蒸気バスケットに新鮮な生野菜。調理の準備ができています。

「蒸し器」がないときの代用品を検証!おすすめの使い方も紹介【管理栄養士が解説】

2023/02/07

いざ料理をつくろうとしたところ、必要な道具がなかった……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。そんなとき、家にあるもので代用できるかもしれません!

今回ご紹介するのは「蒸し器」の代用アイデア。

食材を低温で加熱したり、しっとりと仕上げるために使われる「蒸し器」。いったいどんなもので代用できるのでしょうか?

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、「蒸し器」の代用アイデアを紹介してもらいます。

管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとして...

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「蒸し器」の役割は?

筆者宅にあった蒸し器

「蒸し器」はステンレス、陶器、セラミック、ナイロンなどの素材はさまざまですが、共通するのは蒸気を通すための穴が無数に空いていること。

蒸し調理は、水分が加熱されて水蒸気になり、それを効率よく食材に当てることで100℃前後で加熱する仕組みになっています。「蒸し器」は、そんな蒸し調理に欠かせない調理器具の一種です。

構造としては単に穴が空いているだけでなく、底に溜った水分に触れないようにするため、足がついていて高さのあるものが多くなっています。また、鍋などの専用の調理器具の大きさに合わせ、内側に引っ掛けて浮かせて使用するタイプもあります。


なお、蒸し料理専用のせいろ(蒸籠、蒸篭)やスチーマーなどの調理器具もありますが、この記事では蒸したいときにだけ使えるタイプについて述べていきます。

「蒸し器」の代用になるものは?

食材や水を注ぐ前の状態

そんな「蒸し器」ですが、家にあるほかのもので代用することは可能なのでしょうか?

蒸し料理をする頻度や収納場所の広さによっては、わざわざ購入していないという人も多いのでは。そんなとき、代わりに使えるものを知っていれば焦る必要はありません。

筆者の自宅にあったもののなかで、代用「蒸し器」になりそうなものは以下のとおり。調理工程も合わせて説明します。

【A】フライパン+クッキングシート+ふた(コンロ使用)
食材を1つずつクッキングシートに包んだ状態でフライパンに置き、水を注いだら火にかけて沸騰したらふたを閉じる。弱~中火で5分間加熱後、火を止めてそのまま5分放置。

【B】鍋+耐熱皿(2枚)+布巾+ふた(コンロ使用)
鍋の底に耐熱皿を裏返して置き、その上にもう1枚の耐熱皿を通常の向きで重ねる。食材を皿の上に置き、水を注いで沸騰するまで火にかける。沸騰したら布巾で包んだふたで閉じ、弱~中火で5分間加熱後、火を止めてそのまま5分間放置。

【C】耐熱ボウル+耐熱ザル+ラップフィルム(電子レンジ使用)
耐熱ボウルに耐熱皿を重ね、食材を並べてラップフィルムで密閉。電子レンジに入れて600wで2分間加熱し、取り出してから5分後にラップフィルムを外す。なお【C】については、水分が逃げずに蒸気が密閉される構造と考え、水を注いでいない。

【D】炊飯釜+ケーキクーラー(炊飯器使用)
炊飯釜の底にケーキクーラーを置き、その上に食材を並べて水を注いで「早炊きモード」で加熱。時間になったら取り出した。

【E】圧力鍋(電気圧力鍋使用)+耐熱皿+耐熱ザル
圧力鍋の底に耐熱皿を裏返して置き、その上に食材を並べた耐熱ザルをのせて水を注ぎ、5分間圧力をかけ、その後5分間放置して蒸気を抜いて取り出した。

これらのなかから、「蒸し器」と同じように使いやすいものを探してみることにしました。

代用「蒸し器」を使い比べ!

かぼちゃ、手羽元肉、蒸しパンをつかい、【A】~【E】の代用蒸し器の使い勝手について検証してみました。

食材の条件は以下のとおりです。

・かぼちゃは皮付きのまま同じくらいの厚みにし、1個25gほどに切り分けた。
・手羽元肉は、1個50gほどのものを使用した。
・蒸しパンは、薄力粉100g、砂糖大さじ2杯、ベーキングパウダー6gをふるいにかけ、牛乳100gを加えてなめらかに混ぜたものをグラシンカップ(※)に流し込んで使用した。


水を注ぐ量は、使用する調理器具の内容量・直径・食材までの高さによって異なります。

今回の使用量は、【A】は約27㎝のフライパンに対し200ml、【B】は約20㎝の鍋に対し150ml、【D】は1/2合分の目盛りを満たす程度、【E】は圧力鍋の水量の最低ラインを満たす程度としました。


※……グラシンカップとは高圧で圧縮した密度の高い紙のことで、耐水性や耐油性があります。今回は、調理用の耐熱性があるものを使用しています。

かぼちゃがおいしく仕上がったのは【A】【D】【E】

かぼちゃはゆでて加熱することもありますが、サラダにつかうなど、水っぽく仕上げたくない場合は蒸し料理がおすすめな食材です。

竹串がスッと刺さることを確認し、それぞれを食べ比べた結果は以下のとおり。

【A】……しっとりとした食感。
【B】……【A】よりは劣る。
【C】……表面がややパサついた。
【D】……なめらかな食感。
【E】……舌で潰せるほどのやわらかさで、とろけるような食感。

