冬至が1番寒いわけじゃない!寒さに"タイムラグ"が生じるワケと備えるべき時期を気象予報士が解説
2023/12/10
師走に入り、空気の感じもスーパーの品揃えも一気に冬らしくなってきました。
毎年12月下旬には1年でもっとも昼が短い冬至を迎えますが、じつは冬至は「1年で1番寒い日」ではありません。
どうして寒さのピークは冬至とズレるのか?1番寒い日はいつやってくるのか…?
気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、誰かに教えたくなる豆知識を解説してもらいます。
太陽からもらうエネルギーが1番少ない日
冬至(2023年は12月22日)は、昼の時間が1年でもっとも短くなる日です。
昼、つまり太陽の出ている時間が短くなるわけですから、もちろん寒いことに違いはありませんが、とはいえ1年でもっとも寒いわけではありません。
冬至を過ぎれば少しずつ日が長くなっていきますが、それでも暖かくなることはなく、引き続きどんどん寒くなるのです。
暖まりにくく冷えにくい空気
空気は、暖めたり冷やしたりするのに時間がかかります。
室内の空気の温度を変えようとするだけでもエアコンをつけてから実際に温度が変わるまでしばらくかかるわけですから、室内よりも格段に広い空間である大気全体の温度が変わるにはかなりの時間を要するわけです。
そのため、たしかに冬至はもっとも太陽の出る時間が短く、また太陽高度も低くて太陽のエネルギーが届きにくい日ではありますが、もっとも冷える日は冬至よりもずっとあとにやって来るのです。
もっと暖まりにくく冷えにくいものは…?
じつは日本が海に囲まれているために、1番寒い日が来るまでの時間差はさらに拡大します。
というのも、空気より水はもっと暖まりにくく冷えにくいからです。
季節の進みとともに空気が冷えやすい状況になっても、海の水はなかなか冷えず、まるで保温剤のように空気が冷えるのを遅らせます。
その結果、ちゃんと空気が冷たくなるまで1〜2カ月ほどのタイムラグが生じるのです。
12月下旬の冬至を迎えたあと、1番寒くなるのは年明け1月下旬から2月上旬にかけて。
そして1番暑くなるのは6月下旬の夏至を過ぎたあとの7月下旬から8月上旬にかけてです。
「冬至冬中冬始め」…今のうちに備えを!
冬至に関する古い言い回しに、「冬至冬中冬始め」があります。
冬至は立冬(11月上旬)と立春(2月上旬)のちょうど間ぐらいなので「冬中(ふゆなか)」だけれども、寒さはまだまだこれから本格化するので「冬始め」でもある、という意味です。
昔の人も、原理はわからないながらも「冬至を過ぎて日が長くなり始めても油断できないぞ」という注意喚起、あるいは自戒も込めてこんな言葉を残したのかもしれませんね。
このさきさらに寒さが厳しくなる時期は、同時に雪の量が全国的に多くなる時期でもあります。
いま一度防寒具のメンテナンスをしたり、路面凍結の対策を確認したり、あるいは家族の健康維持のためにできることを整理し直したりと、1年で1番寒い季節に備えましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。Instagramは「@megumi_kitchen_and_atelier」。
編集/サンキュ!編集部