どうして秋はお月見するの?秋の夜長が楽しくなる豆知識を気象予報士が解説!
2023/09/26
毎年9月から10月にかけては、「十五夜」や「十三夜」と言って伝統的なお月見をする習慣があり、お月見にちなんだ商品の発売やイベントを楽しみにしている人も多いと思います。
でも、月は1年中見ることができるのに、なぜ「お月見と言えば秋」なのでしょうか?子どもに聞かれたら、ちゃんと答えられますか?
今回は、意外と知らないお月見の豆知識を、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに解説してもらいます!
1年でもっとも月が美しい「十五夜」
十五夜というのは旧暦の8月15日のこと。「中秋の名月」とも呼ばれ、平安時代から「1年で月がもっとも美しく見える」として親しまれてきました。
旧暦8月15日が今の暦で何月何日にあたるのかは毎年異なり、2023年の場合はは9月29日です。
さらに、十五夜の次に月が美しいとされる十三夜(旧暦9月13日)というのもあり、地域によっては十三夜のほうを重視する文化もあります。
もともと平安時代に貴族の間で十五夜や十三夜などのお月見の習慣があったところに、次第に庶民の間でも豊満な月のイメージと秋の豊穣のイメージが重なって月にお供え物をする風習が生まれ、江戸時代ごろには身分を問わずお月見の文化が身近になったと考えられています。
ただ、じつは秋にお月見をすることは、現代の科学に照らし合わせても非常に理にかなっているのです。
「秋にお月見」のワケ1:空気の乾燥
月の光は宇宙から地球の大気を通り抜けて私たちの目に届くわけですが、その間にどのくらい「邪魔なもの」があるかで見えやすさが変わってきます。
「邪魔なもの」の代表格が、通り抜けようとする光を減らしたり曲げてしまったりする、空気中の水蒸気。
つまり、水蒸気が少ない乾燥した時期ほど、月はくっきりきれいに見えるのです。
それなら、少し乾燥し始めた秋よりも、もっと乾燥している冬のほうがよいのでは?と思うかもしれません。
じつはお月見のしやすさには、空気の乾燥だけでなく「高さ」の要素も関わってくるのです。
「秋にお月見」のワケ2:満月の高さ
満月が夜空のどのあたりを通るのかは、季節によって違います。
じつは冬になると満月は空のかなり高いところを通過するようになるので、満月を見上げるにはちょっと首や肩が痛くなりがち。
その点、秋であればほどよい高さで、のんびり月を眺めるのにちょうどいいのです。
ちなみに太陽は夏のほうが高いので不思議に思う人もいるかもしれませんが、満月のときは月が地球をはさんで太陽と正反対の位置に来るので、満月の高さは夏に一番低く、冬に一番高くなります。
その間の春・秋にちょうどいい高さを通り、前述の通り空気の乾燥も重なって、秋がもっともお月見しやすい季節になるというわけです。
気軽にお月見を楽しもう
伝統的なお月見は十五夜(2023年は9月29日)や十三夜(同10月27日)に行われ、この両方の月を見ないと「片月見」といって縁起が悪いと伝わる地域もあれば、逆にもともと片方しかお月見をしない文化もあるなど、地域ごとに様々。
さらには、十日夜(旧暦10月10日、2023年は11月22日)にお月見をする文化まであって、日付を覚えようとするだけでも大変です。
ただ、自分の住む地域に特定の行事がないのであれば、あるいはあったとしても、お月見はいつでも気軽に楽しんでよいものではないでしょうか。
せっかく空気の状態や月の高度がお月見にちょうどいい具合になる秋。仕事や家族を迎えに行った帰り道に空を見上げてみたり、夜の家事が一段落したところでちょっと窓の外をのぞいてみたり。
ふとした瞬間に月を眺めて、癒されてみてはいかがでしょうか。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部