先述したように、水っぽくしたくない場合は【A】【D】がおすすめといえます。【E】は煮崩れるほどやわらかくなりましたが、それはそれでおいしいと感じました。

【B】については加熱時間を追加し、【C】については水を注いで加熱すれば改善されそうだと感じました。

手羽元肉がおいしく仕上がったのは【C】【D】【E】

手羽元肉は焼いてもおいしいですが、蒸すことで余分な油脂を落としてヘルシーに仕上げることが期待できます。

竹串を刺して抜いたときに透明な汁が出てくることを確認し、それぞれを食べ比べた結果は以下のとおり。

【A】……普通。
【B】……普通。
【C】……とてもジューシーな食感で、うま味を強く感じた。
【D】……しっとりとした食感で、あっさりとした口当たりだった。
【E】……しっとりとした食感で、あっさりとした口当たりだった。

先述したことを期待する場合、【D】【E】が理想通りの仕上がりとなりました。それに対し、【C】は逆に強い蒸気に当たらないためか、うま味や油脂の流失が少なかったのでないかと考えられました。食材の味を生かす、という点では【C】がおすすめといえます。

蒸しパンがおいしく仕上がったのは【C】以外

蒸しパンは生地に蒸気を当て続けながら加熱することで、ふんわりとした食感に仕上がります。

竹串を刺してみて生地がつかないことを確認し、それぞれを食べ比べた結果は以下のとおり。

【A】……普通。
【B】……普通。
【C】……表面にツヤがなく、かための食感になった。
【D】……普通。
【E】……普通。

先述したことを期待する場合、【C】以外のすべてが理想通りの仕上がりとなりました。

【C】については、水を注げばもっとやわらかい食感になることが期待できます。ただし、電子レンジの加熱方法は、食材に含まれる水分を振動させて発生する摩擦熱で加熱するため、食材の水分が飛びやすいのです。そのため、ほかの方法のほうがおすすめできるといえそうです。

洗い物がラクだったのは【A】

食材別の食べ比べに加え、後片付けのときに感じたのが「食器や器具の汚れやすさ」。

食材を皿やザルにのせて加熱したものは、いずれも手羽元肉から出てきた油脂がべったりとついており、洗い物のときにひと手間かかりました。

それに対し、直接調理器具に食材が接することのなかった【A】だけは、食材を包んでいたクッキングシートを捨てるだけでフライパンは水が触れたのみという状態。むしろ、洗わなくても水滴を清潔な布巾などで拭き取れば片付け完了、という手軽さでした。

そのため、洗い物を簡単に済ませたいのであれば、断然【A】がおすすめです。

代用「蒸し器」の結論

かぼちゃの調理であれば、
【A】フライパン+クッキングシート+ふた(コンロ使用)
【D】炊飯釜+ケーキクーラー(炊飯器使用)
【E】圧力鍋+耐熱皿+耐熱ザル(電気圧力鍋使用)

手羽元肉の調理であれば、
【C】耐熱ボウル+耐熱ザル+ラップフィルム(電子レンジ使用)
【D】炊飯釜+ケーキクーラー(炊飯器使用)
【E】圧力鍋+耐熱皿+耐熱ザル(電気圧力鍋使用)

蒸しパンの調理であれば、
【A】フライパン+クッキングシート+ふた(コンロ使用)
【B】鍋+耐熱皿+布巾+ふた(コンロ使用)
【D】炊飯釜+ケーキクーラー(炊飯器使用)
【E】圧力鍋+耐熱皿+耐熱ザル(電気圧力鍋使用)

洗い物の時短であれば、
【A】フライパン+クッキングシート+ふた(コンロ使用)

という結果になりました。


ただし、今回の検証とは別に、【C】へ50mlの水を加えてかぼちゃと蒸しパンを加熱した場合、【A】と同じような結果が得られました。そのため、水分が閉じ込められているとはいえ、電子レンジを使用する場合も少量の水を加えるとよいことがわかりました。

なお、水に浸からないように食材を置くための高さだしとして皿を使用した【B】、【E】については、加熱中に器具の底に触れて振動することからカタカタと音が鳴るのが気になりました。とくに、【B】は火加減を弱めても音が収まりにくかったため、静かに調理したい場合は選ばないことをおすすめします。

代用「蒸し器」の活用方法は?

今回は、ぜんぶで5パターンの組み合わせしか試していませんが、理論上はクッキングシートを【A】以外の方法で用いたり、ケーキクーラーを鍋や圧力鍋と組み合わせて加熱する、といったことも可能だと思われます。

ただし、いずれの場合であっても、

・食材が直接水に触れないこと
・加熱中に不安定になって食材がすべり落ちないこと
・加熱中に水がすべてなくならない量を注ぐこと

などに気をつける必要があります。

加熱時間が長くなったり、火力やワット数が大きかったり、調理器具の内容量が異なる場合は、ここで示したよりも水の量を増やすことをおすすめします。

また、当然ですが、加熱する食材の種類や大きさ、厚みなどによっては、より長めの加熱時間が必要です。いずれも、生の状態でないことが確認できるまで十分に加熱し、食中毒などのリスクを避けるようにしてください。

蒸し調理は、水に溶け出して失われやすいビタミンなどの栄養素の流失を抑えたり、焦げがつく心配をなくすというメリットがあります。また、揚げたり焼くなどの高温調理に比べ、100℃前後の温度で加熱することで肉や魚などのたんぱく質が硬くなることを抑えることも期待できるのです。

ぜひ、ご紹介したような台所にあるものを利用し、蒸し料理を気軽に取り入れてみてはいかがでしょうか。

■執筆/監修・・・

管理栄養士・ゆかりさん

管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとしても活動。

 
 

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