ビデオレターは遺言書代わりになる、ならない?相続トラブルを避けるためにやるべきことを専門家が徹底解説
2024/04/30
右も左もわからない相続。きょうだい間などで相続のトラブルを避けるにはどうすればいい?事前に準備しておけば◎。今から少しでもできることを、相続専門の税理士である桑田さんに教えていただきました!
<教えてくれた人>: 円満相続税理士法人 相続専門税理士 桑田悠子
祖父が亡くなったときに相続の大変さを痛感し、困っている人の役に立ちたいという思いから相続専門の税理士に。SN...
- 親が亡くなった後、さらに悲しい事態にならないために、事前の対策が大切!
- 家族が集まる場で、それとな~く話題に出そう
- 親が元気なうちに遺言書を作ってもらおう
- 親の財産と借金についてほんの~り確認しておこう
桑田さんが所属する円満相続税理士法人代表橘慶太さんのベストセラー書籍
親が亡くなった後、さらに悲しい事態にならないために、事前の対策が大切!
相続は何かとモメる上に、複雑な手続きがてんこ盛り!「トラブルを避け、損しないための対策は親の生前にしかできません。早めの準備が大切」(桑田さん・以下同)。今すぐできることから始めて、円満相続を目指そう♪
家族が集まる場で、それとな~く話題に出そう
相続は、そもそも親やきょうだい同士で納得できていれば、モメずにすむもの。
「親の生前に少しでも相続について話す機会を持ち、本人の意向や資産状況をそれとなく知っておくと、円満な相続の“地ならし”に。家族が集まる機会に、『きょうだいでモメるのは嫌だからさ~』など、向き合いやすい空気をつくってみて」。
●オススメ最初のひと言
「ねえ、この家、どうして欲しい?」
親が亡くなった後の話をするのは、気が引けるもの。「この家、いつか誰も住まなくなったらどうしたらいい?」など、親の意見を仰ぐように切り出すと、抵抗感も少ないはず。
親が元気なうちに遺言書を作ってもらおう
遺産トラブルを回避できる最強ツールは遺言書。
ただし、要件を満たさないと無効になったり、遺留分や相続税を考えないで作るとかえって争いにつながったりするので注意。「主な遺言の種類は“自筆証書遺言”と“公正証書遺言”。費用はかかるけれど、後者は確実なので◯」。家族で話し合って作れば、モメるリスクが減って理想的!
【注】親が認知症になると、相続に関する対策は基本的にできなくなる!
認知症になった後の意思能力がない状態などで行う遺言書作成は、無効になるリスクあり。「親の意思能力がなくなると、親名義の実家を売ったり、賃貸に出すことが原則できなくなるんです」。
【注】遺言があっても「遺留分」を侵害する遺産分配は後でモメる可能性が!
遺留分とは、最低限守られる遺産相続の権利のこと。「遺留分は、“法定相続分”の原則2分の1。仮に長女に100%財産を譲るという遺言書があっても、ほかの相続人は遺留分を主張できます。遺留分を侵害する遺言書はトラブルの元なので、配慮が必要です」。
●主に2種類あるよ!
【公式な遺言書】
・自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
自分で作成する遺言書。法務局で3900円の手数料で保管可能。お手頃だけど無効になるリスクがあるのが怖いところ。
・公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
公証役場で作成し、保管してもらう遺言書。公証人の先生に確認してもらえるため効力は高いが、数万円以上は必要(※手数料は財産額によって変動するので、財産が多い場合は10万円超のケースもあり)。
【無効な遺言書】
・口約束
・ビデオレターや録音
・日付がないもの
・自己流のメモ
上記のような遺言書は法的な効力がなくすべて無効。後でモメる原因になりやすいので気をつけよう!
親の財産と借金についてほんの~り確認しておこう
親に財産や借金のことは聞きにくいけれど、相続手続きに直結するので、なるべく把握しておきたいところ。
「いきなり聞くのが難しければ、まずは自分の口座や保険の一覧を作るのも手。『私もいつ何があるかわからないから書いておいたの』と見せれば、『自分もちゃんとやっておこう』と動いてくれる可能性大です」。
●亡くなった後に借金の有無を調べるには
下記のような信用情報登録機関に必要書類を提出し、手数料を支払うと、借入先が判明する可能性があります。
全国銀行協会(銀行系)
JICC(消費者金融系)
CIC(クレジット・信販会社系)
モメがちな不動産の扱いについて話し合っておこう
実家や畑などの不動産は誰が相続するのか、名義はどうなっているのかなど、できることから確認を。
「不動産は簡単に分けられないだけでなく、住まなくても固定資産税がかかったり、建物の取り壊しにも費用がかかったり、何かと問題になりがち。親の希望も聞きながら、きょうだいでも対策を話し合い、情報を集めておくといいでしょう」。
●家族信託(かぞくしんたく)しておくと安心!
不動産の扱いで覚えておきたいのが“家族信託”。「不動産の所有権のうち、管理する権利を家族に託す制度。親子で結んでおけば、もし親が認知症になっても、子が親の不動産を売って介護費用に充てるなどできます。設定時に費用がかかるものの、継続コストも安く、資産自体は親のものなので、お互いに安心です」。
相続が専門の税理士に相談しよう
相続で損したくない、モメずに遺産を分けたいと思ったら親の生前に税理士に相談を。
「亡くなる前なら対策も可能で、相続税だけでなく、所得税や住民税も見て最適な相続をアドバイスできます」。ただし、税理士もそれぞれ得意分野が異なるので、相続問題に詳しい人に依頼を。「ブログやSNSの解説からも、得意分野はわかると思います」。
●相続に強い税理士に相談するメリット
・親の死後に起こりうる、お金のモメごとを予防できる
・相続税で損しない遺産の分け方を提案してくれる
・税務調査に入られる確率を下げてくれる
・もし税務調査が入っても、立ち会って対処してくれる
<教えてくれた人>
円満相続税理士法人 相続専門税理士 桑田悠子さん
祖父が亡くなったときに相続の大変さを痛感し、「困っている人の役に立ちたい」と相続専門の税理士に。X(旧Twitter)やインスタグラム、TikTokで相続に関するお役立ち情報を発信中。趣味はサウナと料理。インスタアカウントはyuko_tax
参照:『サンキュ!』2024年5月号「親&きょうだいとモメない相続」より。掲載している情報は2024年3月現在のものです。全体監修/桑田悠子 構成/竹下美穂子 編集/サンキュ!編集部