「業務委託」の確定申告はいくらから必要? 税金の計算などをケース別に解説

2019/02/08

業務委託の仕事をしている人も、一定以上の所得があればもちろん確定申告は必要です。しかし、業務委託とは、いったいどのような仕事のことなのでしょうか。主婦のパートやアルバイトとはどう違うのでしょうか。税理士の角田圭子さんに伺いました。

業務委託とパート・アルバイトの違いとは?

会社員やパート・アルバイトは会社に雇用されていますが、業務委託とは、簡単にいうとフリーランスで仕事をすることです。

企業から仕事の依頼を個人で受け、どんな仕事をどのように、いつ締め切りなど、契約を結んで仕事をするという働き方になります。具体的な仕事でいうと、ライター、デザイナー、カメラマン、フードコーディネーター、システムエンジニア、コンサルタントなどは業務委託で働くケースが多いです。最近、新しい働き方として注目のクラウドソーシングも業務委託のなかに入ります。

業務委託に確定申告が必要になる理由は?

業務委託で利益を得ている場合、業務委託のみの仕事をしているか、副業で業務委託をしているかなどにより、確定申告をしなければならない年収や所得が違ってきます。

報酬が業務委託のみの場合

フリーランスで業務委託のみの所得がある場合、所得が38万円超になったら確定申告をすることになります。これは、基礎控除が38万円あるため、38万円以下だと所得税がかからないからです。

フリーランスは収入から必要経費を引くことができます。例えば、100万円の年収があり、必要経費が62万円かかったとします。100万円-62万円=38万円。38万円が所得の対象となる金額ですが、「基礎控除」が38万円あるので所得は0円となり、確定申告をする必要はありません。38万円超の所得があると、確定申告の必要があります。

原稿料やデザイン料などの報酬で、支払金額から源泉徴収(所得税を差し引かれること)をされている場合は、確定申告すれば所得税が戻る場合があります。

副業で業務委託をしている場合

会社に勤めている人で副業として業務委託をうけおっている場合、業務委託の所得が20万円を超えると確定申告をしなければなりません。所得20万円なので、収入から必要経費を引いた額が20万円以下ならしなくてもOKです。

20万円を超えた場合は、会社からもらった「年末調整済みの源泉徴収票」と企業からもらう副業分の「支払調書」などと一緒に提出します。

家族の扶養控除に入っている場合

父親、母親などの家族の扶養に入っている人も、所得が38万円超になったら確定申告をすることになります。家族は扶養をはずして、年末調整または確定申告をすることになります。

夫の配偶者控除に入っている場合

夫の配偶者控除に入っている主婦も、所得が38万円超になったら確定申告をすることになります。夫の配偶者控除または配偶者特別控除の金額も、妻の所得金額により変動するので、夫の年末調整または確定申告で妻の所得を申告します。

夫の社会保険からはずれないためにはどうすればいい?

お小遣い程度でフリーランスの仕事をしているのに、気がついたら夫の社会保険からはずれていた、なんてことがないように気をつけましょう。

夫の社会保険からはずれてしまうと、自分で国民健康保険や国民年金を支払わなければならなくなります。この負担は大きいので、できれば避けたいものです。はずれないためには、年収を130万円未満に抑えることです。気をつけてほしいのは、年収130万円未満ということ。所得130万円未満ではなく、必要経費で調整ができない額ということです。

※ただし、週30時間以上勤務している場合は社会保険への加入義務が生じます。
または、週20時間以上勤務、従業員501人以上の会社、賃金が月額8万8000円以上、勤務期間1年以上の見込みのすべてを満たしている場合は、年収130万円未満でも社会保険への加入義務が生じます。

確定申告で必要になる「支払調書」とは?

フリーランスが確定申告をする際に必要なのが、「支払調書」というものです。これには企業があなたに支払った金額と源泉徴収額が記載されています。

源泉徴収とは、クライアントが仕事の報酬を支払う際、あらかじめ税金を差し引いた金額です。確定申告をすることで、この源泉徴収された税金の一部が還付されることもあります。

年が明けたころから、各クライアントがこの支払調書を発行して、送りはじめます。大手のクラウドソーシングでは、支払調書をサイト上で発行できるシステムもあるようです。

複数の企業と業務委託しているかたは、各企業からの支払調書をまとめて確定申告をします。

支払調書がない場合はどうする?

各企業から支払調書が送られてくるとは限りません。届かなければ、報酬を振り込んでくれた際にもらう支払い明細書を見てみましょう。

上の場合、原稿料の小計6万4800円が支払金額、6126円が源泉徴収税額になります。消費税がプラスされた6万4800円から源泉徴収税額6126円が控除されて、差引支払額が5万8674円となります。
※企業によっては、差引支払額から振込手数料を差し引いて振り込むところもあります。

このような支払い明細書もなく銀行振り込みされた金額しかわからないときは、源泉徴収税額を自分で計算することができます。

●源泉徴収税額=報酬額×0.1021

上の支払い明細書でいうと「6126円=6万円×0.1021」となります。
※消費税込みの報酬金額に対して源泉徴収する契約の場合は、6万4800円×0.1021=6616円が源泉徴収税額になります。

確定申告は青色申告、白色申告どっちがいい?

確定申告には大きく分けて、青色申告、白色申告の2つの申告方法があります。青色申告で確定申告をすると、事業所得の収入金額から「青色申告特別控除65万円」といううれしい特典があります。

つまり、必要経費を差し引き、さらに65万円が控除されるのです。青色申告は、白色申告より帳簿などが面倒ですが、控除額が大きいのでチャレンジする価値はありますね。

まとめ

業務委託は、企業に雇われているのでなく対等な立場で仕事をする形態ということですね。パートとは大きな違いがあることがわかりました。主婦の働き方と同様、夫の扶養からはずれないように年収額も気をつけたいところです。

教えてくれたのは・・・

角田圭子さん

税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。東京都練馬区において、角田圭子税理士事務所開業21年目。数々の公的機関の相談員を経験、中小企業、個人の良き相談相手を目指し、税務申告サポートを行う。最近は、女性からの相続税申告相談が増え、心に寄り添う提案を心掛けている。その他、セミナー講師、税金テキストの執筆、女性誌の税金記事の監修など多方面で活躍中。

取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

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