竜巻シーズンに備えて確認したい!竜巻のナゼ・ナニと対処法を気象予報士が解説
2023/08/07
毎年20件ほど発生し、各地で被害をもたらす竜巻。じつは竜巻の発生ピークは9月で、次いで10月、8月の順に多く、夏から秋にかけての時期に集中しています。
初めて竜巻に遭遇したとき、どうすればいいのか?
竜巻に関する素朴な疑問とともに、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに教えてもらいます。
そもそも竜巻ってナニ?
竜巻とは、狭い範囲で発生する“激しい空気の渦巻”です。
非常に発達した積乱雲があると、その雲の下ではかなり強い上昇気流が起きているのですが、その上昇気流に何らかの理由で回転が加わると、竜巻の発生につながります。
「何らかの理由」というのはさまざまで、たとえば寒冷前線などの前線が近くにあると、空気の流れが変わって回転が加わることがあります。あるいは、台風が原因で空気に回転がかかることもあります。
日本で発生する竜巻は年間20件ほど(海の上で発生したものを除く)で、被害としては建物の損壊が多いものの、人が亡くなった事例も複数あります。
ナゼ竜巻は9月に多いの?
先述のように、竜巻が発生するには非常に発達した積乱雲がまずあって、さらにそこに回転がかかる必要があります。
たとえば非常に発達した積乱雲は、上空に寒気が入ることで大気の状態が不安定になってできることが多く、また空気の回転は前線が接近したときに生じやすくなります。
こういった現象はおもに夏を中心とした時期に多くなります。
一方で、これらに次ぐ原因となるのが台風で、台風は8月から9月に接近・上陸のピークを迎えます。
その結果、竜巻の発生は例年9月にもっとも多くなるのです。
竜巻の発生を事前に教えてくれる情報がある!?
現代の科学でも「このあと〇時〇分に△県×市で竜巻が発生する!」といったピンポイントの予報はできません。しかし、「竜巻が発生しそうだ」という気象状況を見分けることはできます。
そこで出される情報が、「竜巻注意情報」。
竜巻を発生させるような非常に発達した積乱雲の兆候を検知した地域に対して出されるもので、1時間以内に竜巻が発生する確率が高いことを意味する情報です。
テレビを見ていると画面上部に速報スーパーとして流れますし、気象・防災系のアプリをスマホに入れている場合は、ほとんどのアプリでプッシュ通知が来る仕様になっています。
竜巻注意情報は「○県○○地方」といったエリアごとに発表されるため、危険な場所をより具体的に知りたい場合は、気象庁ホームページの「雨雲の動き」というページで竜巻のアイコンをクリックすると確認できます。
竜巻から身を守るには
竜巻を目撃したり、「竜巻注意情報」が自分の地域に出たことをテレビやスマホで知ったときは、とにかく頑丈な建物に入ってそこから出ない、というのが一番重要です。
プレハブのような簡易な建物では丸ごと吹き飛ばされてしまいますし、車の中も安全ではありません。さらに、竜巻は車より速いスピードで移動することがあるので、徒歩はもちろん車で逃げることもできません。
頑丈な建物の中のできるだけ下のほうの階で、あれば窓にカーテンを閉めて、窓から離れた場所ですごすのがおすすめ。窓のそばにいて竜巻を見続けるのはとても危険なのでやめてください。
また、窓のない部屋や地下室がある場合は、より安全にすごすことができます。
もし外にいて、まわりの建物が中に入れない状態であれば、建物と建物のすき間に身を隠すのも有効。先述のように「竜巻注意情報」の有効期限は1時間ですから、(その後更新情報が出ない限りは)とにかく1時間だけやりすごすというイメージです。
ちなみに「竜巻注意情報」には空振りもあります。あるどころか、むしろ情報が出ても実際に竜巻が発生しないことの方が多いです。
ただ、「竜巻注意情報」が出るほどのときというのは、たいてい発達した積乱雲によって外は激しい雷雨になっていて、雨だけでなくひょうやあられといった氷の粒まで降ってきてケガをしてしまうこともあるので、結局のところ外に出ないほうが得策なのです。
情報と五感をしっかり活用しよう
竜巻そのものの予測がまだまだむずかしい一方で、竜巻が発生するおそれを事前に知るための情報は年々便利になっていて、しかも無料で手に入れることができます。
さらに、こういった情報とあわせて、自らの「五感」の活用も重要です。
空が急に暗くなったり、日光を通さないほど分厚く真っ黒な雲が近づいてきたり、あるいは雷の音が聞こえるなど、目や耳で手に入れられるヒントも逃さず活用しましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部