電気料金の請求

6割の家庭が月1,000円節約に!?電気代を確実に安くする方法

2019/08/24

家電製品の使い方を工夫して節約できる電気代は、どうしても限界がありますし、季節によってはほとんど節約できないこともあります。本気で節約を考えるなら、「電力会社の乗り換え」を考えてはどうでしょう?電力会社の乗り換えとはどういうことか、どのくらい節約できて、どんな会社を選べばいいのか、節約アドバイザーの丸山晴美さんに詳しく解説してもらいます。

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て...

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みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。

お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。でも経済に関するお金の情報は、ちょっとむずかしいですよね。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。

今回のテーマは「電気会社の失敗しない乗り換え法」!

電力自由化を知っている人は9割、でも乗り換えた人は1割!

19年4月で「電力自由化」がスタートして丸3年が経ちました。

電通が19年3月に公表した「エネルギー自由化に関する生活者意識調査 第8回」(18年12月に全国20~69歳の男女5,600人が対象)によると、家庭用の電力小売り自由化を知っている人は全体の94.2%。でも、実際に電力の購入先を変更した人は12.4%。同じ電力会社内で料金プランを変更した人9.3%と合わせても21.7%にとどまっています。

気になる電気代については、電力の購入先を乗り換えた人の6割と料金プラン変更者の5割弱が、それぞれ電気代が「安くなった」と回答しています。その額は両者ともに月額1,000円程度。一方で、両者の3割前後は「電気代は変わらない」という結果でした(※1)。

つまり、電力自由化について多くの人が知ってはいるものの、実際に行動した人はまだ少数派だが、上手に電力会社を乗り換えれば、月額1,000円ほど安くできるということです。月額1,000円なら年間1万2,000円が節約できます。乗り換えを考えてみる価値は大いにあるのではないでしょうか。

そもそも「電力自由化」で何が自由になったの?

日本の電力事業は、日本を10の地域に区切って、それぞれの地域を北海道電力や東北電力などの特定の電力会社が運営してきました。消費者は自分の住むエリアを管轄する電力会社と契約するしかなく、電力をどこから買うかを選ぶことはできませんでした。

しかし、電力が自由化されたことで小売り業者が参入できるようになり、消費者が電気の契約先を自由に選べるようになったのです。購入先の選択肢が増えれば、自分に合った料金プランを選択できるようになるため、電気代が節約でき、FIT電気(再生可能エネルギー)を選ぶことができます。

小さな電力会社だと停電が多いなど、トラブルの心配は?

女性が、自宅の停電時に
AntonioGuillem/gettyimages

小売電気事業者(以下事業者)の乗り換えをためらう人のなかには、「電気代が安くなる分、停電などが多くなるのでは?」など、トラブルを心配するかたが少なくありません。でも、安心してください。そのようなことはまずありません。

新規参入した事業者の大半は、東京電力や関西電力といった、これまで各エリアを管轄してきた大手の電力会社から電力を買って売電しています。一部業者は、太陽光や火力発電などをしていますが、現状はその電力が家庭に直接送電されるのではなく、つくられた電気は一旦変電所に送られていろんな電気が混ぜられた状態で各家庭に送電されます。つまり、どの事業者と契約しても、電気を送る電線や設備はこれまでどおり地域の大手電力会社のものですし、特定の事業者だけ電気の品質が変わったり、停電が起こったりすることはないのです。

万一、業者が倒産などして契約者に必要な電力を充分に供給できないときは、大手電力会社から継続的に電力供給を受けられる「常時バックアップ」という仕組みがあります。大手電力会社がたりない電力分を肩代わりしてくれるようになっているので安心です。

マンションやアパートなどの集合住宅でも、事業者は自由に変更することができます。ただし、管理組合などを通じてマンション全体で一括契約している場合は対応が異なるため、管理組合などに確認、相談してみましょう。

つまり、電力会社の乗り換えには大きなデメリットや制約は特に見当たらないということ。強いていうなら、地域によっては参入業者が少なく、乗り換え先をあまり選べない場合があるという点でしょうか。事業者によってカバーしている地域が異なるので、引っ越す場合は移転先でも同じ事業者を使えるとは限らないということも覚えておきましょう。

自分に最適な電力プランはシミュレーションでチェック!

では、いよいよ自分に合った電力会社&プランの見つけ方をご紹介します。

資源エネルギー庁のホームページには、19年6月14日現在、588の電力会社が小売電気事業者として登録されています(※2)。ガスやガソリンを販売している事業者や、インターネットプロバイダー・携帯電話キャリアなどさまざまな業種が参入しており、なかには自社のサービスとセットで電気を販売している場合もあります。そのなかから自分に合うプランを1つだけ選ぶのですから、これはもうとっても大変!
そこで乗り換えを検討する際には、「電気料金プランシミュレーション」で、自分に最適なプランを診断することをおすすめします。

ネットで「電気料金 シミュレーション」で検索すると、たくさんのシミュレーションサイトが出てきます。多くのサイトが問題なく使えると思いますが、私がおすすめしたいのは、いろいろな会社の料金比較だけでなく、同じ会社の1年目と2年目以降の料金がわかるサイトです。その点で、私は「価格.com」の「電気料金プランシミュレーション」をよく利用しています。

シミュレーションを始める前に、去年1年間の電気料金の明細書を用意してください。ない場合は、現在契約している電気会社名と契約内容、そして毎月の電気料金を引き落としている口座の明細で月々の電気代を確認しておきましょう。
あとはシミュレーションサイトに必要事項を入力して結果を見るだけ。節約額の大きい事業者&プランからランキング形式で表示されます。

電力会社&プランを絞るときのチェックポイントは?

