「料理酒」がないときの代用レシピを検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】
2022/11/05
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「料理酒」の代用アイデア。
和風料理に使われることが多く、煮物、炒め物、蒸し物など、幅広い料理に活用される調味料です。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、料理酒の代用アイデアをレシピつきで紹介してもらいます。
「料理酒」の原材料は?
料理酒とは、2~3%ほどの食塩(海水に近い塩分濃度)が加えられた飲用ができない酒の一種で、調味料として扱われています。日本酒などの飲用の酒は、酒税法の対象となり10%課税対象となりますが、料理酒は課税対象外なので8%となっていて安価に購入することができます。
実際に、筆者の手元にあった料理酒の原材料を確認してみると、
・米、米こうじの醸造調味料
・たん白加水分解物
・食塩
・水あめ
・ぶどうの醸造調味料
が使われていました。
基本的には米、米こうじ、塩が使われていますが、商品によってはこのほかに甘味料、酸味料などを加え、料理の味を調えやすくしたものもあるのが一般的です。
「料理酒」の代用になる調味料は?
料理酒を料理に使うことによって、主に次のような酒由来の成分による作用が期待できます。
・食材の臭みを取り除き、味染みをよくする(アルコール)
・食材をやわらかくする(有機酸)
・甘味やコクを加える(糖分、アミノ酸など)
このことから、アルコールを含む酒を中心に、似たような成分を含む調味料を代用食材として使ってみることにしました。代用食材の候補はいくつもあるのですが、筆者の自宅にあったもので料理酒の代用となりそうな食材は、以下のとおりです。
・日本酒(純米酒)
・本みりん
・白ワイン
・ビール
・ウイスキー
・酒粕
・ホワイトリカー
・塩麹
これらを使用して、どれがいちばん料理酒としておすすめできるのかを検証してみました。
【検証1】「ささみ」を蒸して代用レシピを比較
ささみは、加熱によってかたくなったりパサつきやすい食材の一つです。
そのささみ30gにそれぞれの代用食材を加え、蒸したものを比較してみました。括弧内は、実際につくった際の分量となっています。
【A】日本酒+塩(3ml:0.1g)
【B】本みりん+塩(3ml:0.1g)
【C】白ワイン(3ml:0.1g)
【D】ビール+塩(3ml:0.1g)
【E】ウイスキー+塩(3ml:0.1g)
【F】酒粕+水+塩(2g:1ml:0.1g)
【G】ホワイトリカー+塩(3ml:0.1g)
【H】塩麹+水(0.3g:3ml)
比較する料理酒の食塩相当量に近くなるよう、必要に応じて塩を加えたり、扱いやすいように水を加えています。
画像のいちばん左が「料理酒」、上段左から順に【A】【B】【C】【D】、下段左から順に【E】【F】【G】【H】を使用して蒸したささみを並べてみました。
見た目に違いはありませんが、食べ比べてみると食感の違いを感じました。それぞれの代用料理酒について、感じたことを箇条書きで紹介します。
【A】ふんわりとした歯応えで、しっとり感がある
【B】甘味を感じるが、しっとり感がある
【C】ややふんわり感が少ない
【D】ややふんわり感が少なく、ビールの香りやわずかな苦みを感じる
【E】ふんわり感が少ない
【F】滑らかな食感で、一番しっとり感がある
【G】ややふんわり感が少ない
【H】ふんわりとした歯応えで、しっとり感がある
やわらかさがあるものはふんわりと感じ、そうでないものはややかたさのある歯応えを感じたことを表しています。また、しっとり感があるほどパサつきを感じにくいということと捉えてください。
この結果からは、ささみを蒸す場合、いちばんが【F】、次に【A】【H】がおすすめということができます。
【検証2】「白身魚」を焼いて代用レシピを比較
脂身の少ない白身魚も、ささみ同様に加熱するとかたくなったりパサつきやすい食材です。
今度はその白身魚25gにさきほどの代用食材をそれぞれ加え、焼いたものを比較してみました。
画像のいちばん左が「料理酒」、上段左から順に【A】【B】【C】【D】、下段左から順に【E】【F】【G】【H】を使用して焼いた白身魚を並べてみました。
こちらも見た目に大きな違いはありませんが、食べ比べてみると食感の違いを感じました。それぞれの代用料理酒について、感じたことを箇条書きで紹介します。
【A】ふんわりとした歯応えで、しっとり感がある
【B】甘味を感じるが、照り焼きのようで違和感は少ない
【C】ふんわりとした歯応えで、しっとり感がある
【D】ふんわりとした歯応えである
【E】ふんわりとした歯応えである
【F】ふんわりとした歯応えで、しっとり感もあり、うま味が強い
