【旬食材】春のにんじんは何が違う?栄養を逃さず食べる3つのコツを野菜ソムリエが解説
2024/04/10
にんじんの本来の旬は秋~初冬ですが、現在では春に収穫期が来るように工夫されたものが出回っています。
「春にんじん」と呼ばれ、徳島県や千葉県など温暖な地域を中心に生産されていて3月~5月にかけて全国に出荷されますが、通常のにんじんと圧倒的に違ううれしい特徴があるのをご存じでしょうか。
また、食べるときにも、「春にんじん」ならではのコツがあるのです。
今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんが、「春にんじん」の栄養をおいしく最大限いただくための3つのコツを解説します。
かつてはむずかしかった「春にんじん」
秋冬に旬を迎えるにんじんは、春に種をまいて半年かけて育てたもの。
それなら、秋に種まきをすれば半年後の春に収穫できるのでは?と思われるかもしれませんが、そう簡単にはいかないのです。
というのも、秋に種をまくと冬に成長期を迎えることになりますが、寒い時期にしっかり成長できるようなにんじんは芯の部分が固くなりすぎて、おいしくないのです。
そのため、かつては春に出荷されるにんじんは春に収穫されたものではなく、秋冬に収穫されて春まで貯蔵されたものでした。
そこで、「トンネルハウス」と言って農業用ハウスのミニチュアみたいな低いトンネルをつくってにんじんを雨や低温から守ったり、温度や水分をこまめに調整したりして、工夫を重ねて誕生したのが「春にんじん」。
こういった技術と工夫、手間によって、秋冬のにんじんにはない甘さとやわらかさ、そしてみずみすしさを持った「春にんじん」を私たちは食べることができるのです。
【コツ1】生で食べよう!
春にんじんの特徴は、とにかく甘くてやわらかいこと。
とても食べやすいので、ふだんは「生のにんじんはちょっと…」という人でも、ぜひ生で食べてみてください。
ジュースやにんじんスティックもおいしいですし、通常はゆでてからナムルやゴマ和えにするのをスライサーで千切りにして生のまま和えるのもおすすめです。
ゆでる際に失われやすいビタミンCなどの栄養素も、生なら逃さず食べることができます。
【コツ2】皮ごと食べよう!
にんじんの栄養素としてよく知られているのがβカロテンですが、βカロテンはにんじんの皮の近くに多く含まれています。
そのため、皮ごと食べることで存分に栄養をとれるのです。
βカロテンは人の体のなかでビタミンAに変わり、ビタミンAは美肌にかかせない栄養素であるだけでなく、粘膜を守ってくれるはたらきもあり、ぜひしっかり取っておきたい栄養素です。
ちなみに、多くの人がにんじんの「皮」だと思っている部分はじつは正確には皮ではなく、本当の皮は収穫後に洗浄される際に剥がれてしまっているので、私たちが目にしているのは言わば"薄皮"のような部分だけ。
そのまま食べても、消化が極端に悪くなることはありません。
通常のにんじんだと丸ごと調理することで食感が悪くなるのが気になる人も多いと思いますが、みずみずしい春にんじんなら比較的食べやすいので、とくにおすすめです。
【コツ3】油と食べよう!
βカロテンは油といっしょにとることで吸収がよくなることが知られています。
そのため、油を使った調理法がおすすめ。
生のまま和える調理なら、ゴマ油やオリーブオイル、マヨネーズなどを使ったナムルやマリネ、ラぺ、味噌マヨ和えなど。
和風でも洋風でもおいしく食べることができます。
また、皮ごとスティック状に切って、表面を油でカリッと焼く"焼きにんじん"も、春にんじんならではの甘さを存分に味わえます。
ちなみに秋冬のにんじんに比べて煮くずれしやすいので、煮るより焼く料理のほうがおすすめです。
甘くてみずみずしい旬の味を楽しもう
1年のなかでも数カ月しか出回らない、春にんじん。
春ならではの甘くてみずみずしい味わいで、にんじん嫌いな家族をにんじん好きにするチャンスです。
なお、春にんじんは水分量が多いため、通常のにんじんほど長く持ちません。
そのため、買ってから早めに使い切るか、使い切れない場合は千切りやいちょう切りにして冷凍するのがおすすめ。
また、もともとにんじんの表面は乾燥に弱いので、短期間だけ冷蔵で保存する場合も、余裕があったらキッチンペーパーにくるんでポリ袋に入れるなどして乾燥対策をしましょう。
■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。
編集/サンキュ!編集部
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