「お手数をおかけしますが」を正しく使えている?意味や使い方、英語での表現方法を解説
2022/06/16
「お手数をおかけしますが」は、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。明鏡国語辞典によると、相手に協力を依頼するときや、それに感謝するときに労いの気持ちでいう言葉とのこと。
意味を意識せずメールの結びに、「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」と、書いている方が多いのではないでしょうか?しかし、文法的に正しいのか、また英語にしたときに何と表現したらよいのかと、悩んだ経験がある方もいるかもしれません。
そこで、何気なく使っている「お手数をおかけしますが」の意味や使い方、英語での表現方法を詳しく解説します。
「お手数をおかけしますが」の意味や使い方
「お手数をおかけしますが」の意味を、「お手数」と「おかけします」に分けて調べてみました。また、英文メールでの表現方法も解説します。
「お手数」の意味
「お手数」とは、「手数」を丁寧に表現するための「お」をつけた言葉です。「手数」には「てかず」と「てすう」という2通りの読み方があり、広辞苑によると以下の3つの意味を持ちます。
1)それに施すべき手段の数
2)その物事または他人のために特に力を尽くすこと。骨折り。めんどう。
3)ボクシングで、パンチを繰り返す回数。
「お手数」とは、2)の「骨折り」や「めんどう」のことを指します。
「おかけします」の意味
「おかけします」は、「おかけする」を丁寧語にした文章です。「お~する」は、謙譲語の典型的な形。謙譲語とは、自分の立場や言動をへりくだることで、相手に敬意を示すときに使う言葉です。
つまり、「かける」の謙譲語「おかけする」を、より丁寧にすると「おかけします」になります。
「お手数をおかけしますが」の使い方
「お手数をおかけする」とは、「自分が(相手に対して)面倒をかける」という意味です。つまり、「お手数をおかけしますが」の後ろには「よろしくお願いします」や具体的な要件を続けて、相手に面倒なことをお願いするときに使います。
ビジネスシーンでよく使われる言葉ですが、PTAや町内会などの活動でも「お手数をおかけしますが」は枕詞のように使われます。
「面倒なことをさせて申し訳ないけれどお願いします」といったニュアンスを含む、相手とのコミュニケーションを円滑にする役割がある言葉です。
「お手数をおかけしますが」を英語で言うと?
無意識のうちに使うことの多い「お手数をおかけしますが」ですが、英語でメールを打つときなどに該当する英語の表現が思い浮かばないという方も多いはずです。
英語では「I’m sorry to inconvenience you, but…」という言葉を使います。「inconvenience」とは、「不便を感じさせる」や「迷惑をかける」という意味を持つ英単語です。ほかにも、「苦しむ」や「面倒」という意味の「trouble」という単語を使って、「I’m sorry to trouble you, but…」という表現も使えます。
例文をご紹介します。
I’m sorry to inconvenience, but I’m looking forward to your reply.
(お手数をおかけしますが、ご返信をお待ちしております。)
I’m sorry to trouble you, but I would appreciate it if you could confirm.
(お手数をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。)
「お手数をおかけしますが」の後に続く言葉と例文
「お手数をおかけしますが」を単独で使うことはなく、後ろに必ず何らかの言葉が続きます。後ろに続く言葉の代表例をご紹介します。
「よろしくお願いします」
さまざまな場面で使えるのは、「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」という文章です。「よろしくお願いします」の前に「何卒(なにとぞ)」や「どうぞ」などを付けるといった、多少のバリエーションもあります。
メールの結びや電話の締めの言葉として、よく使われます。
たとえば、会議の日程変更を知らせるメールを入れるときは、以下のような例文が挙げられます。
「△△についての会議には、あらかじめ資料を作成しておいていただけますでしょうか。お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「申し訳ございません」
「お手数をおかけします」に続く文章として「申し訳ございません」も挙げられます。しかし、「申し訳ございません」は「お手数をおかけしまして」に続く文章です。「お手数をおかけしますが」とは繋がらないので、注意しましょう。
「お手数をおかけしまして申し訳ございませんが、よろしくお願いします」のように、「申し訳ございませんが」をつけることで、「お手数をおかけしますが」と同じ使い方をすることもあります。
具体的な依頼内容を伝える場合も
「お手数をおかけしますが」のあとに、具体的な依頼内容を続けることもあります。
たとえば、「お手数をおかけしますが、先日お送りしたメールをご確認ください」や「お手数をおかけしますが、〇〇のダウンロードをお願いします」などと使います。
「お手数をおかけしますが」をほかの言葉に言い換えると?
