「ほうれん草」を食べすぎるとどうなる?知っておきたいほうれん草のメリット&デメリット
2025/01/06
ほうれん草に含まれる栄養素には、健康によい作用を持つものが多い反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、ほうれん草の食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。
抵抗力アップやアンチエイジングに!ほうれん草を食べる「メリット」
ほうれん草は西アジアから中央アジアが原産とされるヒユ科の植物で、緑色の葉から根元にかけてを食用とする野菜です。品種によって、葉先が丸みをおびていたりギザギザとした切れ込みが入っており、茎や根元に赤い色が見られるものもありますよ。
そんなほうれん草には、おもに次のような栄養素が多く含まれています。
・ビタミンK
・葉酸
・ビタミンA(β-カロテン)
・ビタミンC
・ビタミンE
・カリウム
これらの栄養素には、骨を丈夫にする、動脈硬化を防ぐ、抵抗力を強化する、老化や日焼けを防ぐ、血行を促進する、血圧を下げるなどといった働きが期待できるのです。
このほか、ほうれん草には甘みのもととなるキシリトールも多く含まれています。シラカバの木やとうもろこしの芯を加工してつくられるキシリトールは、虫歯になりにくい甘味料としてガムなどに使われていることでも有名ですね。
一般的な砂糖は、口の中の細菌によって酸が生み出されて虫歯の原因となってしまいます。それに対し、キシリトールの場合は細菌が酸をつくることできず、その虫歯予防の効果は世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)からもお墨つきです。
また、キシリトールは砂糖よりもカロリーが低く、血糖値の急激な上昇を起こしにくいという特徴も。
このように、ほうれん草を上手にとり入れることで体の健康増進だけでなく、口の中の健康維持にも役立つでしょう。
体内に石ができたりアレルギー症状も?ほうれん草を食べすぎる「デメリット」
多くのメリットが得られるほうれん草ですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。
下痢や便の色が変わるなどの不快な症状を招く
ほうれん草は、生の状態ではかさが多いのですが、加熱することで一度に多く食べやすくなります。そうすると、ほうれん草に含まれる食物繊維をとり過ぎてしまい、下痢を起こすこともあるのです。
食物繊維といえば、腸内環境を整えて便通改善に役立つ働きを持っていますが、過剰となると消化不良を起こしたり腸を過剰に刺激して下痢や腹痛などの症状を引き起こします。
また、ほうれん草には鉄分も含まれていることから、鉄分が影響して黒っぽい便が見られることも。
いずれにしても、ほうれん草の食べすぎには気をつけるようにしましょう。
歯石がつきやすくなる
先述のとおり虫歯予防に役立つ成分を含むほうれん草ですが、シュウ酸という成分によって「歯石」がつきやすくなるといわれています。
通常、ほうれん草に含まれているシュウ酸を減らすために茹でて水にさらすなどの下処理が行われますが、それでも完全に減らすことはできません。
そのため、ほうれん草を食べすぎてしまうと、シュウ酸が唾液中のカルシウムと反応して歯の表面にくっつきやすい成分に変わり、歯が着色しやすくなったり、こびりついて歯石になることに……。
歯石がつくと歯科での除去治療が必要となり、表面がざらついてしまい、そこに細菌が増殖すると歯周病を引き起こしかねません。
食べてすぐに着色したり歯石になるわけではありませんが、ほうれん草をたくさん食べた後はとくに口中の手入れを入念に行うようにしましょう。
結石ができやすくなる
ほうれん草に多く含まれるシュウ酸は、腸から体内に吸収されると腎臓でカルシウムなどと化学反応を起こし、結晶化します。その結晶が集まって固まると「結石」と呼ばれ、大きさやできた場所によっては背中・脇腹・下腹部の痛み、吐き気、血尿、頻尿などを引き起こしてしまうのです(尿路結石)。
なお、結石が小さいうちは積極的な水分摂取や運動などで対処することも可能ですが、結石が大きくなってしまったり激しい痛みが繰り返し起こる場合などには、入院治療が必要になることも……。
とくに、過去に結石ができたことがあったり、暴飲暴食、肥満や生活習慣病のある人はリスクが高いとされているので注意しましょう。
アレルギーのような症状が出る
ほうれん草には、「仮性アレルゲン」の原因となるヒスタミンも多く含まれています。
仮性アレルゲンとは、ヒスタミンなどの化学物質が直接的に体へ作用してアレルギーのような反応を起こすことです。仮性アレルゲンでは、じんましん、口や体のかゆみなどが現れることが多いと言われています。
食物アレルギーとは異なり、大量に食べたからといって必ず仮性アレルゲンが起こるのではありません。
食べる頻度や量、そのときの体調などに影響され、一時的に起こるという特徴があるのです。
そのため、いつもより体調が優れない場合などには、ほうれん草の食べすぎを避けるようにしましょう。
ほうれん草を安心して食べられる量やタイミングは?
上記のとおり、ほうれん草に含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、安心してほうれん草を楽しめる量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
まずは、日本人の食事摂取基準(2020年版)の数値を参考に見ていきましょう。
18~64歳における一日あたりの食物繊維の目標量は、男性で21g以上、女性で18g以上と設定されています。
ほうれんそう100gあたりに含まれている食物繊維は2.8gです。そのため、仮にほうれん草だけで男女平均のおよそ20gを満たす量を求めると、700gほどという計算に。
ただし、ほうれん草のみから食物繊維をとることは通常考えられないことに加え、それだけの量をとるとなるとほかの食品をバランスよく取り入れることができなくなってしまいます。そのため、これは現実的な量とはいえません。
ほかの食事からも食物繊維をとることを考慮するのであれば、ほうれん草を食べる量は多くても前述の数値の半分くらいが妥当なのではないでしょうか。
なお、野菜の適量については、国民の健康増進を目的として定められた「健康日本21(第2次)」の中で、成人の目標値は1日に350g以上がとされています。そのうち、緑黄色野菜は1/3を占めるのが望ましいとなっており、ほうれん草は緑黄色野菜に該当します。
このことから、安心して食べられるほうれん草の適量は120gほどと言うことができるのです。
なお、シュウ酸の摂取量の基準値については見当たりませんが、これくらいの量であれば適量の範囲と考えることができるでしょう。
ただし、すでに結石ができたことがある人の場合は、主治医の指示に従って食べる量を調整してくださいね。
どのタイミングで食べるのがいい?
ほうれん草を食べるおすすめのタイミングについて、栄養素の吸収の観点からはとくにありませんが、結石の予防を意識するのであれば就寝の数時間前などは避けるようにしましょう。
なぜならば、シュウ酸をとり入れて体外に排泄されるまでには時間がかかるため、それまでに就寝してしまうと尿の中にシュウ酸が長時間とどまってしまい結石がつくられやすくなるからです。
結石のリスクが高い人は、できれば日中に食べるようにすると安心ですね。
このほか、結石を避けるためには、一日を通して十分な水分摂取とこまめな尿の排泄も大切です。
ほうれん草と一緒にカルシウム(※)やクエン酸を含む食品をとることも予防に効果的とされているので、しらす干し、かつお節、乳製品、大豆製品、酸味のあるものなどを上手に組み合わせた食事をおすすめします。
正しい量を把握できていれば、ほうれん草はメリットが多い食品です。ほうれん草のメリット・デメリットを理解し、上手にとり入れていきましょう。
※……体内に吸収される前に食品中のカルシウムと結合させると、便と一緒に排泄されやすくなって尿中のシュウ酸を減らし結石予防に役立ちます。