病気・ケガで働けない…休業中の「傷病手当金」の申請方法&支給額をわかりやすく解説!

2018/12/25

思わぬ病気やケガでしばらく働けなくなってしまったら・・・・・・と考えると、真っ先に心配なのは生活費のこと。そんなときは、「傷病手当金」が休職中の生活をサポートしてくれます。具体的にいつからいくらもらえるのか、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに詳しく教えていただきました。

「傷病手当金」とは?

病気やケガなどのトラブルに見まわれて仕事を休まなければならなくなったとき、その間の給料が出ない場合に、健康保険から支給されるのが「傷病手当金」です。
もらえる期間は、休業4日目から最長1年6カ月。給料の3分の2ほどの金額が支給されます。
切迫流産や妊娠高血圧症候群といった妊娠中のトラブルも、医師の証明があれば支給の対象になります。

どんな人がもらえるの?

「傷病手当金」は、勤め先の健康保険に加入している人がもらえます。夫の扶養に入っている場合や、国民健康保険に加入している場合はもらえません。
また、受給のためには、次の条件をすべて満たす必要があります。
-----------------------------------------------------------------
① 業務外の病気やケガで治療中であること
② 病気やケガで働けない状態であること
③ 4日以上仕事を休んでいること
④ 休んでいる期間中に給与の支払いがないこと
-----------------------------------------------------------------

休業から3日間は「待期期間」

「傷病手当金」は、休業から3日間は「待期期間」となり、4日目からが支給期間となります。
この待期期間は、3日連続で休むことで成立します。有給休暇、土日・祝日などの休日も含まれ、給料の支払いがあったかどうかは関係ありません。
仮に、連続して2日間会社を休んだあと、3日目に出勤した場合は、待期期間が成立しないので注意しましょう。

いくらもらえるの?

「傷病手当金」は、給料の約3分の2がもらえます。
次の計算式で、1日当たりいくらもらえるのかがわかります。
-----------------------------------------------------------------------
[標準報酬月額]÷30日×2/3=1日当たりの支給額
-----------------------------------------------------------------------
「標準報酬月額」とは、毎年4月、5月、6月の3カ月の平均月収をもとに、健康保険の等級表に当てはめて計算された金額のこと。
1日当たりの支給額に、休んだ日数分をかけ合わせたものが実際の支給総額となります。

例)手術・入院で仕事を休むことになったAさんの場合

【Aさんの条件】
・月収:30万円
・休業日数:60日(2カ月)

Aさんがもらえる「傷病手当金」はいくらになるのか、計算してみましょう
------------------------------------------
1日当たりの支給額は、
30万円÷30日×2/3=6667円

60日休んだ場合の支給総額は、
6667円×60日=40万20円
------------------------------------------
つまり、Aさんが60日間会社を休んだ場合、「傷病手当金」として約40万円をもらうことができます。

「傷病手当金」は非課税のため、支給額には所得税はかかりません。また、健康保険組合によっては、給料の3分の2より増額して支給してくれるところもあります。自分の勤務先の健康保険組合にそういった独自の制度がないかどうか調べておくといいですね。

どのように申請すればいいの?

「傷病手当金」の手続きの流れは下記のとおりです。

1. 勤め先に報告
安静または入院が必要であることを、勤め先に報告します。

2. 申請書を手に入れる
申請に必要な「傷病手当金支給申請書」を用意します。加入している健康保険組合などのホームページからダウンロードできるので、プリントしておきましょう。
申請書は、本人が記入する「被保険者記入用」、医師に記入してもらう「療養担当者記入用」、勤め先に記入してもらう「事業主記入用」の3種類あります。

3. 申請書に記入をする
① 「被保険者記入用」の用紙に自分で必要事項を記入します。
② 担当医師に依頼し、「療養担当者記入用」の用紙に必要事項を記入してもらいます。
③ 勤め先に依頼し、「事業主記入用」の用紙に、必要事項を記入してもらいます。

4. 申請書を提出する
申請書の記入がすべて済んだら、そのほか必要な書類をそろえて、勤め先の健康保険組合に提出しましょう。会社によっては、担当者が保険組合に書類を提出してくれる場合もあります。

申請手続きをすませてから1カ月ほどで、指定口座に手当金が振り込まれます。

いつからいつまでに申請するの?

「傷病手当金」の申請書は、休業4日目以降から2年以内に提出します。
2年を過ぎると、1日ずつ時効が発生し、実際の休業日数分より少ない支給額になってしまうので気をつけましょう。

こんなケースで「傷病手当金」はもらえる?

Qパートやアルバイトはもらえるの?

正社員に限らず、契約社員・パート・アルバイトでも、勤務先の健康保険に加入している人なら給付の対象になります。

Q退職したらもらえないの?

体調が回復せず、勤め先を退職することになった場合でも、次の条件を満たせば、引き続き「傷病手当金」をもらうことができます。

① 退職日までに1年以上継続して健康保険に加入している
② 退職日に「傷病手当金」をもらっている

Q休業後に一度復職して、再び休業することになったら?

体調が回復したと思っていったん復職したものの、その後、再び同じ病気・ケガが原因で会社を休まなければならなくなった場合は、休んだ日数分の「傷病手当金」が再びもらえます。
ただし、支給期間は最初の休業日から1年6カ月で、延長はされません(再び休業した日から1年6カ月にはなりません)。

Q産休中に入院することになったら?

産休中は健康保険から出産手当金が支給されます。同じ時期に病気やケガをした場合、「傷病手当金」の条件に当てはまったとしても、支給されるのは出産手当金のみとなります。

まとめ

突然の病気やケガは、だれの身にも起こり得ること。入院などでしばらく会社を休むことになりそうなときは、「傷病手当金」を申請しましょう。
働けない間の生活が保障されるので、焦ることなく治療に専念できますよ。

教えてくれたのは・・・

井戸美枝さん

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、経済エッセイスト。講演やテレビ、ラジオなど多数のメディアを通じて、ライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など。

大図解 届け出だけでもらえるお金

取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND