えて妻だけでも厚生年金に入っておくといいでしょう。

それと同時に、夫婦2人とも国民年金に上乗せして加入できる公的年金制度の「国民年金基金」または「付加年金」にも入り、年金を2階建にしましょう。とくに付加年金は、国民年金の保険料に月々400円を上乗せして納めることで、将来的に受給する年金額を増やすことができるのでお得です。ただし、「国民年金基金」と「付加年金」は同時に加入することができません。「iDeCo」と「付加年金」は同時に加入することができます。

これだけでもまだ心もとない金額なので、掛金を自分自身で運用しながら積み立てる「iDeCo(イデコ)」や、生命保険会社などの年金保険積み立てなども加えて3階建にしておくことをおすすめします。

老後資金対策は、老後になって慌てないよう、働けるうちに複合的に行うと効果的です。お金は過去にさかのぼって貯めることはできません。いま何ができるかを考え、少しずつでも貯め始めることが大切です。


【お詫びと訂正】
「103万の壁」について解説した部分で、住民税の説明について内容に誤りがありましたので、該当箇所を修正させていただきました。

教えてくれたのは・・・

丸山晴美さん

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て2001年、節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザーなどの資格を取得。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどを、テレビやラジオ、雑誌、講演などで行なっている。著書は「50代から知っておきたい!年金生活の不安、解消します」(共著)(幻冬舎)など多数。

取材・文/かきの木のりみ

 
 

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