本格的な暑さがやってくる前に、服やインテリアなどの衣替えをする人は多いと思いますが、じつはキッチンでの野菜のあつかいも、気温の上昇とともに夏仕様にかえる必要があります。とはいえ、これまで常温保存していたものをなんでもかんでも冷蔵庫に入れるわけではなく、野菜を適した温度で保存するためには、ポイントがあるようです。
今回は、野菜ソムリエ・食育インストラクター・気象予報士として活躍する植松愛実さんに、本格的な暑さの前にぜひやっておきたい冷蔵庫の「衣替え」について解説してもらいます!

常温→野菜室に移動する野菜は?
気温が低い時期は、さまざまな野菜を常温で保存しているという人が多いのではないでしょうか。常温保存が定番の玉ねぎやじゃがいもだけでなく、ナスやピーマンといった冷蔵しなくても日持ちする野菜を風とおしのよい場所に置いている家庭もありますよね。
しかし多くの野菜は、春を終えて初夏をむかえる頃には、常温保存では傷みやすくなってしまいます。ナスやピーマンは冷蔵庫の野菜室へ。また、追熟の必要がないトマト(すでに真っ赤になっているトマト)も常温ではなく野菜室で保存しましょう。
なお、玉ねぎやじゃがいもは真夏以外は常温で大丈夫ですが、心配であれば玉ねぎだけ早めに野菜室へ移動しましょう。
チルド室も活用しよう
チルド室というと、冷蔵室のなかでもとくに温度が低く、0℃に近い冷たさを保つ場所。おもに肉や魚を入れているという人が多いかもしれませんが、じつは野菜の保存にも使えます。
たとえば、もやしは基本的にチルド室がおすすめ。もやしは水分が多く、日持ちがしにくい野菜なので、できるだけ低い温度で保存したほうが傷みにくくなります。
そのほかカット野菜も、とくに夏場はチルド室がおすすめです。カットされた状態で買った野菜や、忙しいときにそなえて自分でみじん切りや千切りにしておいた野菜なども、チルド室に入れておきましょう。
なお、野菜をチルド室に入れる際、冷蔵庫の設定によっては凍ってしまうことがあります。ふだんチルド室に入れている肉や魚が凍った経験のある人は、野菜をチルド室にしまうとき、あまり奥のほうに入れないようにしましょう。
真夏でも冷やしすぎてはいけない野菜も
暑くなるにつれてこれまでよりも低温で保存したほうがよい野菜が多くなる一方で、たとえ真夏になっても冷やしすぎてはいけない野菜もあります。ナスやピーマン、トマト、オクラ、きゅうりなどは「低温障害」といって、低すぎる気温で保存すると逆に傷んでしまうのです。
こういった野菜は、暑さが本格化しても野菜室のままで、冷蔵室に移動するのは避けましょう。もちろん、全体的に保存できる期間は春までより短くなってしまうので、早めに使いきるよう気をつけるのがおすすめ。
また、熟していない状態で買ったトマトやアボカドを追熟させる際も、たとえ野菜室であっても冷蔵庫に入れてしまうと追熟が進まないため、常温で置いておきましょう。ただ春までよりも短い日数で追熟することが多くなるので、こまめに様子を見てくださいね。
冷凍もうまく組み合わせて
これまで常温や野菜室で保存していたものを冷蔵室に入れるようになると、だんだん冷蔵室が渋滞してきますよね。じつは野菜の多くは冷凍保存もできるので、冷蔵室に入りきらない場合は冷凍もうまく組み合わせて保存しましょう。
ちなみに、暑くなってくるとアイスを買うようになるなど冷凍室もいっぱいになる…という悩みもあると思いますが、冷凍室は「ちょうど満杯」なら問題ありません。というのも、冷蔵室に入れる食品は容量の7割くらいまでにとどめたほうがよいのですが、冷凍庫はすきまがありすぎると逆に冷却効率が悪いので、「ちょうど満杯」が理想的なのです。
もちろん、満杯を超えて食品がはみ出すほど入れてしまうと冷えにくくなるため、気をつけましょう。
冷蔵庫も忘れずに「衣替え」しよう!
毎年暑くなるのにあわせて洋服を入れ替えたり、暖房器具を片づけて扇風機を出したりと、さまざまな「衣替え」をすると思いますが、冷蔵庫の「衣替え」もぜひ忘れずにやっておきましょう。野菜の日持ちがぐんと変わってきますし、見た目や栄養も含め品質を保ちやすくなりますよ!
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。
編集/サンキュ!編集部