「津波」とふつうの波はどう違う?知っておきたい防災ポイントを気象予報士が解説
2024/01/31
津波はおそろしい、というのはほとんどの日本人にとっての共通認識かと思いますが、そういえばふつうの波と津波は、いったい何が違うのでしょうか。
2024年は元日の能登半島地震によって津波被害が発生し、また3月11日には東日本大震災から13年を迎えます。
今回は気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、今知っておきたい津波の重要知識を解説してもらいます。
海水「全体」が動くかどうか
通常の波というのは風に吹かれて発生するため、海面と空気との境界に近いところにある海水だけが動きます。
一方で津波は海底にある地面が揺れたり変形したりして発生するので、下から海水が動かされる、つまり海水全体が動くことになります。
これが、ふつうの波と津波の決定的な違いです。
動く海水の質量がケタ違いになるので、当然ながら物を押し流すエネルギー量もケタ違いになります。
津波は「水」だけじゃない
ふつうの波が海岸に押し寄せてくるとき、その中身は「水」です。
そんなの当たり前だろう、と思われるかもしれませんが、津波の場合、やって来るのが「水」だけじゃないのです。
前述のとおり津波にはかなりのエネルギーがあるため、通過する場所の土を削り取りながら進んでいきます。
海底の土も上陸したあとの陸地の土も削って取り込んでいくため、2011年3月の東日本大震災の際には「黒い津波を見た」という人もいたほどです。
さらには破壊された家屋や車、そしてがれきなども取り込んで、ただの「水」とはほど遠い状態で襲ってくるのです。
低そうに思える津波でも警戒を
地震後のニュースなどでは、「到達した津波の高さは1m20cmです」といった表現を目にします。
1m程度であれば大人の身長より低いし、たいしたことない…と思うかもしれません。
しかし前述のように、津波はエネルギー量が大きいために人や物を押し流す力が格段に大きいですし、しかもただの「水」ではなく、大量の土砂やがれきなどを含んだ重たい壁のような状態で進んできます。
たとえ低そうに思える津波でも、建築物が完全に破壊されたり、命にかかわる大けがをしたり、大人でも足を取られて動けなくなりそのまま溺死してしまうことすらあるのです。
現在の気象庁のしくみでは、1mを超える津波が予想される場合には「津波警報」を発表することになっていますので、警報が出たらすみやかに海から離れて高台に向かうことが重要です。
身近な場所の「高さ」をチェック!
単純に「高台に逃げる」と言っても、近所の小学校や公民館が自宅よりも低い標高なら、自宅に留まったほうがいいですよね。
また、たとえ小学校のほうが自宅よりも高い場所にあったとしても、小学校へ向かう道が自宅より低いのであれば、移動すること自体が危険です。
そのため、いざというときに迷わなくていいよう、あらかじめ自宅や職場と、周辺の公共施設、そしてそこに行くまでの道の高低を調べておきましょう。
国土地理院が公表している地理院地図をインターネットや図書館で利用することもできますし、道に関しては実際に歩いてみると「ここ意外と下り坂になってる!」と気づくことができます。
いざというときに慌てないよう、食料や電池などの物理的な備蓄品だけでなく「情報」も備えておくことが重要です。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部