妊娠中の人は要チェック!出産にかかった費用は「医療費控除」で一部お金が返ってくることも

2019/02/12

妊娠から出産までには、たくさんの医療費がかかります。「出産育児一時金」など、国からの助成もありますが、出産費用が予想以上に大きくかさんでしまった場合は、その年分の「医療費控除」で税金が返ってくる可能性があります。
「医療費控除」の仕組みと、妊娠・出産にまつわるお金について、税理士の角田圭子さんに詳しく教えていただきました。

出産にかかったお金は「医療費控除」で還付金がもらえる!?

「医療費控除」とは?

1年間(1月から12月まで)に支払った医療費が合計10万円超となった場合、翌年に確定申告をすることで、払いすぎた所得税が一部戻ってくるのが「医療費控除」という制度です。
対象となるのは、主に病気やけがなどの治療・療養にかかった医療費。美容目的の治療費は控除の対象に入りません。
また、病院や薬局などで支払った費用だけではなく、通院のためにバスや電車を利用した場合は、その交通費も対象として認められます。
家族全員分の医療費を合算することができ、最も収入が多い人が申告をするのが一般的です。

17年1月には医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」がスタート。健康管理のために健康診断や予防接種などを受けている人が、薬局・ドラッグストアで販売されているOTC医薬品を年間1万2,000円超購入した場合に、所得控除が受けられるというものです。

従来どおり10万円超の医療費を申告して「医療費控除」を受けるか、この「セルフメディケーション税制」を利用するかは、申告する本人が選択できます。

出産費用は対象になる

平均50万円といわれる出産費用ですが、国から「出産育児一時金」として42万円がもらえるので、実際に自分で支払う分はそれほど大きな金額ではありません。もちろん、なかには出産費用が42万円を下回る人もいます。
もし42万円を超える費用がかかった場合は、「医療費控除」の対象としてほかの医療費に合算することができます。病院でもらう領収書、医療費通知は控除の手続きに必要になるので、なくさないようにしっかり保管しておきましょう。
領収書、医療費通知をもとに「医療費控除の明細書」を作成し、所得税の確定申告に添付して提出します(医療費通知は提出し、領収書は自宅で5年間保管します)。

「医療費控除」の対象になる妊娠・出産のお金

妊娠・出産は病気とは見なされないため、健康保険が利用できず、基本的に全額自己負担となります。自治体の助成制度などで費用の一部は負担してもらえますが、それでも自分で支払った分を合計すると10万円を超えるケースは決して少なくありません。
妊娠・出産関連の費用で「医療費控除」の対象になるものは下記のとおり。しっかりチェックしておきましょう。

・ 妊娠中の定期健診費用
・ 分娩・入院費用
・ 通院のための公共交通機関の運賃
・ 出産時に緊急で利用するタクシー代
・ 入院中の食事代  など

なお、次の費用は医療費として認められないため、控除の対象にはなりません。

・ 妊婦用下着・衣類など
・ 出産準備品の費用
・ 里帰り出産のための帰省費用
・ 自己都合による入院時の差額ベッド代
・ 医師や看護師への謝礼  など

いくら戻ってくるの?

「医療費控除」は10万円を超える医療費を申告するものですが、実際にはいくら戻ってくるのでしょう。
ここで気をつけたいのが、10万円を超えた分がそのまま戻ってくるわけではないということ。そもそも「医療費控除」は所得税を軽減する仕組みなので、申告する人の所得額によっても大きく異なります。
① まずは、「医療費控除額」を計算します。
--------------------------------------------------------------------
医療費控除額=[1年間に支払った医療費の合計]ー[補てんされる金額(※1)]ー[10万円(※2)]
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※1 健康保険から支給される「高額療養費の給付」や「出産育児一時金」、生命保険から支払われる「医療保険の給付金」など。
※2 総所得金額200万円未満なら総所得金額の5%。

② 次に、「還付金額」を計算します。
--------------------------------------------------------------------
還付金額=[医療費控除額]×[所得税率(※3)]
--------------------------------------------------------------------
※3 所得税率とは、課税される所得金額に応じて決められている税率(5〜45%)のこと。

この還付金額が実際に戻ってくる金額を指します。

こんなケースではいくら戻ってくる?

Aさんの場合は「医療費控除」でいくら戻ってくるのか、計算式に当てはめてみましょう。

<Aさんの条件>
・ 出産費用・・・・・・60万円
・ 出産育児一時金(補てんされる金額)・・・・・・42万円
・ 所得税率・・・・・・10% 

① 医療費控除額は、
[1年間に支払った医療費60万円]ー[出産育児一時金42万円]ー[10万円]=医療費控除額8万円

② 還付金額は、
[医療費控除額8万円]×[所得税率10%]=還付金額8,000円

つまり、Aさんの「医療費控除」での還付金は8,000円。さらに、翌年分の住民税(一律10%)も8,000円軽減されます。

「医療費控除」はどのように手続きするの?

「医療費控除」の手続きには、確定申告が必要です。
ある年の1月1日から12月31日までの医療費に関しては、翌年の確定申告時期(2月16日から3月15日)に手続きを行いましょう。ただし、還付申告(所得税が戻る申告)だけなら、翌年1月1日から手続きを行うこともできます。
手続きに必要な書類は下記のとおりです。

【「医療費控除」の確定申告に必要な書類】
□ 確定申告書
□ 医療費の領収書
□ 源泉徴収票
□ マイナンバー(または通知カードと身分証明書)
□ 印鑑
□ 通帳またはキャッシュカード(振込口座が確認できるもの)

書類が準備できたら必要事項を記入し、直接税務署に持参するか、郵送で提出することができます。また、インターネット上で手続きをすませる方法も。
期日間際になると税務署は混み合いますので、余裕を持って手続きできるように、早めに準備しておきましょう。

まとめ

出産費用は、出産する人の状況や利用する医療機関によってさまざまです。
「出産育児一時金」42万円を超えた分を自分で支払った人は、その年の「医療費控除」が受けられる可能性があるので、領収書はなくさないようにとっておきましょう。

教えてくれたのは・・・

角田圭子さん

税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。東京都練馬区において、角田圭子税理士事務所開業21年目。数々の公的機関の相談員を経験、中小企業、個人のよき相談相手を目指し、税務申告サポートを行う。最近は、女性からの相続税申告相談が増え、心に寄り添う提案をこころがけている。その他、セミナー講師、税金に関わるテキストの執筆、女性誌の税金記事の監修など多方面で活躍中。


取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

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