「冬将軍」はもともと「冬」の将軍ではない!?注意すべき時期と対策のコツを気象予報士が解説!
2024/01/07
毎年冬になると、ニュースや天気予報で「冬将軍」という言葉をよく聞くようになります。
ロシアのシベリア地方から押し寄せる強い寒気の代名詞として使われ日本人になじみ深い言葉ですが、もともとは英語だった言葉です。「冬将軍」はいかにして誕生したのか?そして「冬将軍」にとくに注意が必要な時期は?
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、誰かに教えたくなる「冬将軍」の豆知識を解説してもらいます。
「冬」じゃなくて「霜」だった!?
「冬将軍」という言葉の起源は、今から200年ほど前までさかのぼります。
フランスの皇帝ナポレオンがその類まれなる才覚を発揮して周辺諸国を攻め落とし、次々と従えさせていた時代です。
フランス領土を一気に拡大させたナポレオンはついにロシアに遠征しますが、ここで思わぬ敵に出くわします。
ロシアの「厳しい冬」です。
もともとロシア攻略は難航しており退却が予定されていましたが、その年のロシアでは例年よりも冬の訪れが早く、ナポレオン軍は撤退を完了するまでの間に雪や寒さによって多くの兵を失う結果となりました。
この痛手はのちのちまで尾を引き、最終的にはナポレオン失脚の一因にもなったため、このことを書いたイギリスの新聞が「General Frost」というフレーズを使ったのです。
なぜ日本語で「冬」将軍?
イギリス紙に載った「General Frost」という表現。日本語に直訳すると、generalは「将軍」、frostは「霜」になります。
そうなると、「冬将軍」ではなく「霜将軍」では?と思ってしまいますが…、じつは英語のfrostは意外と奥深い単語。
「霜」以外にも、「強い寒気」や「厳寒」、「氷点下の気温」といった、さまざまな意味があるのです。
そのため、このフレーズが日本に入ってきたとき、frostの持つ複数の意味からくるイメージを総合的に表現しようと、「冬将軍」と訳されたのだと考えられます。
現代に生きる私たちにとっても「冬将軍」は冬に押し寄せてくる強烈な寒波のイメージにぴったりで、昔の人の言葉のセンスには脱帽です。
「冬将軍」に要注意な時期は?
「冬将軍」が日本に襲来しやすい時期、つまり日本が寒波の影響を受けやすい時期は、おもに12月下旬から2月上旬にかけてです。
「クリスマス寒波」や「年末寒波」といったフレーズをニュースで聞く年は多いと思いますし、年が明けて1月には成人式や大学入試共通テストなどが寒波の影響を受けた記憶のある人も多いのでは。
さらには「立春寒波」が報道される年もあり、まさに12月下旬から2月上旬という時期にあてはまっています。
もちろん年によって多少タイミングはズレるため、ぴったり「クリスマス」や「立春」に当たるとは限らないものの、寒波すなわち「冬将軍」がやって来やすい期間であることに変わりはありません。
じつは3日前からわかる!意外と備えやすい「冬将軍」
現代の天気予報では、強い寒波がやって来そうな場合、おおむね3日前までには予測ができるようになっています。
そのため、気象庁から寒波に関する情報が出され、それを受けてテレビや新聞、ネットのニュースなどで前もって情報が流れるのです。
つまり、「冬将軍」にはかなり早い段階から備えることが可能。
もし前日まで何もせず放置してしまい、土壇場で慌ててホームセンターに雪関連のグッズを買いに行く場合、売り切れてしまっていることも…。
日ごろから情報が手に入るようにしておいて、「寒波のおそれ」という報道を見たら、おうちの雪対策グッズや凍結対策グッズなどの在庫を確認して、早めに買い物に行きましょう。
情報さえ手に入れば、「冬将軍」は意外と対処しやすい敵なのです。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部