【G】ふんわりとした歯応えである
【H】ふんわりとした歯応えで、しっとり感がある
やわらかさがあるものはふんわりとした歯応えであると表現しています。また、しっとり感があるほどパサつきを感じにくいということと捉えてください。
この結果からは、白身魚を焼く場合、いちばんが【F】、次に【A】【C】【H】がおすすめということができます。
【検証3】「さつまいも」を煮て代用レシピを比較
料理酒の使い方として、煮物の味染みをよくするために料理に使われることがあります。
今度はさつまいも15gにさきほどの代用食材をそれぞれ加え、煮たものを比較してみました。
画像のいちばん左が「料理酒」、上段左から順に【A】【B】【C】【D】、下段左から順に【E】【F】【G】【H】を使用して煮たさつまいもを並べてみました。
こちらも見た目に違いはありません(切った断面によって着色があることを除く)が、食べ比べてみると味の違いを感じました。それぞれの代用料理酒について、感じたことを箇条書きで紹介します。
【A】一番ホクホクとした歯応えである
【B】甘味を感じる
【C】なんとも言えない
【D】わずかに苦みを感じる
【E】わずかに苦みを感じる
【F】独特の香りがある
【G】なんとも言えない
【H】なんとも言えない
いずれもやわらかく仕上がりましたが、味と香りに違いが見られました。なお、なんとも言えないと表現したものについては、ほかと比べて特においしいと感じる要素が少なかったことを表しています。
今回はやや甘味のある食材であるさつまいもを使ったことから、【B】がいちばんおいしく仕上がったと言えます。反対に、甘味を感じにくくさせる【D】【E】はおすすめできないことになります。
【検証結果】決め手は、「やわらかさ」「しっとり感」「香り」!
3つの検証結果をまとめると上の表のようになります。代用料理酒は、料理や食材ごとに合うものが異なることがわかります。
この違いは、調理中の水分の蒸発量や香り成分の揮発具合が大きく関係していることが考えられます。そのため、水分量をできるだけ保ったまま仕上げる「蒸し物」や「煮物」については、独特の香りが少ないものを選ぶと代用料理酒として使いやすそうです。
ただ、【F】酒粕には独特の香りがあるにもかかわらず、蒸し物でおいしいと判断されています。この点については、酒粕にふっくらしっとりと仕上げる成分が多かったことが大きく関わっていたと考えられます。また、くさみ消しとしての効果もあり、総合的なおいしさに繋がった可能性があります。
白身魚の焼き物も高評価だったことから万能かと思われましたが、さつまいものような食材に合わせると香りの違和感が強くなってしまうため、使い方は肉や魚などに限定した方がよいかもしれません。
その点、【A】日本酒については、「蒸し物」「焼き物」においてどちらも高評価であり、「煮物」もおしく仕上げることができ、料理酒に期待できるのと同等の作用が得られることがわかりました。
なお、【H】塩麹についてはアルコールや有機酸は含みませんが、原材料である麹菌がつくりだす酵素によって同じ作用を得ることができたと考えられます。
ただし、肉や魚などのたんぱく質に対して酵素は働きやすかったのですが、今回のさつまいもにはあまり作用しなかったようです……(加熱前にある程度、漬け込む時間をつくれば結果が違ったかもしれません)。
このようなことから結論づけると、代用料理酒としては料理酒の原材料でもある米、米こうじでつくられた【A】日本酒が一番使いやすい、と言うことができます。
代用料理酒の楽しみ方は?
代用料理酒のメリットとしては、添加物を減らした料理をつくりやすくなることです。
料理酒は安価なものほど、添加物が加えられており、原材料をこだわって選ぶと高価になってしまうことが考えられます。
また、あまり料理酒を使う機会が少ない人であれば、自宅にストックしてある酒や調味料で代用することができるので、急に料理酒が必要になった場合などに知っておくことで役立つのではないでしょうか。
一般的に和食料理で使われることの多い料理酒ですが、あっさりと仕上げたい洋風料理にも使うことができます。ワインやブランデーのような香りはありませんが、コクやうま味を料理に加えるのに役立つでしょう。
ただし、料理酒に塩分が含まれていることはお忘れなく。ほかの酒の代用として料理酒を使う場合は、味付けに使う調味料を少し減らして最後に味見をして調えるようにすることをおすすめします。
なお、今回の代用レシピの検証では優劣をつけましたが、使用する代用食材の割合や火加減を変えることで結果が異なる可能性もあります(実際に、白身魚の焼きは再度試し、結果が異なっていました)。そのため、△がついている結果であっても試してみる価値はありますので、そのときにある手持ちの酒や調味料も活用してみることをおすすめします。
ぜひ、料理のおいしさアップに役立つ代用料理酒を活用してみてくださいね!