確定申告の「青色申告」と「白色申告」はどう違うのか?

2019/02/10

確定申告書には大きく分けて「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。よく聞く言葉ですが、一体どう違うのでしょうか。それぞれ特徴があり、税金の控除額が違うのです。税理士の角田圭子さんに詳しく聞いてみました。

青色申告とは?

青色申告は、帳簿をつけるのが少し複雑です。

毎日の取引を元にして「仕訳帳」と「総勘定元帳」を作成、そして確定申告のときには「損益計算書」と「貸借対照表」を作成して所得を申告します。経理の仕事をしたことがない人にとっては、むずかしく感じてしまいそうですね。

青色申告のメリット1:65万円の特別控除がある

青色申告の最大のメリットは、65万円の「青色申告特別控除」があることです。先ほど説明したような面倒な帳簿(複式簿記といいます)をつけることで、65万円を収入から差し引けるのです(簡易簿記の場合は10万円の控除となります)。手間がかかる分、税金が安くなる特典があるということですね。

青色申告のメリット2:赤字を3年繰り越せる

次も大きなメリットになります。赤字になった場合、翌年以降3年以内の所得から差し引いて計算することができるのです。

例えば1年目に赤字10万円、2年目に赤字20万円、3年目に黒字30万円だった場合は、3年目の所得を0にして申告できるということです。

白色申告の場合は、赤字を繰り越せないため3年目は黒字30万円に対する税金を払うことになります。

青色申告のメリット3:家族の給与を全額経費にできる

生計をともにしている家族従業員がいる場合、給与を支払い経費とすることができます。白色申告の場合は「配偶者は86万円」、また「そのほかの家族は50万円」と控除額が決まっています。

青色申告の場合は、労働の対価として相当な全額が必要経費になります。もちろん、家族に給与を支払う場合は、きちんと働いていなければなりません。目安は、年間6カ月を超える期間働いている場合になります。

青色申告のメリット4:家賃も必要経費になる

自宅をオフィス代わりに使っている場合、家賃や光熱費も経費として計算することができます。もちろん、全額ではなく一部にはなりますが、こちらもかなり大きなメリットでしょう。

青色申告のデメリット1:申請書を前もって提出

開業してすぐに青色申告で申告したい場合は、開業から2カ月以内に所轄の税務署に所得税の「青色申告承認申請書」の提出をして承認を受ける必要があります。

開業して2年目以降、途中で白色から青色に切り替える場合は、切り替えたい年の3月15日までに提出をしましょう。19年分の所得を20年に青色申告として申告するためには、19年の3月15日までに提出するということになります。

青色申告のデメリット2:複式簿記で記帳

「複式簿記」というむずかしい帳簿をつける必要があります。日々の取引を記録する必要があり、確定申告のときも白色申告よりは面倒な作業が多くあります。また、帳簿、決算関係書類、領収書などを7年間、請求書、契約書などを5年間保存しておく義務もあります。

白色申告とは?

白色申告は、青色申告の申請をしていない人が行う確定申告です。14年から白色申告も帳簿への記帳が義務化されましたが、それでも青色申告に比べると帳簿や確定申告の際の作業も簡単です。

白色申告のメリット:帳簿が簡単

なんといっても白色申告のメリットは、「単式簿記」のように売上などの収入金額、仕入れや経費に関する事項を記入するというシンプルなものなので、帳簿をつけるのが簡単。確定申告の際の作業も、初めて確定申告をする人でも比較的ラクに行えます。帳簿や計算などが苦手なかたにおすすめします。

白色申告のデメリット

青色申告特別控除の65万円、または10万円の適用がないことです。

赤字を3年間繰り越すことはできません。白色申告の場合は、赤字を繰り越せないため、前年に赤字が出たのに今年が黒字だと黒字分にかかる税金を支払うことになります。

そして、生活をともにする家族従業員がいる場合、給与を全額経費として計算することもできません。

「青色申告」と「白色申告」どちらを選べばいい?

白色申告は手続きがとても簡単なので、収入がそんなに高くなく、帳簿をつけるのが面倒なかたには白色をおすすめします。

収入がある程度高くなると、青色申告特別控除の65万円は魅力です。使わない手はありませんね。ただ、複式簿記のため手間がかかります。自分でできない場合は、税理士に依頼して費用を支払うことになります。

青色か白色か、それぞれのメリット、デメリットや収入の額などを考えて決めましょう。

「青色申告」をすると夫の扶養からはずれる?

主婦のかたのなかには、青色申告をすると夫の扶養からはずれるのではと思っている人もいるようですが、そうとは限りません。

なぜなら、会社員の妻が扶養に入れるかどうかは、妻の収入によるからです。

よく、パートをしている主婦は「103万円まで」といわれます。パートの場合、「基礎控除38万円」、「給与所得控除65万円」の合計「103万円までの控除」があるので、1年間の給与収入が103万円までなら所得税が引かれません。

フリーランスで確定申告をする場合、「基礎控除の38万円」はありますが、この「給与所得控除の65万円」がありません。でも、青色申告にすれば「青色申告特別控除65万円」が受けられます。

なので、収入金額から経費と65万円を差し引いた金額が38万円以下なら所得税の支払いもなく、夫の社会保険の扶養からはずれることもありません。

まとめ

白色と青色の違いは、帳簿の複雑さ。これさえ乗り越えれば、控除額の多い青色申告のほうがメリットは大きいですね。最近は簡単に帳簿や確定申告書類が作成できる会計ソフトもあるので、いろいろチェックして検討してみましょう。


教えてくれたのは・・・

角田圭子さん

税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。東京都練馬区において、角田圭子税理士事務所開業21年目。数々の公的機関の相談員を経験、中小企業、個人の良き相談相手を目指し、税務申告サポートを行う。最近は、女性からの相続税申告相談が増え、心に寄り添う提案を心掛けている。その他、セミナー講師、税金に関するテキストの執筆、女性誌の税金記事の監修など多方面で活躍中。



取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

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