「お手数をおかけしますが」は、ほかの言葉に言い換えることもできます。メールや文書のなかで何度も「お手数をおかけしますが」が登場して、しつこい印象になるときは、違う言葉に言い換えてみましょう。
「お忙しいところ恐縮ですが」
「お忙しいところ恐縮ですが」は「お手数をおかけしますが」の代わりに使える言葉です。「恐縮」とは、相手にかけた迷惑や相手の厚意に対して申し訳なく思うこと。つまり、「お忙しいところ恐縮ですが」は、忙しい相手に迷惑をかけて申し訳ない気持ちを表しています。
「お手間をとらせてしまいますが」
「お手間をとらせてしまいますが」も「お手数をおかけしますが」と同じ意味を持つ言葉です。「手間」とは、仕事をするのにかかる労力や時間のこと。つまり、「相手に対して時間や労力をかけてしまう」ことを予め断る言い方です。
「ご面倒をおかけしますが」
「ご面倒をおかけしますが」も「お手数をおかけしますが」の代わりに使える言葉です。「手数」と「面倒」にはわずらわしいことという意味があり、「お手数」を「ご面倒」に言い換えて使っています。
「お手数をおかけしますが」を使うときに注意したい5つのポイント
「お手数をおかけしますが」を使うときに注意したいポイントを5つご紹介します。
自分の行動には使わない
「お手数をおかけしますが」は、相手に対して労力をかけさせることを申し訳なく思う気持ちを伝える言葉です。このため、自分の行動に対しては使いません。
「お手数をおかけしますが、メールを再送いたします」などと、自分の行動に使うと、横柄な印象を与えてしまいます。
敬語の二重表現ではない
「お手数をおかけしますが」には「お」が2つ入っていることから、二重敬語の表現だと思う方はいませんか?二重敬語は間違いなので、「手数をおかけします」や「お手数をかけます」のように、「お」を1つだけにするための工夫をする方もいるでしょう。
しかし、「お手数をおかけしますが」は二重の敬語表現ではありません。「お手数」は「手数」を丁寧にした言葉。「おかけする」は「かける」を謙譲語にした表現です。文法的な誤りはありませんので、安心して使いましょう。
メールや文書で気をつけること
「お手数をおかけしますが」は、口語では「お手数おかけしますが」というように「を」が抜けて聞こえることがあります。これは、「を」の次の「お」が同じ音なので、省略しても意味がわかるからです。
しかし、正しい文章は「お手数をおかけしますが」です。メールや文書で使うときは、助詞の「を」をつけた「お手数をおかけしますが」のほうが適しています。
友人や家族などに軽く依頼するときには使わない
「お手数をおかけしますが」は謙譲語を使った、かなりかしこまった表現です。このため、友人や家族など親しい間柄の方に軽く依頼するときにはあまり適していません。親しい方に使うと他人行儀な印象を与えてしまうので、使わないほうが無難でしょう。
「お手数をおかけしますが」に返信するときは?
相手からメールや文書で「お手数をおかけしますが」と言われたときに、どのように返信したらよいのでしょうか?
「お手数をおかけしますが」のあとに「よろしくお願いします」とあれば、相手が強く言いたいのは「よろしくお願いします」のほうなので、「かしこまりました」と返せばよいでしょう。
電話や対面など口語で「お手数をおかけしますが」と、言われたときは、「構いません」や「とんでもございません」と答えます。その後に「お気になさらないでください」と続けると、より丁寧な返事になるでしょう。
まとめ
ビジネスシーンでよく使う「お手数をおかけしますが」の意味や使い方を解説しました。
「お手数をおかけしますが」は、「手数」を丁寧にした言葉と「かける」の謙譲語を組み合わせた文章です。相手に対して、協力してくれることへの感謝や労いの気持ちを表しています。
何気なく「お手数をおかけしますが」を使っている方は多いと思いますが、いざ英文メールを作成するときに、どのように英訳したらよいのかわからないということもあるでしょう。英語での表現方法や言い換え方なども紹介していますので、「お手数をおかけしますが」の使い方に迷ったときは、ぜひこちらの記事を参考にしてください。