metamorworks/gettyimages

シミュレーション結果が出たら、節約額上位の会社&プランを見比べ、最も気に入ったものを選びます。その際には以下の点に注意してチェックしましょう。

チェックポイント1:2年目以降の金額

1年目の金額は、キャンペーンなどで大幅に安くなるケースが多くあります。そういう会社のなかには、2年、3年使い続けると現在よりも高くなってしまう場合も。金額を見比べるときは1年目だけでなく、必ず2年目以降もチェックしましょう。

チェックポイント2:利用条件や約款を必ず確認

電気代自体は安くても、手続きに手数料がかかったり、紙の明細書発行が有料になるなど、事業者によって利用条件が異なります。なかには携帯電話みたいに「○年以内の解約は違約金がかかります」という縛りがあるところも。「料金が安い」という理由だけで判断せず、利用条件をよく確認することが大切です。
シミュレーション結果にもある程度は利用条件や約款が表示されるので、必ず読んでチェックしましょう。とくに解約にお金がかかる場合は、電気代が思ったほど安くならなくても契約を続けなくてはいけませんし、引っ越しの足かせにもなります。解約の縛りがある会社は避けるのが安全です。

会社によっては、電気代はそれほど安くならないけれどポイントで還元するという所もあり、サービス内容もさまざまです。利用条件をよく確認したうえで、ご自身のライフスタイルに合った事業者を選ぶのがいいでしょう。
下は私がおすすめできると思う乗り換え先です。迷ったときの参考にしてください。

丸山先生がおすすめする3つの乗り換え先

1.ガス会社が提供する電気は安心度高め

ガスと電気は同じインフラ同士なので相性がよく、お得なセット販売があったり、解約の縛りもあまりない場合が多いようです。東京ガスの電力プランなど、大手ガス会社が提供しているものは企業規模から見ても信頼できるといえるでしょう。

2.「10%安くします」など割引内容がわかりやすいところ

「今まで使っていた電力会社よりも毎月10%安くします」など、わかりやすい形でメリットを提示している会社もあります。こういうところは料金体系がシンプルで、どのくらい節約できるのかもわかりやすいですよね。手数料がどの程度かかるかなどの確認は必要ですが、こういう会社も基本的におすすめです。

3.車に乗るかたにはガソリンの値引きがある業者が人気

ガソリンスタンドを多く持つ「ENEOS(エネオス)」と「出光昭和シェル」も電気料金プランを提供していて、両方とも電気を契約しているとガソリンスタンドで特典が受けられます。
「ENEOSでんき」の場合、ENEOSで給油して支払いにENEOSカードを利用すると割り引きに。「出光昭和シェル」はカードの指定はなく、出光昭和シェルで給油して登録したカードで支払うと割り引きになります。
どちらも車に頻繁に乗るかたに人気です。このように、自分のライフスタイルに合ったサービスを優先して会社を選ぶのもありです。

手続きはほぼメールのみ、3ステップで完了

美しい陽気な若い実業家のラップトップに取り組んで、ホーム オフィスで笑いの肖像画
BartekSzewczyk/gettyimages

乗り換えるプランが決まったら、手続きはとても簡単です。以下に手順をご紹介します。

手順1:乗り換えたい事業者に申し込む

申し込みは基本的にWebから行い、あとはメールのやりとりのみです。会社によっては電話でできる場合もあります。
以前の事業者への解約手続きは不要。その手続きは通常新しく契約する事業者がやってくれます。

手順2:スマートメーターに交換

スマートメーターとは、通信機能を持った新タイプの電力量計です。自宅にスマートメーターが設置されていない場合は、新たな電力会社との契約に合わせて、現在の電力量計からスマートメーターへの交換が必要です。
スマートメーターの取り付けをするのは、東京電力や関西電力など現在契約している地域の電力会社です。工事予定日は、新しい電力会社に申し込んだあとで、工事を行う電力会社からメールなどで連絡があります。
交換は原則無料で、立ち会いも必要ない場合がほとんどです。ただし、まれに自宅の設備状況によって別途工事が必要な場合もあります。その場合の工事費用は申し込み者の負担になります。

手順3:新事業者との契約がスタート

以上で手続きは完了。あとは新たな事業者に切り替わるのを待つだけです。
切り替わる日は、それぞれの事業者や申し込み状況によって異なります。資源エネルギー庁のサイトによると、乗り換えに要する標準的な期間は、スマートメーターへの交換工事が必要な場合は2週間程度、交換工事が不要な場合は4日程度とされています(※3)。

20年4月以降に新たな変更あり。でも乗り換えは早めでOK

「電力自由化」には新たな動きがあり、20年4月以降には、電力会社の発電部門と送配電部門を別会社や別組織に切り離す「発送電分離」が実施される予定です。
現在の自由化は電気の小売りに関するもので、送配電網や発電設備はこれまでどおり、東京電力や関西電力などの大手電力会社が所有しています。でも「発送電分離」が実施されると、電力事業に参入しただれもがどこへでも既存の送配電網を使って電気を送れるようになり、より公正な競争のための環境が整うことが期待されています。

そのため20年4月以降、電気料金プランが変更となったり、新たな料金プランが出てくる可能性があります。でも、それまで乗り換えを待つ必要はありません。月1,000円程度の節約が可能になるなら、少しでも早く始めたほうが得です。来年4月に新たなプランが出たら、よりよいほうにまた乗り換えればいいのですから。

固定費の見直しは家計の節約に大きく影響します。暖房費がかさむ冬になる前に乗り換えを考えてみてはいかがでしょう?

教えてくれたのは・・・

丸山晴美さん

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て2001年、節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザーなどの資格を取得。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどを、テレビやラジオ、雑誌、講演などで行なっている。著書は「定年後に必要なお金『新・基本のキ』」(宝島社)など多数。

取材・文/かきの木のりみ

 
 

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