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花粉症、メイクやゴム手袋も要注意!?「大人の食物アレルギー」になりやすい人の特徴や注意点とは

2024/09/03

食物アレルギーというと、「小さな子どもがなるもの」というイメージがありますが、実は大人になってから発症することも少なくありません。

今回は、大人の食物アレルギーについて、医療法人社団博雅会草ヶ谷医院の院長である草ヶ谷英樹氏に聞きました。

Q.食物アレルギーはどのようにして発症するのでしょうか

食物アレルギーでは、発症する過程において「経口感作(けいこうかんさ)」と「腸管外感作(ちょうかんがいかんさ)」が起こっていると考えられています。

「感作(かんさ)」とは、体に入ってきたアレルギー原因物質に対して「IgE抗体」が作られて、アレルギー反応の準備が整った状態を指します。感作されたところに、体内に再び原因物質が入るとアレルギーが始まります。

「経口感作」では、ある食物を繰り返し食べているうちに、その食物に対してIgE抗体が作られることで食物アレルギーが起こります。小麦アレルギーや甲殻類アレルギー、木の実のアレルギーなどが知られていますが、なぜ一部の食物で高頻度に経口感作が起こるのかは、正確には分かっていません。

皮膚や粘膜のアレルギーを介して、食物アレルギーが起こるのが「腸管外感作」です。腸管外感作で最も多いのが、花粉アレルギーが原因で発症する食物アレルギー(花粉-食物アレルギー症候群)です。これは、花粉アレルギーの原因物質と果物や野菜に含まれる物質が似ていることに起因します。花粉に対して作られたIgE抗体が、摂取した果物や野菜に対して「花粉がきた」と間違えて反応しアレルギーを起こすのです。

ただし、IgE抗体が作られていてもアレルギー症状が出ておらず、食物アレルギーだとは言えないことがあります。IgE抗体がある=食物アレルギー“ではない”という点には注意が必要です。

Q.大人になってから食物アレルギーになることはありますか

大人になってからも食物アレルギーになることはあります。

子どもの頃には問題なく食べられたものが、大人になって急にアレルギー反応を引き起こすのは、それほど珍しいことではありません。大人になってから発症する食物アレルギーを「成人食物アレルギー」といいます。

食物アレルギーが最も多いのは幼児・小児ですが、20歳以降では20代が多く、その後30~40代になるにつれて少しずつ減少していきます。

Q.大人の食物アレルギーを引き起こしやすい食べ物にはどのようなものがありますか

食物アレルギー、女性はエビを食べた後のかゆみや発赤、魚介類アレルギー、かゆみ、発疹、腹痛、下痢、胸の圧迫感、意識不明、死、重度のアレルギーを避ける反応があります
Nuttawan Jayawan/gettyimages

乳児や幼児では牛乳や鶏卵といった食物がアレルギーの原因として有名ですが、成人で食物アレルギーの原因となりやすいものは、甲殻類や小麦、魚介類などです。

甲殻類に関して、エビとカニのどちらかにアレルギーが起こる人は、もう一方でもアレルギー反応が起こる可能性が非常に高いと知られています。

エビアレルギーは「トロポミオシン」というタンパク質に反応して起こります。トロポミオシンはカニにも含まれており、双方の構造が非常に似ているため、エビアレルギーの方はカニでもアレルギー反応が出ることが多いとされています。エビとカニ、どちらかにアレルギー反応がある方は、両方を避けるのが無難です。

さらにタイやカサゴなどはエビを好んで食べるので、エビやカニにアレルギーのある方は、タイやカサゴを食べるとアレルギー反応が出る場合があり注意が必要です。

Q.成人食物アレルギーを起こしやすい生活習慣などはありますか

腸管外感作(皮膚や粘膜のアレルギーを介して起こる食物アレルギー)による成人食物アレルギーには、意外な発症様式のものもあります。

たとえば医療従事者など日常的にゴム手袋をする方では、毎日皮膚にラテックスが接触した結果、ラテックスに対するIgE抗体ができるケースがあります。そういった方がラテックスと似た構造のタンパク質を持つバナナやアボカドを食べると、体が間違えてアレルギー反応を起こすことが知られています。

似たようなケースは、美容・化粧品の使用でもあります。口紅などに含まれる「コチニール」という色素は化粧品などだけではなく、マカロンなどの洋菓子や明太子など食品にも含まれます。そのため、化粧品として肌にコチニールをつけることで感作されたのちに、コチニールを含む食品を口にしたときに、全身性のアレルギー症状が出る場合があります。

また10年以上前の話ですが、石鹸で毎日洗顔した結果、石鹸の原材料に含まれていた加水分解小麦に対して感作されて、小麦アレルギーが多くの方で発症したという社会問題が起こりました。

大人の食物アレルギーが発症する背景には、増加する花粉症とそれに伴うアレルギーや、生活習慣によって感作される機会が増えていることも一因になっているようです。

Q.大人の食物アレルギーを予防・治療することはできますか

残念ながら成人の食物アレルギーの治療は簡単ではありません。また、アレルギー自体がなくなるといった便利な薬や治療方法はありません。

大人に食物アレルギーが出た場合、まずは症状や食事を食べたときの状況から、できるだけ原因の物質を絞っていくことが必要です。それに基づいて、疑わしい食品の成分に対するIgE抗体を調べる血液検査や、皮膚テストなどを行って診断をつけていきます。それでも診断が難しい場合には、実際に疑わしい原因物質を少量摂取して反応をみる負荷検査なども行われますが、これは一部の専門的な病院でしか実施されていないのが実情です。

Q.大人が食物アレルギーと診断されたら、日常生活でどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか

大人が食物アレルギーと診断されたら、日常生活では症状が出る食べ物をしっかりと避けることが大切です。成人における食物除去指導は、アナフィラキシーという重篤なアレルギー反応のリスクを踏まえて、アレルギーの原因となる食べ物を完全に除去するのが基本姿勢です。

一方で、過度に食物摂取を控えすぎないのも大切です。アレルギーに関する血液検査を受けた方の中に豚肉に対するIgE抗体が陽性だという理由だけで、症状もないのに「豚肉を食べるのをやめていました!」なんて方もおられました。前述の通り、検査でIgE陽性が出たからといって、必ずアレルギー陽性というわけではありません。そのことをしっかりと認識して、安全だと分かっている食べ物は気にせずに摂取してよいと理解することが必要です。



教えてくれたのは・・・

草ヶ谷英樹 院長

草ヶ谷医院・院長。東京慈恵会医科大学 医学部 医学科を卒業後、浜松医科大学 呼吸器内科、静岡市立静岡病院 医長などを経て、2021年に祖父・父から続く「草ヶ谷医院」(静岡市清水区)を継承し独立。医学博士、日本内科学会 内科認定医、日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医、日本医師会 認定産業医。YouTube「Dr.草ヶ谷の呼吸器アレルギーnaviチャンネル」で、疾患情報を配信中!

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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