【離婚する夫婦の現実】知っておきたい「養育費」と離婚で話し合うお金のこと

2020/02/03

2019年12月、離婚時に取り決める「子どもの養育費」を定めるための「算定表」が、16年振りに更新されました。「養育費」は子どもを守る大切なお金です。現状はどのようになっていて、何がどう変わったのか、そして離婚時に考えるべきお金にはどういうものがあるのか、節約アドバイザーの丸山晴美さんにお聞きしました。

なお、今回ご紹介する情報はすべて2020年1月時点の情報を元にしています。

みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。

お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。でも経済に関するお金の情報は、ちょっとむずかしいですよね。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。今回のテーマは「養育費と離婚に関するお金問題」!

「養育費」は親ではなく、子どもに与えられた権利

離婚すると夫婦関係は終わりになりますが、子どもがいる場合は親としての義務は終わりません。たとえ子どもと一緒に生活していなくても、子どもを扶養する義務が発生するのです。

そのため、子どもの監護(監督し保護すること)をする親は、一緒に生活していない親に対して、子どもの養育に要する費用を請求することができます。これが「養育費」です。

「養育費」の対象となるのは、子ども衣食住の費用や教育費、医療費など、子どもが成長して社会人として自立するまでに必要な全ての費用です。これは親がもらうお金ではなく、子どもに与えられた権利であり、一緒に生活していない親が「生活が苦しいから」という理由で支払義務を免れるものではありません。自分の生活水準を落としてでも払う必要があるものです。

「算定表」を基に妻と夫の分担を考え、「養育費」が決まる

現在の日本では、「養育費」の金額は妻と夫が話し合って決めるケースが一般的です。話し合いでまとまらない場合は調停や家庭裁判所などの場で決めますが、その際には「算定表」が用いられます。

総収入から税金や住居費といった必要経費を差し引いた「基礎収入」を夫婦それぞれで算出し、それを基に子どもの生活費の分担を考え、「養育費」を決めるのです。

これまでは2003年に作成された「算定表」が用いられてきました。しかし、その当時と現在とでは社会情勢や税制が大きく変わっています。

そこで「算定表」の見直しが行われ、2019年12月に改訂版が公表されました。新しい「算定表」は、東京家庭裁判所ホームページで見ることができます。

改訂によって、より「子どもの利益」を守る方向へ

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marchmeena29/gettyimages

今回の改定では、全体的に「養育費」が増加しているのが特徴です。2003年より物価も上がっていますし、もともと以前の「算定表」の金額は低いとも言われていたので、それらを考慮したものでしょう。

また、「養育費」は子どもが成人するまで支払うのが一般的ですが、2022年には成人年齢が現行の20歳から18歳へ引き下げられます。その点についても報告書では、「大半の子どもは18歳の段階では経済的に自立していない」として、「現行通り20歳まで養育費を支払うべき」としています。

つまり、今回の改訂は、より子どもの利益を優先する方向にシフトしたものと言えると思います。

「養育費」を受け取っているのは母子世帯24.3%、父子世帯3.2%

反し法。小槌と男性、女性、本児の図形。
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ところで、実際に「養育費」を受け取っている家庭はどのくらいあるのか知っていますか?

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、「現在も養育費を受け取っている」のは母子世帯で24.3%、父子世帯で3.2%(※1)。実際に「養育費」を受け取っているひとり親世帯はとても少ないのです。

というのも、離婚前に「養育費」の取り決めをしている割合は母子世帯が42.7%で、父子世帯の場合は20.8%です。つまり、離婚前に「養育費」の取り決めを行わないケースが過半数なのです。

「養育費」の取り決めをしていない最も大きな理由は、母子世帯の母では「相手と関わりたくない」が最も多く、次いで「相手に支払う能力がないと思った」となっています。一方、父子世帯の父では順位が逆で、「相手に支払う能力がないと思った」が最も多く、次いで「相手と関わりたくない」となっています。

ちなみに、「養育費」を「現在も受けている」または「受けたことがある」世帯のうち、額が決まっている世帯の平均月額は、母子世帯では43,707円、父子世帯では32,550円となっています。

