サラダを食べる人

がんや心臓病のリスクも高まる!?野菜不足が引き起こす危険な健康トラブル

2023/12/16

健康的な生活には野菜が欠かせないと知っていても、実際には十分にとれているか分からないという方もいらっしゃいますね。

野菜不足が引き起こす健康トラブルや上手な摂取の仕方について、管理栄養士などの資格を持つ栄養・療養指導の専門家、たいや内科クリニックの林安津美氏に聞きました。

Q.毎日の食生活で野菜の摂取が大切な理由はなんでしょうか

毎日の食生活で野菜を摂取することは、健康にとって非常に重要です。野菜の摂取が必要な理由と、野菜で得られる栄養素・各栄養素の働きの詳細は以下の通りです。

●ビタミン・ミネラルの補給 
野菜はビタミン(特にビタミンA・ビタミンC・ビタミンK・フォレートなど)とミネラル(特にカリウム・マグネシウム・鉄など)の豊富な供給源です。これらの栄養素は免疫機能の維持・骨の健康・血液による酸素供給・ビタミン欠乏症の予防などに重要です。

●食物繊維の提供 
野菜には食物繊維が豊富に含まれており、便秘の予防や腸の健康維持に役立ちます。また、食物繊維は血糖値のコントロールやコレステロールの調整にも寄与(きよ)します。

●抗酸化物質の提供 
抗酸化物質(ビタミンC・ビタミンE・β-カロテンなど)を含む野菜は、体内の酸化ストレスを軽減し細胞をダメージから守ります。これはがんや心臓病などの慢性疾患のリスクを低減するのに役立ちます。

●低カロリーで高栄養価 
野菜は一般的に低カロリーであり、同時に多くの栄養価を提供します。これにより体重管理に役立ち、肥満予防に寄与します。

●フィトケミカルの摂取 
野菜にはさまざまなフィトケミカル(植物由来の生理活性物質)が含まれていて、がんの予防や炎症の軽減など、健康に対する利点があります。

Q.1日にどのくらいの量の野菜を摂取するといいのでしょうか

日本における野菜の摂取量の推奨値は、厚生労働省が示す「日本人の食事摂取基準」に基づいています。この基準によると、成人は1日に350g以上の野菜の摂取が推奨されています。これには緑黄色野菜とその他の野菜が含まれますが、特に緑黄色野菜は栄養価の高さから120g以上を目安とすることが勧められています。

日本の国民健康・栄養調査によると、多くの日本人が必要な野菜摂取量に届いていないと報告されています。特に若年層や男性において不足傾向が見られます。このような状況は、栄養不足や健康問題を引き起こす可能性があるため、野菜摂取量を増やすことが望まれます。

毎食に野菜を取り入れる、スナックとして生野菜やサラダを食べる、料理に野菜を多用するなどの工夫が有効です。

Q.野菜をほとんどとらない生活を続けると、どのような健康トラブルが起こりますか

ウエストをつまむ女性

野菜をほとんど摂取しない生活を続けると、さまざまな健康トラブル発生の可能性が高まります。以下は、野菜不足が引き起こし得る健康トラブルの一部です。

●栄養素不足
ビタミン・ミネラル・食物繊維・抗酸化物質などの栄養素が不足すると、栄養不良が発生します。特にビタミン不足は、免疫機能・骨の健康・血液の酸素供給などに影響を及ぼします。

●便秘と消化問題 
食物繊維は腸の正常な動きをサポートしています。野菜不足によって便秘や消化不良が起こる可能性が高まります。

●酸化ストレスと炎症
野菜に含まれる抗酸化物質は、細胞を酸化ストレスから守り炎症を軽減します。不足すると体内の酸化ストレスが増加し、慢性炎症のリスクが高まります。

●心臓病やがんのリスク増加
野菜不足は、心臓病やがんのリスクを増加させる要因となります。特に緑黄色野菜に含まれるカロテノイドは、がん予防に重要な役割を果たすことが示唆(しさ)されています。

