給料の50〜80%をカバー!退職したら「失業給付の基本手当」の申請を
2018/12/27
仕事を辞めることで何より不安なのは、毎月の収入がなくなること。そこで、安心して転職活動に専念できるよう、一定期間の生活費を支えてくれるのが「失業給付の基本手当」です。具体的に、いつからいくらもらえるものなのか、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに詳しく教えていただきました。
「失業給付の基本手当」とは?
会社を退職すると、それまで加入していた雇用保険から、失業給付として「基本手当」が受けられます。これは、失業中の生活費を心配することなく、1日でも早く新しい仕事を見つけられるよう支援するためのもの。
この先、転職を考えている人や、妊娠・出産で退職したあとに再就職したいと考えている人は、今のうちにしっかり理解しておきましょう。
どんな人がもらえるの?
「失業給付の基本手当」は、勤めていた会社を退職した人のうち、次の条件を満たす人が支給の対象です。
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① 会社を辞める前の2年間に、雇用保険の加入期間が1年以上ある
② 働く意思と、いつでも就職できる能力がある
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病気やケガですぐに就職するのがむずかしい、家事や家業に専念する、妊娠・出産・育児に専念する、自営業を始める、しばらくのんびりしたい、という人には給付されません。
退職したあと、いつからもらえる?
基本手当は、退職したあと、すぐに受給できるわけではありません。
まずは住んでいる地域の公共職業安定所(ハローワーク)に行き、求職の申し込みをします。すると受給資格の決定が行われ、そこから7日間の「待期期間」があります。
その後、4週間に一度ハローワークで「失業認定」を受け、28日ごとに失業状態であることを認めてもらい、「失業給付の基本手当」が給付される仕組みです。
実際に給付が開始される時期は、【会社都合で辞めた場合】と、【自己都合で辞めた場合】とで異なります。
会社都合で辞めた人の場合
倒産や解雇など会社側の理由で辞めた人は、7日間の待期期間を過ぎると給付が始まります。
自己都合で辞めた人の場合
転職など自らの意思で辞めた人は、7日間の待期期間のあと、さらに3カ月間の「給付制限期間」というものがあり、それが過ぎてから給付が始まります。
もし7日間の待期期間中に新たな就職先が決まった場合は、基本手当を受け取ることはできません。
「失業給付の基本手当」はいくらもらえるの?
基本手当は、会社を辞める前にもらっていた日給(賃金日額)を基本に計算されます。
①「賃金日額」を計算する
賃金日額とは、会社を辞める直前6カ月分の賃金の総額を、180で割った額のこと。
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[退職6カ月前の賃金の総額]÷180日=賃金日額
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※ 賃金には時間外手当や通勤手当が含まれます。ボーナスや臨時の賃金は含まれません。
②「基本手当日額」を計算する
基本手当日額とは、失業給付金の1日当たりの金額のこと。①で算出した賃金日額に給付率をかけたものが、基本手当日額です。
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賃金日額×給付率=基本手当日額
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「給付率」は、年齢と賃金日額によって細かく決められています。例えば、59歳までの人の給付率は50〜80%で、60〜64歳の人の給付率は45〜80%。賃金日額が低い人ほど給付率は高く、賃金日額が高い人ほど給付率は低くなります。
自分の給付率を調べたい人はこちらを確認してください。
③ 「受給総額」を計算する
基本手当日額に給付日数をかけたものが、基本手当としてもらえる総額です。
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基本手当日額×給付日数=受給総額
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給付日数は、退職理由や年齢によって異なるので、後ほど詳しく解説します。
基本手当日額には、最低保障額と最高額がある
基本手当日額は、賃金日額が少ない人のために、最低保障額が設けられています。また、最高額も設定されているため、無制限に多くなることはありません。
給付日数は?
基本手当が給付される日数は、退職したときの年齢や退職理由によって異なり、最短で90日、最長で360日間です。会社都合で辞めた人には給付日数が多く与えられる仕組みになっています。
【自己都合で辞めた場合の給付日数】
【会社都合で辞めた場合の給付日数】
もらえる期間は?
給付の期間は会社を辞めた日の翌日から1年間です。それを過ぎると、たとえ給付日数が残っていても給付が打ち切られてしまいます。
毎月求職活動を続けて、毎月基本手当をもらっていれば、決められた受給日数分の金額を残したまま、受給期間を終えることはありません。
しかし、毎月の求職活動や失業認定の手続きなどを行わず、基本手当をもらわない月が多く発生した場合は、受給日数を残したまま期限を過ぎてしまうこともあるので注意しましょう。
受給期間を延長できるケースも
出産や育児、病気やケガ、親族の介護などの理由で働けない状態が30日以上続く場合は、退職後1年以内でもらい終わるはずの基本手当の受給期間を、最長3年間延長することができます(計4年間)。
このような場合は、退職後2カ月以内に「受給期間延長」の申請を行いましょう。子育てが一段落してから求職活動を再開させつつ、失業給付金をもらうことができます。
基本手当はどのように申請すればいいの?
退職してから、「失業給付の基本手当金」を受け取るまでの流れは、下記のとおりです。
1.退職
離職票など必要書類を準備します。
2.ハローワークへ行く
住んでいる地域の公共職業安定所(ハローワーク)へ行き、求職の申し込みをすると受給資格が判定されます。
3.雇用保険受給説明会へ行く
ハローワークから指定された日時に受給説明会に行きます。ここでは求職活動に関することや、失業給付金の受給に関する案内があります。
4.失業認定を受けにハローワークへ行く
1回目の失業認定を受けに行きます。失業認定申告書に、求職活動の実績や、アルバイトなどで収入があった場合の報告を記入します。
5.4週間に一度ハローワークへ
その後は4週間に一度ハローワークへ行き、失業状態であることの確認と、働く意思があることの確認、求職活動の報告を行います。すると、認定日ごとに失業日数分の手当が指定口座に振り込まれます。
こんなケースで、基本手当はもらえる?
Q.基本手当は失業するたびにもらえるの?
回数に制限はありません。雇用保険の加入期間など、指定の条件に当てはまれば何度でも受給することができます。
Q.アルバイトを辞めた場合はもらえないの?
失業給付金は雇用保険からもらえるお金です。正社員に限らず、パートやアルバイトでも、勤務先の雇用保険に加入している人(1週間の労働時間が20時間以上の人)なら、辞めた場合は支給の対象になります。
Q.基本手当をもらっている間は、アルバイト禁止?
求職活動と並行してアルバイトをしても問題ありませんが、働いた時間や収入をハローワークに正しく報告する必要があります。アルバイトをした場合は「就業手当」として、基本手当の30%が支給されます。
アルバイトをしているのに報告せずに基本手当を受け取ると、不正受給と見なされ厳しい処分を受けることもあるので注意しましょう。
Q.就職が決まったらもらえなくなるの?
「失業給付の基本手当」をもらっている間に就職が決まった場合、基本手当は終了します。「給付期間が終わってから再就職したほうが得なのでは?」と思いがちですが、早く再就職した人には、基本手当の代わりに「再就職手当」が支給されることがあります。
再就職手当は、基本手当の受給日数の残り3分の1以上なら60%、3分の2以上なら70%の金額が支給されます。
まとめ
「失業給付の基本手当」は、仕事を辞めた後しばらくの間の生活を支えてくれるとても心強い制度です。
もらえる金額は、辞めた理由や年齢、働いていた年数などによって大きく違ってくるので、気になる人は仕事を辞める前にしっかり確認しておきましょう。
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)