「養育費の不払い」へのフォローも少しずつ進行中

「養育費」の取り決めをしたとしても、相手が踏み倒して払ってくれなければ意味はありません。実際こうしたケースも少なくなく、今のところは法的な縛りもないのが実情です。支払わせるために調停や裁判に持ち込むことはできますが、弁護士費用などがかかるうえ、時間と労力の負担も大きく、ハードルは高いと言えるでしょう。

しかしそんななかでも、少しずつ改善はされてきています。

2019年5月に成立した改正民事執行法では、裁判で「養育費」の支払義務者が裁判所に出頭しない、財産について虚偽の陳述を行うなどすれば、懲役6カ月以下または50万円以下の罰金の「刑事罰」が科せられるなど、支払わない人に対する対応が厳しくなっています。(2020年4月頃に施行見込み)

また、兵庫県明石市が2019年11月に発表した、離婚家庭の子どもへの不払い養育費の立て替えを行う方針も大きな反響を呼びました。実現すれば全国初の試みです。

このように、「養育費」の不払いに対するフォローも少しずつですが進んでいます。「養育費」は「子どもの権利」ですから、もしも離婚することになった場合は、子どものためにぜひしっかり請求して欲しいものです。

なおその際には、その後のトラブルに備えて、公的文書で取り決めておくことが大切です。

「養育費」以外で離婚時に話し合うべきお金とは?

ドキュメントに 2 つのビジネスマン手
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離婚となった場合、「養育費」以外にも取り決めや話し合いが必要なお金の問題がいくつかあります。それらについても知っておきましょう。

財産分与

離婚時のお金の話でポイントとなるのが「財産分与」です。なかでも夫婦で購入したマイホームをどうすべきかは、大きな問題のひとつです。

家の名義を誰にするのか、残った住宅ローンは誰が払うのか、それとも家を売ってお金として分けるのかなど、細かく取り決める必要があります。住宅ローンの負担は長期にわたることが多いため、離婚の際には慎重に取り決めることが大切です。

また、家や車などの大きいものとは違い、貴金属や生命保険・家具などの細かいものの分与はつい見逃しがちですが、これらも1つ1つ取り決める必要があります。

ただし、独身時代に得た財産は共有財産ではないので、分ける必要はありません。万一の時に揉めないよう、独身時代に得た財産は別々にして、個人で保管するのが良いでしょう。

婚姻費用分担

離婚を前提に別居をしたものの、なかなか仕事が見つからないという場合は、生活費に困ってしまいます。実は夫婦には「相互に生活を保障する義務」があり、こういう場合には「婚姻費用分担請求」をして、相手から生活に必要なお金を夫からもらうことができます。

婚姻費用とは具体的には衣食住に使う費用や医療費、子どもの養育にかかる費用などに加え、常識的に必要だと考えられる交際費や娯楽費も含まれます。

もしもの時のために、こういうお金があることを知っておくことも大切です。

年金分割

年金分割とは、夫婦それぞれが支払った厚生年金保険料を、決めた割合(最大2分の1)で按分する離婚分割(合意分割)と、専業主婦の場合も、夫が払った保険料の一部(最大で半分まで)を妻が払ったものとして、夫の年金の一部を分割してもらえます(3号分割)。どちらも請求期限が原則離婚から2年以内です。

分割の対象は厚生年金や共済年金の部分だけで、国民年金は対象ではありません。自営業を営んでいるなどで厚生年金や共済年金に全く加入していない場合は、年金分割は難しいと言えます。

この他、「慰謝料」もよく耳にする言葉ですが、これは離婚に至る原因を作った有責配偶者に対して、精神的苦痛を被った他方の配偶者が慰謝料の請求をすることができるものです。「性格の不一致」や「価値観の相違」など、どちらかが一方的に悪いわけではない場合は、慰謝料の請求はできません。

現代は離婚がもう珍しくない時代です。自分がそれを選択した時、特に子どもがいる場合は、子どもを守るためにもお金のことをきちんと話せるようになっておきたいですね。

教えてくれたのは・・・

丸山晴美さん

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て2001年、節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザーなどの資格を取得。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどを、テレビやラジオ、雑誌、講演などで行なっている。著書は「50代から知っておきたい!年金生活の不安、解消します」(共著)(幻冬舎)など多数。

取材・文/かきの木のりみ

 
 

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