●体重増加と肥満 
野菜は低カロリーで満腹感を提供する食品です。野菜が不足すると高カロリーの食品に頼ることが増え、体重増加や肥満につながります。

●免疫機能の低下
ビタミンやミネラルは免疫機能をサポートします。これらが不足すると免疫機能が低下し、感染症に対する抵抗力が弱まります。

野菜を摂取することで上のような健康リスクを低減し、体の機能を最適な状態に保てます。野菜を食事に積極的に取り入れるよう努力しましょう。

Q.野菜ジュースやフルーツは野菜の代わりになりますか

野菜ジュースやフルーツは、部分的には新鮮な野菜の代替(だいたい)となりますが、いくつかの留意点があります。それぞれの利点と欠点は以下です。

●野菜ジュース
・利点:手軽に野菜不足を補う手段として有効。ビタミンやミネラルを簡単に摂取できる
・欠点:食物繊維が少ない、または全く含まれていない場合が多い。加工されたジュースは糖分が多く含まれ、高カロリーである

●フルーツ
・利点:ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、自然な甘みが楽しめる。
・欠点:野菜に比べて糖分が多く、カロリーが高い

野菜ジュースやフルーツは、食物繊維など一部の栄養素の面で野菜に劣ります。新鮮な野菜の摂取を忘れずに、多様な食品をバランス良く取り入れることが、健康の維持には不可欠です。

また野菜ジュースを選ぶ際は、添加糖や塩分が少ないものを選ぶといいでしょう。

Q.野菜不足にならないために、毎日の食事ではどのようなことに気をつければいいでしょうか

汁椀を持つ人

野菜不足を防ぐために、毎日の食事において以下のポイントに気をつけましょう。

●バラエティ豊かな野菜を摂る
異なる種類の野菜をバランスよく摂ることが大切です。緑黄色野菜・根菜・葉物野菜・豆類・きのこ類などを組み合わせて食べると、さまざまな栄養素を摂取できます。

●季節の野菜を選ぶ
旬の野菜は栄養価が高くて味もよく、新鮮さを保っています。地元の農産物市場や直売所で季節の野菜を購入するといいでしょう。 

●野菜をメインにした料理を考える
野菜を主役にした料理を取り入れると、野菜摂取量を増やせます。サラダ・スープ・炒め物・グリル野菜をメインディッシュとする、アイデアを活用した楽しい野菜料理を作ってみましょう。

●できるだけ生の状態で摂る
野菜は、栄養価が高くビタミンや酵素が壊れていない、生の状態で食べるように心がけましょう。サラダやスムージー、または生野菜のスティックをおつまみとして摂ることもできます。

●加熱調理を活用する
一部の野菜は加熱調理することで栄養価が引き出されます。蒸す・煮る・蒸し焼きにするなど、調理法を工夫して摂るのも大切です。

●冷凍野菜を活用する
冷凍野菜は、新鮮さを保ちながら長期保存できるメリットがあります。忙しい日や旬でない野菜は、冷凍野菜を利用するのもいい方法です。

●野菜スナックを用意する
野菜スティックや野菜ディップを用意しておくと、おやつ代わりに手軽に野菜を摂れます。

●汁物に野菜をたくさん入れる
スープや味噌汁などの汁物にさまざまな野菜を加えると、日々の野菜摂取量を増やせます。

野菜は健康的な食生活に欠かせません。バランスよく食事に組み込み異なる種類の野菜を摂取して、いろいろな栄養素を取り入れるのが大切です。

教えてくれたのは・・・

林 安津美さん

大学卒業後JA愛知厚生連に入職し37年間病院の管理栄養士として勤務、その間豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。2022年5月よりたいや内科クリニックへ入職。病態栄養専門管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、腎臓病療養指導士、がん病態栄養専門管理栄養士、和漢薬膳師等の資格を生かし患者さんの思いを聴き・応え、患者目線でテーラーメイドの医療をお届けできるように努めています。

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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